農政:自給率38% どうするのか?この国のかたち -食料安全保障と農業協同組合の役割
【歌手・加藤登紀子さんインタビュー】農的幸福 今こそ国民で実現を(1)2018年10月15日
歌手の加藤登紀子さんは夫の故藤本敏夫さんが農業を志した歩みをもともにした。現在の日本の農業、食料への危機感も強いが、人々が農的生活を志す転換点だと熱い思いも語る。聞き手:大金義昭氏(文芸アナリスト)
歌う覚悟 50年の節目
大金 加藤さんは、日本を代表するシンガー・ソングライターの一人として華やかな活動を繰り広げています。また、亡くなられた夫の藤本敏夫さんが志した農業への熱い思いも共有してこられました。藤本さんは学生運動の闘士として実刑判決を受け、出所後には「大地を守る会」などを立ち上げ、有機農業を普及・促進していますね。1981年には千葉県で農事組合法人「鴨川自然王国」を設立するなどの実践もされています。
今、日本の農業は大変に厳しい状態に陥っています。加藤さんの言葉で、農業を担っている多様な人たちや農協の皆さんに元気になっていただくメッセージをいただけたらと思います。まずは、加藤さんのこれまでの歩みをお聞かせいただけますか。
加藤 ちょうど50年前、1968年が私の歌手としてのスタートだと思っています。その前に若葉マーク時代があったんですが、その年に藤本敏夫と出会い、加藤登紀子としての人生を生きるために歌うんだという覚悟ができた。そのころは、歌手であることにも迷いがあって69年に「ひとり寝の子守唄」を作ったときが迷いの到達点で、これでだめだったら歌手をやめるということだったんですが、ヒットして結局、出発点になりました。
大金 シャンソンから音楽の世界に飛び込んだと聞いていますが、やはり、お好きなエディット・ピアフとの出会いが決定的だったのですか。
加藤 若いときにピアフが好きだったかどうか分かりません。ただ、音楽として好きというよりは、彼女の死に際ですね。亡くなり方。ぼろぼろだったにも関わらず何度もステージに立ち、何度倒れても歌うということが報道されました。19歳だった私は、ものすごく衝撃を受けた。それからとにかく興味を持って聞きはじめたわけです。
ちょうどそのとき、父が私に知らせずにシャンソンコンクールに申し込んだ。ピアフにハマっていたから受けて立とう、「ピアフを歌うわ」となって出場しました。そうしたら審査員の一人に呼ばれて「赤ん坊みたいな顔をしてピアフを歌っても、男心は動きませんよ」とそっと言われたものです。頭に来ましたけど、今は感謝しています。この世界について、いろいろなことを学びましたから。
大金 歌う覚悟もピアフから、ですか。
加藤 そうですね。それでも初めて「愛の讃歌」をレコーディングしたのは2006年です。藤本が他界したのは2002年ですが、それから2年ぐらいは、やはりしんどかったんです。歌うことを自分の実人生とすごくシンクロさせてきたから、彼が亡くなったことにどう向き合っていけばいいのか、と。でも、いつまでも逃げているわけにはいかない、これからは彼が残してくれたものを受け止めて前に行こうという気持で40周年を迎え、シャンソンからスタートした私を表現するためにピアフを歌おうということになりました。
ただ、「愛の讃歌」には「もしもあなたが死んで、私を捨てたときも」という歌詞があり、この部分が自分に響きすぎて歌えない。どうしたものかと思っていたんです。ところが、ああ、この感じか、と思った瞬間がありました。実はピアフも、恋人が死んだ後にこれを歌っていたわけです。だから、あなたは死んでしまったけれど私は生きている、これをつないでくれるのが「愛の讃歌」だったんだと、それで猛烈に入魂してしまったんです。
重要な記事
最新の記事
-
シンとんぼ(150)-改正食料・農業・農村基本法(36)-2025年7月12日
-
みどり戦略対策に向けたIPM防除の実践(67)【防除学習帖】第306回2025年7月12日
-
農薬の正しい使い方(40)【今さら聞けない営農情報】第306回2025年7月12日
-
【注意報】水稲に斑点米カメムシ類 県下全域で多発のおそれ 茨城県2025年7月11日
-
【注意報】斑点米カメムシ類 県内全域で多発のおそれ 新潟県2025年7月11日
-
【注意報】果樹に大型カメムシ類 果実被害多発のおそれ 北海道2025年7月11日
-
【注意報】果樹カメムシ類 県内全域で多発のおそれ 福島県2025年7月11日
-
【注意報】おうとう褐色せん孔病 県下全域で多発のおそれ 山形県2025年7月11日
-
【第46回農協人文化賞】出会いの大切さ確信 共済事業部門・全国共済農協連静岡県本部会長 鈴木政成氏2025年7月11日
-
【第46回農協人文化賞】農協運動 LAが原点 共済事業部門・千葉県・山武郡市農協常務 鈴木憲氏2025年7月11日
-
政府備蓄米 全農の出荷済数量 80%2025年7月11日
-
【'25新組合長に聞く】JA加賀(石川) 道田肇氏(6/21就任) ふるさとの食と農を守る2025年7月11日
-
【'25新組合長に聞く】JA新みやぎ(宮城) 小野寺克己氏(6/27就任) 米価急落防ぐのは国の責任2025年7月11日
-
(443)矛盾撞着:ローカル食材のグローバル・ブランディング【三石誠司・グローバルとローカル:世界は今】2025年7月11日
-
【2025国際協同組合年】協同組合の父 賀川豊彦とSDGs 連続シンポ第4回第二部2025年7月11日
-
米で5年間の事前契約を導入したJA常総ひかり 令和7年産米の10%強、集荷も前年比10%増に JA全農が視察会2025年7月11日
-
旬の味求め メロン直売所大盛況 JA鶴岡2025年7月11日
-
腐植酸苦土肥料「アヅミン」、JAタウンで家庭菜園向け小袋サイズを販売開始 デンカ2025年7月11日
-
農業・漁業の人手不足解消へ 夏休み「一次産業 おてつたび特集」開始2025年7月11日
-
政府備蓄米 全国のホームセンター「ムサシ」「ビバホーム」で12日から販売開始2025年7月11日