楽しくてかっこいい農薬散布へ DJIとシンジェンタ 自動航行ドローンによる編隊散布を披露2019年6月27日
農薬市場をリードするシンジェンタジャパンと農業ドローンでトップシェアのDJI JAPANは6月25日、茨城県竜ケ崎市の横田農場ライスセンターで、4月の業務提携後、初となるドローンの自動航行による農薬散布のデモンストレーションを行った。
整然と農薬を散布するドローン2機の編隊飛行
シンジェンタの水稲除草剤「アクシズMX1キロ粒剤」を積んだ、DJIの自動航行ドローン「AGRAS(アグラス) MG-1P RTK」による農薬散布のデモンストレーションに先立ち、DJI JAPANの呉韜社長は、「ドローンを使えば安全で簡単に自動で農薬散布ができる。このプロジェクトは、私が思うドローンを使った空中散布のあるべき姿だと思う。両者の知見を持てばきっと日本の農業に貢献できると確信しています」とあいさつした。
ドローンの自動航行による散布は、事前にほ場を測量する必要がある。散布用とは別の計測用ドローン「PHANTOM4 RTK」が、約60m上空からほ場を撮影し、形状を把握。それをもとに地図を作成し、散布ルートを決定する。画像は撮影と同時にリアルタイムでパソコンに送られ、10~20haのほ場なら10~20分で測量できる。
計測用ドローン「PHANTOM4 RTK」
そして、計測した画像をもとに散布幅、速度、高度の散布ルートを設定すれば、あとはドローンが自動で農薬を散布してくれる。
デモ散布を行った「AGRAS MG-1P RTK」は、1回の飛行で1haに散布し、約10分間飛行できる省力化タイプのドローン。粒の薬剤で約10kg、液体なら10Lを搭載し、高さ2m~4m幅で時速15~20kmで散布できる。また、8つのプロペラを備えており、1枚が壊れても墜落の危険はない。
送信機からの指示を受け、自動航行を始める「AGRAS MG-1P RTK」
このドローンと相性のよい薬剤が水稲用の初・中期一発処理除草剤「アクシズMX1キロ粒剤」。水稲の移植後7日からノビエ4葉期までをカバーするため、大規模水田など田植え時期が前後するほ場でもドローンを使えば効率的に大面積の雑草を処理できる。
シンジェンタの水稲除草剤「アクシズMX1キロ粒剤」
この日は、単独1機と2機同時飛行によるデモ散布を実施。畔で待機するオペレーター(操縦者)が、送信機を操作するとドローンがふわっと浮き上がり、設定通り4m幅で直進しながら散布を始めた。1機による0.7haの水田への散布は7、8分で終了。続く、2機の編隊による同時散布は0.8haを5分もかけずに撒き終わった。当日、ほ場には時おり苗が大きくなびくほどの風が吹きつけたが、ドローンが安定した飛行姿勢を保って整然と散布するさまは見事だった。
この日、オペレーターを務めたDJI 農業ドローン推進部テクニカルリーダーの前田卓余さんは、「田んぼに入って行う農薬散布は重労働で辛いものですが、ドローンによる農薬散布はむしろ楽しいと感じました」と話していた。
実際、高齢化や後継者不足により、耕作を放棄された農地が地域の担い手に集中する中、労働力の確保は日本農業の喫緊の課題だ。農薬散布ひとつとってもつらい作業が楽しいと思えるものに変われば普及も進み、農作業をとりまく環境は一変するに違いない。
会場となった横田農場の代表取締役で全国稲作経営者会議青年部顧問の横田修一さんは、「農業の生産現場も大きく変わっているいま、使われる技術も変わっていくべき。中でもドローンにかける期待は大きい。私たちもよい機械を作るメーカー、農薬を作るメーカーと一体となって新しい技術を一緒に作っていくことが必要だと思う」と話した。
デモ終了後、シンジェンタジャパンの的場稔社長は、「自動航行の編隊の姿はインパクトがあってすなおにかっこいいなと思いました。農作業がかっこよく魅力的なものになれば、農業全体の雰囲気も上がるはず。ドローンによる農業の革新を安心安全を土台にして普及していけるよう農薬の面から支えていきたい」と締めくくった。
重要な記事
最新の記事
-
シンとんぼ(140)-改正食料・農業・農村基本法(26)-2025年5月3日
-
みどり戦略対策に向けたIPM防除の実践(57)【防除学習帖】第296回2025年5月3日
-
農薬の正しい使い方(30)【今さら聞けない営農情報】第296回2025年5月3日
-
【鈴木宣弘:食料・農業問題 本質と裏側】「盗人に追い銭」「鴨葱」外交の生贄にしてはならぬ農産物2025年5月2日
-
【2025国際協同組合年】情報を共有 協同の力で国際協力 連続シンポスタート2025年5月2日
-
イネカメムシが越冬 埼玉、群馬、栃木で確認 被害多発の恐れ2025年5月2日
-
九州和牛をシンガポール人に人気のお土産に 福岡空港で検疫代行サービスを開始 福岡ソノリク2025年5月2日
-
就労継続支援B型事業所を開設し農福連携に挑戦 有機農家とも業務提携 ハピネス2025年5月2日
-
宮崎ガス「カーボン・オフセット都市ガス」 を県庁などに供給開始 農林中金が媒介2025年5月2日
-
5月29日から「丸の内 日本ワインWeeks2025」開催 "日本ワイン"を学び、楽しむ3週間 三菱地所2025年5月2日
-
協同心の泉 大切に 創立記念式典 家の光協会2025年5月2日
-
【スマート農業の風】(14)スマート農業のハードルを下げる2025年5月2日
-
(433)「エルダースピーク」実体験【三石誠司・グローバルとローカル:世界は今】2025年5月2日
-
約1cm程度の害虫を強力捕獲「吊るしてGET虫ミニ強力タイプ」新発売 平城商事2025年5月2日
-
農中情報システム 自社の導入・活用のノウハウを活かし「Box」通じたDX支援開始2025年5月2日
-
洗車を楽しく「CRUZARD」洗車仕様ホースリールとノズルを発売 コメリ2025年5月2日
-
戦後80年の国際協同組合年 世代超え「戦争と平和」考える パルシステム神奈川2025年5月2日
-
生協の「地域見守り協定」締結数 全市区町村数の75%超の1308市区町村に到達2025年5月2日
-
ムコ多糖症ニホンザルの臨床徴候改善に成功 組換えカイコと糖鎖改変技術による新型酵素2025年5月2日
-
エフピコ×Aコープ「エコトレー」など積極使用で「ストアtoストア」協働を拡大2025年5月2日