昆虫向け農薬の開発へ 幼若ホルモンがサナギ化を抑えるメカニズム解明2015年12月10日
世界初の解明
生物研
国立研究開発法人農業生物資源研究所は12月1日、昆虫の幼若ホルモンがサナギ化を抑えるメカニズムを世界で初めて解明したことを公表した。これにより昆虫のみに効果のある農薬の開発が可能となる。
昆虫の幼虫は何度も脱皮を繰り返して大きくなり、十分に大きくなるとサナギへ変態する。その後もう一度変態して成虫になる。
今回未熟な幼虫の状態でサナギ化させることで正常な成虫にさせない方法が解明された。
◆正常な成虫になれない=卵を産めない
これまで幼若ホルモンが幼虫が十分に大きくなるまでサナギに変態するのを抑えていることがわかっていた。しかしどのようにサナギ化を抑制しているかがわかっていなかった。幼若ホルモンは幼虫の状態でいるよう指示を行ったり、卵巣の発育にも必要だと考えられたりしているホルモンだ。
平成24年には幼若ホルモンがサナギ化遺伝子の働きを抑制するタンパク質Kr-h1の産生を促していることが分かり、今回Kr-h1がサナギ化遺伝子を始動させる塩基配列の働きを阻害し、サナギ化遺伝子の活性化を直接抑えているメカニズムがわかった。
Kr-h1を阻害剤で阻害すると、未熟な状態の幼虫がサナギ化する。仮に変態し成虫になったとしても、正常な活動や卵を産むことなどが行えないと考えられる。
Kr-h1はチョウ目(チョウやガの仲間)や甲虫目(コガネムシなどの仲間)、ハエ目など、様々な昆虫に共通に存在し、その他の動物には存在しない。
環境や人体により優しい、害虫だけに作用する殺虫剤が求められている中、メカニズムの解明により今後はサナギ化抑制のカギとなるKr-h1を阻害する農薬の開発が可能となった。
(写真)Kr-h1を阻害剤で阻害できれば、食害が激しい大きな幼虫になる前にサナギ化させることができる:生物研提供
(関連記事)
・いもち病に強い稲開発へ 生物研 (15.11.26)
・平成26年度研究成果まとめる 病害虫の抵抗性あるイネの遺伝子特定など 生物研 (15.08.31)
・オオムギの起源解明ー品種改良の効率加速化に期待ー岡山大学と生物研 (15.08.03)
・カドミウム除去に新品種 生物研がイネで育成 (15.07.21)
・生物研「植物遺伝資源供給センター」3月に開所 (15.1.23)
重要な記事
最新の記事
-
シンとんぼ(149)-改正食料・農業・農村基本法(35)-2025年7月5日
-
みどり戦略対策に向けたIPM防除の実践(66)【防除学習帖】第305回2025年7月5日
-
農薬の正しい使い方(39)【今さら聞けない営農情報】第305回2025年7月5日
-
【注意報】斑点米カメムシ類 県内全域で多発のおそれ 石川県2025年7月4日
-
(442)エーカレッジ(作付面積)から見る変化【三石誠司・グローバルとローカル:世界は今】2025年7月4日
-
【JA人事】JAながさき県央(長崎県)里山耕治組合長を再任(6月27日)2025年7月4日
-
人的資本を人事制度で具体化する 「令和7年度 人事制度改善セミナー」開催 JA全中2025年7月4日
-
「有機薄膜太陽電池」で発電した電力 ブドウの着色に活用 実証実験開始 山梨県2025年7月4日
-
株主優待制度を新設 農業総研2025年7月4日
-
夏の訪れ告げる初競りの早生桃 福島県産「はつひめ」販売 青木フルーツ2025年7月4日
-
ニッテン「スズラン印」ロゴマークをリニューアル 日本甜菜製糖2025年7月4日
-
「国際協同組合年」認知度調査「生協に参加したい」が7割 パルシステム2025年7月4日
-
洋菓子のコロンバン主催「全国いちご選手権」あまりんが4連覇達成2025年7月4日
-
野菜わなげや野菜つり 遊んで学ぶ「おいしいこども縁日」道の駅とよはしで開催2025年7月4日
-
北海道初進出「北海道伊達生産センター」完成 村上農園2025年7月4日
-
震災乗り越え健康な親鶏を飼育 宮城のたまご生産を利用者が監査 パルシステム東京2025年7月4日
-
神奈川県職員採用「農政技術(森林)経験者」受験申し込み受付中2025年7月4日
-
神奈川県職員採用「獣医師(家畜保健衛生分野)経験者」受験申し込み受付中2025年7月4日
-
信州の味が集結 JA全農長野×ファミマ共同開発商品 長野県知事に紹介2025年7月4日
-
障害者のやりがい・働きがい・生きがい「ガチャタマ」で応援 パルシステム埼玉2025年7月4日