農政:農業協同組合研究会 第12回研究大会
農業協同組合研究会 第12回研究大会(1) 合併は農協改革の手段 地域を支える組織へ2016年6月10日
農協の適正規模も議論
農業協同組合研究会(会長=梶井功東京農工大名誉教授)は5月28日、東京都内で改正農協法と農協合併について、報告とディスカッションを行った。かつてのような大型化がすべてという状況ではなくなったが、営農経済事業を重視する改正農協法のもとで、どのようなJA像を目指すかが焦点になった。
研究会ではJA全中の太田実常務が農協合併の現状と課題について報告。また、今年の3月1日にJA新ふくしま、JA伊達みらい、JAみちのく安達、JAそうまの4JAが合併して発足した福島県のJAふくしま未来の菅野孝志組合長が報告した。管内の人口は60万人弱。正組合員4万8000人、准組合員4万7000人と計約9万6000人となっている。
JA合併は「"合体"ではなく、新しいものをつくるのでないと合併の意味がない」という。菅野組合長はこの考えで担い手育成をめざすJA出資型の農業生産法人、JA独自の担い手給付金、地元企業と連携した6次産業化など、新機軸の取り組みに挑戦している。
農協合併について、太田原高昭・北海道大学名誉教授は、今日の一連の「農協改革」を、「制度としての農協の終焉」と性格づける。したがって合併一本槍ではなく「合併しなくてもよいというところがあってもよい」との評価に変わりつつあるという。この例に、同教授は未合併のJAが連合した北海道の十勝農協連を挙げる。19市町村23JAが連合して出荷規格やブランド戦略などの市場対応を行っている。
その上で、農協改革は「これまで行政代行をやらせ過ぎたと考えるようになり、それに財界が悪乗りして農村の金融資産に目を付けたのではないか」と分析する。また課題として、適正なJAの規模について、議論を起こすべきだと指摘した。 研究会には100人が参加。報告後には参加者とディスカッションを行った。
今回の農協法改正による新しい中央会のあり方やJA合併の方向性、准組合員問題などについて意見、質問が多かった。 菅野組合長は今後は合併JAとしての機動力をより発揮するため、旧JA単位にこだわらない役員体制づくりにも取り組むことや、地域の農業を支えている人々として准組合員を増やしていく必要性を強調し「地域全体の活力をつくっていく責任がJAにあることを忘れてはならない」と呼びかけた。
全中の太田常務は、今後の中央会や連合会について、組合員のなかからどうあるべきかを議論することが重要ではないかと話した。また、改正農協法に信用事業の代理店化と全農の株式会社化の選択が盛り込まれたことについて「果たして組合員が求めていることか」と問うべきで、とくに株式会社化については最終的には買収される懸念があることを指摘した。今後JAグループは人づくりに一層力をいれる必要があるとも話した。
太田原名誉教授は「産地形成型の合併」が必要と強調した。例として自主的に米の生産調整に取り組み、転作の野菜生産で所得を上げていくと同時に、米でも改めて共同乾燥施設などを核に産地確立の努力が必要だなどと指摘した。
一方、未合併農協も組合員の期待に応えているのであれば「自信を持っていい」。しかし、今後とも生産拡大、所得拡大がその規模でできるのかは問われる。
ただ、必ずしも組織合併ではなく事業連携なども視野に入れるべきで、太田原名誉教授は「農協はわれわれ自身が自由につくっていく時代になったとの認識を」と訴えた。
(各報告の要旨の文責は編集部)
重要な記事
最新の記事
-
シンとんぼ(146)-改正食料・農業・農村基本法(32)-2025年6月14日
-
みどり戦略対策に向けたIPM防除の実践(63)【防除学習帖】第302回2025年6月14日
-
農薬の正しい使い方(36)【今さら聞けない営農情報】第302回2025年6月14日
-
群馬県の嬬恋村との国際交流(姉妹)都市ポンペイ市【イタリア通信】2025年6月14日
-
【特殊報】水稲に特定外来生物のナガエツルノゲイトウ 尾張地域のほ場で確認 愛知県2025年6月13日
-
【注意報】りんごに果樹カメムシ類 県内全域で多発のおそれ 岩手県2025年6月13日
-
SBS輸入 3万t 6月27日に前倒し入札2025年6月13日
-
米の転売 備蓄米以外もすべて規制 小泉農相 23日から2025年6月13日
-
46都道府県で販売 随意契約の備蓄米2025年6月13日
-
価格釣り上げや売り惜しみ、一切ない 木徳神糧が声明 小泉農相「利益500%」発言や米流通めぐる議論受け2025年6月13日
-
担い手への農地集積 61.5% 1.1ポイント増2025年6月13日
-
【鈴木宣弘:食料・農業問題 本質と裏側】生産者米価2万円との差額補填制度を急ぐべき2025年6月13日
-
井関農機 国内草刈り機市場を本格拡大、電動化も推進 農機は「密播」仕様追加の乗用田植え機「RPQ5」投入2025年6月13日
-
【JA人事】JA高岡(富山県)松田博成組合長を新任(5月24日)2025年6月13日
-
【JA人事】JAけねべつ(北海道)北村篤組合長を再任(6月1日)2025年6月13日
-
(439)国家と個人の『食』の決定権【三石誠司・グローバルとローカル:世界は今】2025年6月13日
-
「麦とろの日」でプレゼント 東京のららぽーと豊洲でイベントも実施 JA全農あおもり2025年6月13日
-
大学でサツイマイモ 創生大学と畑プロジェクト始動 JA全農福島2025年6月13日
-
JA農機の成約でプレゼントキャペーン JA全農長野2025年6月13日
-
第1回JA生活指導員研修会を開催 JA熊本中央会2025年6月13日