新規タンパク質発見! 脱皮ホルモンを作り出すために重要な役割 2015年12月22日
ハエ科の昆虫
筑波大学生命環境系の丹羽准教授、同生命領域学際研究センターの深水教授らと生物研は12月9日、キイロショウジョウバエを使った、昆虫の発育に必要なステロイドホルモンを作り出すために重要な役割を担う新規タンパク質「Ouija board(ウィジャボード)」の発見を公表した。これにより昆虫のみに作用する農薬の開発がすすむことが期待されている。
ステロイドホルモンは生物種を問わず、個体の発達や性成熟などに重要な役割を持っている。
昆虫にとっての主要なステロイドホルモン「エクジステロイド」は別名「脱皮ホルモン」とよばれ、昆虫の脱皮や変態の誘導を司っている。
今回発見されたタンパク質「Ouija board(ウィジャボード)」は、脱皮ホルモンを作り出すために必要な酵素遺伝子スプーキアの発現を誘導することがわかった。
この「ウィジャボード」の機能を失わせると、酵素遺伝子スプーキアの誘導が行われず、脱皮ホルモンも生成されないため成長していくことができない。
丹羽准教授は、「ウィジャボード」の機能を失った変異体を作り出したところ「ある時期までの活動は可能だが、数日以内に死んだ」とし、発育が停止したことを明かした。変異体は1齢幼虫から次に進むことができず、数日間は食べ物を食べるなどの活動を行ったが、だんだんとそれも停止し死に至った。
また「ウィジャボード」は酵素遺伝子スプーキアにしか作用しないこともわかった。
「ウィジャボード」はハエ科の昆虫にしか存在しないが、スプーキアと同等の機能を持つ酵素はほぼすべての昆虫に存在すると考えられている。ハエ科以外の昆虫にも「ウィジャボード」とは別の脱皮ホルモンを作り出すための酵素に働きかける因子が存在すると考えられ、ショウジョウバエで発見されたメカニズムを足掛かりに他の昆虫についても検討していくことを課題としている。
今後は、「ウィジャボード」のように特定の昆虫グループに特異的に存在する制御タンパク質やメカニズムを発見することで、昆虫を選択して除去することができる環境にやさしい農薬の開発につながるのでは、とし、今回発見された「ウィジャボード」のようにスプーキアという遺伝子を呼び出す能力を阻害できるような薬が開発できれば、農薬になる可能性があるとしている。
脱皮ホルモンを作り出す遺伝子の突然変異株の多くは、その特徴が「ツルツル」していることなどから「つかみどころがない」と連想されおばけ関連の名前が付けられている。一群を総称して「ハロウィーン遺伝子群」と呼ばれているが、特徴からおばけや幽霊の名がついているだけで、何か恐ろしい性質があるわけではない。
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