農政:緊急企画:許すな!日本農業を売り渡す屈辱交渉
史上最悪の協定に歯止めを【北海道大学農学研究院・東山寛准教授】2018年10月10日
8月にFFRを始めた時点で、TAG交渉に至るのは既定路線であったように思われる。日米TAGは、すでにまとまっているTPP11、日EU協定に匹敵する「メガFTA」となることは間違いない。
TAGが「TPPプラス」となる懸念を拭い去ることができない。まず、共同声明は例の「最大限」を「尊重(リスペクト)する」と書いているだけで、確約しているわけではない。さらに、日本にとって「過去の経済連携協定」とはTPPだけではなく、今や日EU協定も含まれる。日EU協定は乳製品(チーズ)などで「TPPプラス」の約束をしているものがあり、それをTAGで取り込んだとしても不思議ではない。
TAGは、自動車の追加関税をとりあえず猶予することとの引き換えが出発点だ。しかし、この「自動車問題」がそれで終わるのかと言えば、決してそうではない。ふたつの「隠し玉」がある。数量制限と為替条項である。先例はメキシコである。メキシコはNAFTA再交渉で、アメリカへの輸出台数を年間240万台とする数量制限をのんだ。また、新NAFTA協定では為替条項を協定本体に盛り込んだうえに、違反した際の「紛争解決手続き」の対象とした。相手国の通貨政策に踏み込む強制力をもっており、農業分野で「TPPプラス」の譲歩を迫る十分な「脅し」になるだろう。
議会通告をしなければ交渉が始められないアメリカの「90日ルール」があるため、交渉開始は年を越す。もしTAG交渉で「TPPプラス」の譲歩に踏み込めば、確実に安倍政権への打撃になるだろう。日本の主張は「TPPに復帰することがアメリカにとって最善」だったが、それは安倍政権にとって最善だったということだろう。アメリカにとってのTAGは事実上の「TPP再交渉」であり、トランプ流の交渉術では「ディール(取引)のない再交渉」はあり得ない。ここまで来ると、TAG交渉を縛る何らかの「歯止め」が必要だ。TAGは史上最悪の協定になる。農業団体も主張すべき時である。
(関連記事)
・書き替え」 ついに共同声明も【立憲民主党代表代行・長妻昭衆議院議員】(18.10.10)
・SDGs重視の貿易秩序への大転換を目指す日米交渉に【白石正彦・東京農業大学名誉教授】(18.10.10)
・TAGという欺瞞と暴挙を許してはならない【加藤好一・生活クラブ連合会会長】(18.10.10)
・世界の流れに逆行【八木岡努・JA水戸代表理事組合長(茨城県)】(18.10.10)
重要な記事
最新の記事
-
「良き仲間」恵まれ感謝 「苦楽共に」経験が肥やし 元島根県農協中央会会長 萬代宣雄氏(2)【プレミアムトーク・人生一路】2025年4月30日
-
【農業倉庫保管管理強化月間特集】現地レポート:福島県JA夢みなみ岩瀬倉庫 主食用米確かな品質前面に(1)2025年4月30日
-
【農業倉庫保管管理強化月間特集】現地レポート:福島県JA夢みなみ岩瀬倉庫 主食用米確かな品質前面に(2)2025年4月30日
-
アメリカ・バースト【小松泰信・地方の眼力】2025年4月30日
-
【人事異動】農水省(5月1日付)2025年4月30日
-
コメ卸は備蓄米で儲け過ぎなのか?【熊野孝文・米マーケット情報】2025年4月30日
-
米価格 5kg4220円 前週比プラス0.1%2025年4月30日
-
【農業倉庫保管管理強化月間にあたり】カビ防止対策徹底を 農業倉庫基金理事長 栗原竜也氏2025年4月30日
-
米の「民間輸入」急増 25年は6万トン超か 輸入依存には危うさ2025年4月30日
-
【JA人事】JAクレイン(山梨県)新組合長に藤波聡氏2025年4月30日
-
備蓄米 第3回は10万t放出 落札率99%2025年4月30日
-
「美杉清流米」の田植え体験で生産者と消費者をつなぐ JA全農みえ2025年4月30日
-
東北電力とトランジション・ローンの契約締結 農林中金2025年4月30日
-
【'25新組合長に聞く】JA新潟市(新潟) 長谷川富明氏(4/19就任) 生産者も消費者も納得できる米価に2025年4月30日
-
大阪万博「ウガンダ」パビリオンでバイオスティミュラント資材「スキーポン」紹介 米カリフォルニアで大規模実証試験も開始 アクプランタ2025年4月30日
-
農地マップやほ場管理に最適な後付け農機専用高機能ガイダンスシステムを販売 FAG2025年4月30日
-
鳥インフル 米デラウェア州など3州からの生きた家きん、家きん肉等 輸入停止措置を解除 農水省2025年4月30日
-
埼玉県幸手市で紙マルチ田植機の実演研修会 有機米栽培で地産ブランド強化へ 三菱マヒンドラ農機2025年4月30日
-
国内生産拠点で購入する電力 実質再生可能エネルギー由来に100%切り替え 森永乳業2025年4月30日
-
外食需要は堅調も、物価高騰で消費の選別進む 外食産業市場動向調査3月度 日本フードサービス協会2025年4月30日