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農政:原子力政策方針転換 思い起こせ3.11 産地は訴える

【思い起こせ3.11 緊急対談】議論なき原子力政策転換 教訓生かされず進まない復興(1)2023年1月26日

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政府は原子力発電の運転期間を、従来の40年から60年に延長し、次世代型原子炉の開発・建設に取り組む方針を決めた。原子力政策の明らかな政策転換である。それもロシアのウクライナ侵攻による当面のエネルギー危機を理由に、十分な説明もなく「原発回帰」に切りかえようとしている。今も3万人もの人が避難生活を強いられており、先の見えない廃炉も含め、問題は何ら解決していない。福島県の農業復興にJAのリーダーとして、また研究者として深く関わっている菅野孝志・JA全中副会長と小山良太・福島大学教授が対談した。両氏は「〝福島の教訓〟を忘れるな」と訴える。(敬称略)

出席者
菅野孝志・JA全中副会長
小山良太・福島大学経済経営学類教授

「国民の意見を全く無視」 「民主主義の危機」

小山良太・福島大学経済経営学類教授小山良太
福島大学経済経営学類教授

小山 岸田文雄首相は「聞く政治」といっているが現実はまったく逆で、エネルギー危機を理由にした原子力政策の転換、電気料金の値上げなど、国民の意見をまったく無視して一方的に決めた。国民がコロナ禍やウクライナ問題に気をとられている間に、いとも簡単に決めてしまった。これでいいのかと疑問を感じるが、どう思いますか。

菅野 日本のエネルギー利用の将来のあり方を決める重要なことにも関わらず、残念ながら、国民のなかには少なからず「もう済んだこと」という風潮を感じる。こんな重要なことをわずかの人で決めてしまうことは民主主義の危機といってもよい。命と暮らしを守るためにはどうするか、われわれはもっと発言するべきだと思う。
そもそも政府は、今回の原子力政策の転換の理由にウクライナ戦争によるエネルギー危機を挙げているが、現在のウクライナ問題と将来の日本のエネルギーのあり方とはまったく別の問題であって、それを一緒にしてエネルギー危機をあおるのは、国民に誤った情報を伝えることになる。原発の運転期間を延長するならするで、それについて詳細な資料を示し、国民の議論を深めるべきだ。

小山 原子力エネルギーの利用には賛成の意見もあるが、事故を起こしたのは現在のタイプの原子炉だ。次世代型の原子炉について研究するというのならまだしも、同タイプの原子炉の使用期間を延長するというのは疑問。そもそも事故当時、代替エネルギーとして話題になった小規模原発の話はどこへいったのか。また、自然再生エネルギーの利用方法は地域によって異なる。首都圏以外の地域は再生エネルギーで行くとか、福島県の会津地方のように100%自然エネルギーで賄おうとしているところもある。原発事故から12 年、当初から本気で取り組めば、この間に実現できたところがあるかも知れない。政府は「結局できなかったでしょう。だから原子力が必要」と、国民の足元を見ているように感じる。

「政府はエネルギー危機利用して国民を誘導」

原発緊急対談 菅野副会長.jpg菅野孝志
JA全中副会長

菅野 原発事故当時、安倍晋三首相は「福島の復興なくして日本の復興なし」と言ったが、それは原発への依存を減らし、自然再生エネルギーの利用を増やす方向だったはず。しかし再生エネルギー利用の全体構想はなく、具体的な施策は民間任せだった。そのため企業によって無秩序に太陽光パネルが設置され、その後の営農計画の障害になったところもある。震災後の地域づくりの計画・施策のない中で、比較的つくりやすい太陽光の利用だけが進んでいる。
原発被害を受けた地域には〝眠れる資源〟の山林がある。広葉樹は25~30年で伐採でき、バイオエネルギーとして利用できる。それがいま途絶している。自然エネルギーの利用はコストがかかるといわれてきたが、トータルでみると、政府がいうほど原子力は安くないことが明らかになっている。原発を廃炉にするにしても技術が必要で、つくるより力仕事になる。また廃炉には科学的知見の積み重ねが欠かせず、どさくさにまぎれて決めるような問題ではない。国は、もっと国民が議論できるようなデータを示すべきだ。

小山 議論させず、データも出さず、エネルギー危機というショックドクトリンで国民を脅しているようなものだ。原発が本当に必要だというのなら、しっかりしたエビデンス(根拠)を示してほしい。また政府は震災と原発の被害を一緒にして復興資金としているところがある。原発による被害は30兆円にもなるが、これを東京電力の利用者である東京の住民が負担すると、年間の支出額は相当な金額になる。その負担を東京都民に求めることができないので、それを隠して電気料金の値上げで国民全体の負担にしようとしている。それでは困るので、いまのようなエネルギー危機を利用して「原発はやむを得ない」と考えるように国民を誘導しているように思える。

新しい脱原発の具体策示すべきとき

菅野 JAグループも平成24(2012)年の第26回全国大会で将来の脱原発を決議した。画期的だったが行動が伴わず、具体的な提案もできなかった。12年後の結果が企業による太陽光パネルの乱立になった。

小山 結局われわれは脱原発、自然エネルギーの利用というミッションを具体化できなかった。FEC(食料・エネルギー・ケア)自給圏構想に基づいた脱原発の代案が必要だった。ただ、これまでJAはどんな大変な時でも対応策・モデルケースを出してきた。自然エネルギーでもモデルケースを示せるはず。風力、小水力、バイオマス、地熱など、一つ見本ができると次につながったかも知れない。すべてが太陽光になってしまったがドイツのように投資効果の期待できる風力発電がなぜ普及しなかったのか。いまからでも遅くない、検討すべきた。

菅野 土地改良区などの運営による小水力発電所は耐用年数を過ぎているところが多い。新しい脱原発の具体策を示すべきときだ。風力、バイオマスなど、民間企業による大規模な自然再生エネルギーの利用の取り組みはある。しかしそれは地域を基盤としてものではない。福島県の会津には地域の電力は地域で賄うとの考えで地域の企業や市町村が出資する電力会社がある。それと同じように、地域の人や企業が事業協同組合のような組織をつくって出資し、国や県が助成するという仕組みができないか。そうした取り組みを進めるとエネルギー問題に人々の関心が集まり、おのずと原発についても身近に考えるようになる。

小山 原発の被災地では、復興は企業がやってくれることに慣れてしまった。ドイツでは事業組合が自ら計画・建設、メンテナンスもこなして利用する仕組みができており、参考になるのではないか。企業がやっているのでは地域の人は積極的に利用しない。企業が地域外に売電して利益をあげるための太陽光発電になってしまう。

菅野 原発被害の賠償は当然だが、それを活用する新しい事業を提案できなかった。住民が具体的に地域づくりに関わるような事業を導入する必要があるが、そのへんをJAや商工会などがうまくリードすることができなかった。

帰還住民への支援 地域づくりに並行して農業も

小山 多くの住民は被害者でもあり、高齢化も進んでいるのでそこが難しいところだ。新しい事業を起こす人を育てることが重要だと、震災後12年たって強く感じている。避難指示指定解除になり、戻る人が増えている。すでに20万人のうち17万人が戻っており、避難している息子のために家を建て替えたり、政府の「みどりの食料システム戦略」でいうところの循環型農業に取り組んだりしている例もある。そうした人への支援が必要だ。JAは営農指導と同じように、地球にやさしいエネルギー利用のための「再生可能エネルギー普及指導員」のようなものを設けたらどうか。放っておくと企業が来て荒らしてしまう。

菅野 若い人が避難するなど、原発事故で被災地の住民は分断させられた。これから地域や集落を復興させるにはこうした若い人をいかに呼び込むかが課題だ。農業の再建の前に、まず生活の環境づくりとなるまち・むらづくりが大事で、集落が成り立つには、少なくとも5戸くらいは必要。農業の規模拡大のため50haに1戸あればいいという問題ではない。農業は地域づくりと並行して考えるべきだ。

小山 その通り。地域には企業と違う地域の論理がある。農業・農村はあくまで地域がベースになる。それを支えてきたのは地域の論理で成り立つJAだ。単なる農業経営の規模拡大では地域は維持できない。

菅野 復興に農業振興は2次的なもので、その前に地域再生がある。高齢化で耕作できなくなった人が、無秩序に農地を貸し借りするのではなく、そこへ行政やJAがいて地域づくりの設計図を描けば、新しい町や村が再生できる。いまそれができるところへ来たという認識が必要だ。農業と自然再生エネルギーによる新しい地域づくり、それを提案することだ。帰還した行政やJAのOBなどにはその能力を持つ人がいる。

小山 被災地の葛尾村は、帰還者が62戸のところや、わずか1戸というところもあり、集落の再編も必要になる。そのとき、新住民をどれだけ呼んだら集落が維持できるか。ベストミックスになる規模の設計図を描かなければならないが、これまでそれができていない。

菅野 復興に関しては示されるのは帰還者が何パーセントになったとかの数字だけ。自然再生エネルギーを利用する場合、住民が負担は何パーセントで、ほかは国が支援するというような具体的な施策を示せば、地域の人にとって大きな支えになる。農業者だけでなく、知識と能力のある引退した団塊の世代で、農村に居住を求める人を呼び込みたい。

議論なき原子力政策転換 教訓生かされず進まない復興(2)に続く

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