農政:緊急企画:許すな!日本農業を売り渡す屈辱交渉
「書き替え」 ついに共同声明も【立憲民主党代表代行・長妻昭衆議院議員】2018年10月10日
安倍総理はトランプ大統領の就任前に自宅に行ったり、その後もゴルフをしたり今回の9月の会談でもトランプ大統領の自宅に夕食に招かれているなど、非常に親密で何でも相談してくれる関係だと強調していたと思いますが、その割には何かいきなり飲まされたという、唐突感があります。数日でTAGとなってしまった。
TAGという言葉を知っていた人は誰もいないわけで、これは作った言葉です。おそらく茂木大臣周辺が過去の国会答弁と整合をとるために作り上げた造語だと思いますが、思うのはトランプ大統領に非常に軽く見られているのではないかということです。その前にはロシアのプーチン大統領からも平和条約の締結の話を唐突に持ち出された。安倍総理大丈夫かという第一印象があります。
◇ ◇
安倍総理は5月8日の国会答弁で、茂木大臣とライトハイザー米通商代表との協議について「この協議は日米FTA交渉と位置づけられるものではない。また、その予備協議でもない」と言っています。さらに「わが国としてはTPPが日米両国にとって最善だと考えている。アメリカは二国間ディールに関心を有していると承知していますが、わが国としてはTPPが日米両国にとって最善と考えており、その立場をふまえ引き続き議論に臨んでいく。アメリカの二国間ディールには引きずり込まれません」と答弁しています。
茂木大臣とライトハイザー代表との協議はFTA交渉の予備交渉でもありません、と断定していたんです。それが9月の交渉では数日の間にころっと押し込まれた。非常に日米関係は深刻だと思います。
周知のように11月6日に米国では中間選挙がありますが、トランプ大統領にとっての最大のテーマは中国の貿易赤字です。その次はNAFTA。これは先日、合意して片づきましたが、この2つが大きいテーマであって、日本はあまり大きなテーマではなく、その意味では日本はもっとしっかり交渉することができたのではないか。
政府はFTAではないと説明していますが、共同声明では物品貿易交渉が終わったら、サービスや投資も交渉していくとなっており、順番として先に物品を交渉するというだけで実際は日米FTA交渉です。米国の新聞はFTAと書いていますし、TAGとは言っていません。共同声明の英文には「TAG」との大文字はありません。
これも改ざんとはまでは言えなくても、共同声明の一種の書き替え、書き替え共同声明ですよ。日本人が英語を読めないとでも思っているんでしょうか。よく与党も納得していると思います。前代未聞です。
◇ ◇
それから、共同声明では過去の経済連携協定で約束した内容が最大限と書かれてしまいました。これも一気にそこまで譲歩し、しかもそれを尊重するということです。
TPPについて私たちは農産物重要5品目、すなわち、聖域を確保するとあれだけ勇ましく自民党は言っていたのに確保されていませんから、そもそもTPPには問題があるとの立場です。その問題があるTPPまでは譲歩しますと言ってしまった。これは大丈夫かと思います。かつ自動車とのバーターの交渉になるわけで、米国は2.5%の自動車関税を10倍の25%にするといっています。
一方、TPPでは、牛肉の関税は38.5%が16年目に9%に4分の1に下がる合意です。しかし、本当に16年かどうか。翌年からすぐに9%にしろという話にならないか。
いきなり過去の経済連携協定で約束した内容が最大限という、交渉カードまで書かされてしまってということではないですか。
一方、自動車については「交渉結果が米国の自動車産業の製造および雇用の増加をめざすものであること」という一文が入れられてしまった。
◇ ◇
臨時国会ではまずは過去の国会答弁を問題にします。矛盾する答弁がいっぱいあるわけですから。総理は屁理屈を言うと思いますが、そこを追及していく。
謝罪するなら謝罪してもらわないといけません。答弁にはときには間違いもありますから、そのときは謝罪をすればいい。予備協議ですらないと言ったのですが、これは間違いでした、と。しかし、謝罪はせずに強弁するでしょうから、そこでまた国会また迷走、と言われる状態もあるでしょう。
それから日EUのEPAも臨時国会で審議することにもなっています。この問題も日米交渉とは別とはいえない面もありますから、来年からの議論開始の前に、安易に交渉しないよう釘を刺す。それが秋の臨時国会だと思います。
(関連記事)
・SDGs重視の貿易秩序への大転換を目指す日米交渉に【白石正彦・東京農業大学名誉教授】(18.10.10)
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