農政:緊急特集・衝撃 コロナショック どうするのか この国のかたち
評論家・中野剛志 収束後も国家の統制力は強化【衝撃 コロナショック どうするのか この国のかたち】(上)2020年5月15日
グローバル時代から自国第一主義へ
コロナ危機で人の移動や輸出を規制する動きが顕在化し、国家による経済統制の萌芽も見え始めている。評論家の中野剛志氏は世界大戦後の実例も踏まえ、「アフターコロナ」で世界全体が「社会主義」や「大きな政府」の方向に舵を切るのではないかと予測している。
◆パンデミックが国家主義を誘因
新型コロナウイルス感染症のパンデミック(コロナ危機)は、どうやら長期化しそうである。封鎖や自粛が解除されても第二波、第三波が来る可能性があり、本格的な収束は効果的なワクチンや治療薬ができるまでとも言われている。そうだとすると、一年以上、場合によっては二年程度、こういった状態が続くのであろう。
この巨大かつ長期化の様相を呈するコロナ危機がもたらした変化をみて、人々は早くもコロナ危機以後(アフターコロナ)を論じ始めている。確かに我々が目の当たりにしたのは、長きにわたって人口に膾炙(かいしゃ)してきた「グローバリゼーション」の理想とはまるで正反対の事態であった。
そもそも、中国武漢で発生した新型コロナウイルスが、世界中に瞬く間に広がるなどといったこと自体、グローバリゼーションがもたらした危機にほかならない。武漢が封鎖されると、中国に展開されていたサプライチェーンが寸断され、部品や製品の供給途絶が起きた。これほど、グローバリゼーションのぜい弱性と危険性を如実に示したものもない。
パンデミックが勃発すると、世界各国は国境の壁を引き上げ人の出入国を厳しく管理して、自国民をコロナウイルスから保護しようとした。中でも象徴的であったのは、EU(欧州連合)各国が域内の自由な人の移動という理念をかなぐり捨てて、厳格な国境管理を導入したことであった。だが、国境管理を厳格化することに異を唱える声は皆無に等しかった。
世界各国は、自国民を守るためにマスクや人工呼吸器などの医療物資を奪い合い、輸出を規制する国までも現れた。自由貿易の理念はあっさり踏みにじられ、どの国も自国民優先のナショナリズムに走った。しかし、貿易による互恵的な利益や他国民の生命よりも、自国民の生命を優先することを誰も疑問視しなかったのだ。
◆ウイルスとの戦いで国防色濃厚
問題は医療物資だけではない。国連食糧機関(FAO)や世界保健機関(WHO)は、人の移動禁止による労働者不足により農産物の生産量が減少し、食料不足になると警鐘を鳴らしている。世界的な食料不足ともなれば、各国は医療物資以上に自国第一主義へと走るのは当然であろう。政府は自国民を飢えさせるわけにはいかないのだ。
こうした事態が続けば各国の対立は激しくなり、貿易摩擦のみならず地政学的な衝突も起きかねない。いずれにしても、グローバリゼーションは終えんを迎えるだろう。
国内に目を転じれば、各国はコロナ危機に対処するため、戦時経済さながらの体制を敷いている。実際に軍が動員された国もあるし、医療崩壊の起きた国では病院は野戦病院の様相を呈している。ロックダウンはまるで戦時下の戒厳令のようだ。トランプ米大統領は自らを「戦時下の大統領」と評し、マクロン仏大統領は「これは、戦争だ」と連呼したが、これは単なるレトリックではない。実際、米国政府がGMに人工呼吸器の増産を命じた際の根拠法となったのは、まさに朝鮮戦争時に制定された国防生産法だったのである。IMF(国際通貨基金)も4月1日付のブログで、「戦時下では、軍備への莫大な投資が経済活動を刺激し、特例措置によってエッセンシャルサービスが確保される。今回の危機では事態はより複雑だが、公共部門の役割が増大するという点は同じである」と述べている。
写真:評論家・中野剛志 氏
重要な記事
最新の記事
-
第21回イタリア外国人記者協会グルメグループ(Gruppo del Gusto)賞授賞式【イタリア通信】2025年7月19日
-
【浜矩子が斬る! 日本経済】「政見放送の中に溢れる排外主義の空恐ろしさ」2025年7月18日
-
【特殊報】クビアカツヤカミキリ 県内で初めて確認 滋賀県2025年7月18日
-
【注意報】水稲に斑点米カメムシ類 県内全域で多発のおそれ 滋賀県2025年7月18日
-
【注意報】水稲に斑点米カメムシ類 県内全域で多発のおそれ 兵庫県2025年7月18日
-
『令和の米騒動』とその狙い 一般財団法人食料安全保障推進財団専務理事 久保田治己氏2025年7月18日
-
主食用10万ha増 過去5年で最大に 飼料用米は半減 水田作付意向6月末2025年7月18日
-
全農 備蓄米の出荷済数量84% 7月17日現在2025年7月18日
-
令和6年度JA共済優績LA 総合優績・特別・通算の表彰対象者 JA共済連2025年7月18日
-
「農山漁村」インパクト創出ソリューション選定 マッチング希望の自治体を募集 農水省2025年7月18日
-
(444)農業機械の「スマホ化」が引き起こす懸念【三石誠司・グローバルとローカル:世界は今】2025年7月18日
-
【サステナ防除のすすめ2025】水稲害虫の防ぎ方「育苗箱処理と兼ねて」2025年7月18日
-
最新農機と実演を一堂に 農機展「パワフルアグリフェア」開催 JAグループ栃木2025年7月18日
-
倉敷アイビースクエアとコラボ ビアガーデンで県産夏野菜と桃太郎トマトのフェア JA全農おかやま2025年7月18日
-
「田んぼのがっこう」2025年度おむすびレンジャー茨城町会場を開催 いばらきコープとJA全農いばらき2025年7月18日
-
全国和牛能力共進会で内閣総理大臣賞を目指す 大分県推進協議会が総会 JA全農おおいた2025年7月18日
-
新潟市内の小学校と保育園でスイカの食育出前授業 JA新潟かがやきなど2025年7月18日
-
令和7年度「愛情福島」夏秋青果物販売対策会議を開催 JA全農福島2025年7月18日
-
「国産ももフェア」全農直営飲食店舗で18日から開催 JA全農2025年7月18日
-
果樹営農指導担当者情報交換会を開催 三重県園芸振興協会2025年7月18日