【アグリビジネスインタビュー】環境と農業の両立後押し バイオと化学で食の安心追求 三井化学クロップ&ライフソリューション 垣元剛社長(1)2024年6月17日
「サステナブルな食と生活に貢献するグローバルソリューションプロバイダー」をめざす三井化学クロップ&ライフソリューション。今回は4月に就任した垣元剛社長にインタビュー。基本法の改正を受け環境との調和が農業に一層求められるなか、農薬開発での「グリーン・トランスフォーメーション」への転換など、今後の事業の方向を強調した。
"日本品質"薬剤で支え
三井化学クロップ&ライフソリューション 垣元剛社長
――社長就任から2カ月、日本の農業を取り巻く情勢の変化や課題、さらに社長としての抱負を改めて聞かせてください。
海外出張の機会がありますが、そのたびに思うのは、日本の農作物のおいしさや安全性は世界に誇れるすばらしさを備えているということです。日本の農業の課題は、農業従事者数が少なくなっていくなかで、事業として、サステナブルに農業を続けられるかがやはり重要だと思っています。そのためには、もっと日本の農産物の価値が正当に評価されていくべきであると思っています。
一方、農薬メーカーとしての国内事業の課題は、資源高と円安の問題です。生産・調達体制を強化し、サプライチェーンの強靭性の確保が課題です。
また、欧州のファーム・トゥー・フォーク戦略、日本ではみどり戦略への対応になりますが、サステナビリティへの配慮は必須であり、加えて気候変動への対応なども課題です。これら課題は、対応が後手に回ればリスクにもなり得ますが、前向きに対応することによってチャンスに変えることができると捉えています。
私は学生時代から農薬に30年以上携わっていることから、農薬事業にとても愛情を感じています。その意味でも、このたび社長として農薬事業のかじ取りを行うことは非常に光栄なことであり、一方で不安も入り交じりますが、身が引き締まる思いです。
農畜産物の適正評価を
――食料・農業・農村基本法が改正されました。どのように評価され、今後の事業展開をどう考えますか。
農政が転換するという一つの象徴が、食料・農業・農村基本法の25年ぶりの改正だと思います。柱の一つは食料安全保障の確保で、まさに地政学的なリスクや資源高騰を背景に大きな柱になったと思います。その一方で農業を環境と調和の取れた産業に転換しなくてはならないことや人口減少のなかでもスマート農業などを活用して食料の安定供給を図ることも柱になりました。また、農産物の価格について合理的な価格形成を国民が理解していく、それがないと持続可能性もないということが強調されていると思います。
そのうえで改正された基本法を当社の立場で読むと、41条の伝染性疾病等の発生予防や、42条の農業資材の生産及び流通の確保と経営の安定などについては、農薬メーカーとして農家の皆さまに貢献できることでもあり、法の趣旨に則って努力すべきということになると思います。
また、基本理念である食料自給率の問題については、水稲を始めとしたさまざまな作物に対して幅広いソリューションを提供し、食料の安定生産に貢献することが当社の理念であり、薬剤ベースで農家の皆さんの困り事を解決することを考えていくことが当社の責務だと思います。
高齢化や人口減少に対しては、省力化が従来にも増して重要にもなり、いかに負担の軽い作業で最大の効果を出せるかということがポイントになってきます。
農薬の新規原体開発については、これまでは効果やそのスペクトラムを追い求めて探索を行ってきましたが、将来の環境変化も見越した上で、農薬の登録性を上げていく、言い換えると、安全性の向上や環境負荷の低減を基本として、早期に登録取得が可能な農薬原体を開発する方向にかじを切り始めています。当社はそれをグリーン・トランスフォーメーションと言っています。また、製剤についても成分のみならず、容器や包装についてもグリーンなものに切り替えていきたいと考えています。
農産物の適正な価格と消費者の理解促進は重要だと認識しており、当社は高品質な農産物を作ることに貢献したいと思っています。輸出の促進も課題とされていますが、国内で生産した農産物を輸出する際には、相手国の規制をクリアする必要があると思います。当社は海外でも農薬の登録販売を行っていますので、その点で輸出先国の規制にも適合できるような農薬を増やすことで、輸出のサポートができないかと考えています。加えて、農薬メーカーとしての知見を生かして、作物の輸出支援事業の可能性を検討しています。
【アグリビジネスインタビュー】環境と農業の両立後押し バイオと化学で食の安心追求 三井化学クロップ&ライフソリューション 垣元剛社長(2) へ
重要な記事
最新の記事
-
「良き仲間」恵まれ感謝 「苦楽共に」経験が肥やし 元島根県農協中央会会長 萬代宣雄氏(2)【プレミアムトーク・人生一路】2025年4月30日
-
【農業倉庫保管管理強化月間特集】現地レポート:福島県JA夢みなみ岩瀬倉庫 主食用米確かな品質前面に(1)2025年4月30日
-
【農業倉庫保管管理強化月間特集】現地レポート:福島県JA夢みなみ岩瀬倉庫 主食用米確かな品質前面に(2)2025年4月30日
-
アメリカ・バースト【小松泰信・地方の眼力】2025年4月30日
-
【人事異動】農水省(5月1日付)2025年4月30日
-
コメ卸は備蓄米で儲け過ぎなのか?【熊野孝文・米マーケット情報】2025年4月30日
-
米価格 5kg4220円 前週比プラス0.1%2025年4月30日
-
【農業倉庫保管管理強化月間にあたり】カビ防止対策徹底を 農業倉庫基金理事長 栗原竜也氏2025年4月30日
-
米の「民間輸入」急増 25年は6万トン超か 輸入依存には危うさ2025年4月30日
-
【JA人事】JAクレイン(山梨県)新組合長に藤波聡氏2025年4月30日
-
【'25新組合長に聞く】JA新潟市(新潟) 長谷川富明氏(4/19就任) 生産者も消費者も納得できる米価に2025年4月30日
-
備蓄米 第3回は10万t放出 落札率99%2025年4月30日
-
「美杉清流米」の田植え体験で生産者と消費者をつなぐ JA全農みえ2025年4月30日
-
東北電力とトランジション・ローンの契約締結 農林中金2025年4月30日
-
大阪万博「ウガンダ」パビリオンでバイオスティミュラント資材「スキーポン」紹介 米カリフォルニアで大規模実証試験も開始 アクプランタ2025年4月30日
-
農地マップやほ場管理に最適な後付け農機専用高機能ガイダンスシステムを販売 FAG2025年4月30日
-
鳥インフル 米デラウェア州など3州からの生きた家きん、家きん肉等 輸入停止措置を解除 農水省2025年4月30日
-
埼玉県幸手市で紙マルチ田植機の実演研修会 有機米栽培で地産ブランド強化へ 三菱マヒンドラ農機2025年4月30日
-
国内生産拠点で購入する電力 実質再生可能エネルギー由来に100%切り替え 森永乳業2025年4月30日
-
外食需要は堅調も、物価高騰で消費の選別進む 外食産業市場動向調査3月度 日本フードサービス協会2025年4月30日