農薬:現場で役立つ農薬の基礎知識 2013
【現場で役立つ農薬の基礎知識 2013】[14]水稲栽培の仕上げ防除2013年9月12日
・多年生雑草に多い難防除雑草
・地下30cm以上からでも発生する力が
・除草剤と秋耕で塊茎を減らす
・クログワイの水稲刈跡散布による防除
本来であれば本格的な稲刈りシーズンを迎える頃ではあるが、時ならぬ秋の豪雨で記録的な雨量が続出し稲刈りに影響が出ている。多くの地域で稲刈り作業に入れなかったり、穂いもちの被害を受けたりと大変な状況である。一日もはやく天候が回復し、稲刈り・乾燥・出荷と作業が進み、無事に本年の水稲作作業が終わるのを祈るのみである。
ただ、無事、終了した際には、もう少しだけ田んぼに手を入れて頂きたい。実は、水稲の刈跡というのは、難防除である水稲多年生雑草を徹底防除するのに好都合だからである。今回は水稲刈跡防除について取材してみたので参考にしていただきたい。
水田の多年生雑草の徹底防除は
刈跡防除がおすすめ
◆多年生雑草に多い難防除雑草
雑草というのは、いわゆる草であって、木のように固い体を持たず、地面より上にある部分は1年のうちに時期がきたら枯れてしまう。この時、次世代の繁殖器官として種子のみを残す雑草のことを一年生雑草といい、種子以外の地下茎(塊茎)や根っ子を残すものを多年生雑草と呼んでいる。この多年生雑草は、体が大きいことや繁殖の方法が複数あるため防除が難しい。
このため、多年生雑草の多くが難防除雑草と呼ばれており、その代表的な雑草名は、クログワイ、オモダカ、シズイ、ホタルイなどである。これらは、しばしば田んぼ内で優占化して水稲除草剤の効果が十分に発揮されずに問題となる。
◆地下30cm以上からでも発生する力が
多年生雑草の防除が難しいのは、主として、雑草の生態によるところが大きい。
例えば、多年生雑草の発生源の一つである塊茎は、地中のいろんな深さに分布しており、しかも、地下30cm以上もある深いところからも発生してくる力を持っていることが多い。このため、地上部に姿を現す時期がバラバラになり、残効が長いといわれる水稲除草剤でも効力が持たないほど長い期間発生し続けたりすることがある。
その他、塊茎が種子に比べれば図体が大きく、持っている栄養の量が多いので、地上部が枯れても地下部が生きていて再生してくること、種子なら枯らせる程度の除草剤の量では効き目不足になること、などがあげられる。
最近では、ベンスルフロンメチルやピラゾスルフロンエチル、イマゾスルフロンといったスルホニルウレア(SU)系除草剤に抵抗性を持つ雑草が優占化してしまって難防除となっている多年生雑草もあるので、注意が必要だ。今までよく効いていたのに年々雑草が残るようになったり、多く発生する雑草の種類が限られるような場合には、抵抗性雑草が発生している可能性を疑ってほしい。
(写真=ホタルイ)
◆除草剤と秋耕で塊茎を減らす
まずは、自分の田んぼに生えている雑草の種類や抵抗性雑草の可能性などを指導機関等にも確認しながら十分に把握してほしい。その上で、その雑草に効果のある除草剤を選択して使用するようにしたい。多くの場合、それだけで十分に除草効果があるはずである。
ところが、多年生雑草の場合は、本田で散布した除草剤の効果が薄れる頃に塊茎を形成させたり、肥大させたりして、しっかり翌年の発生源をつくることが多い。
このような特性があるため、翌年の発生源となる塊茎を減らすようにする戦略が難防除雑草を徹底的に減らすために有効だ。
具体的には、まず、秋?冬にかけて田起こしをすることである。これにより、地中にあった塊茎が地上に出てきて乾燥したり、寒さにあたったりして枯れてしまうのである。もちろん、たくさんある塊茎が全て表に出るわけではないので、田起こしだけでは完全ではないが、それでも翌年の発生源となる塊茎の量を減らすことができる。
もうひとつの方法は、刈り取り後の塊茎を肥大させる時期に、根部まで浸透する力をもった非選択性の茎葉処理除草剤を散布して、地下部まで完全に枯らしてしまうことである。こうして、塊茎を肥大させずに枯らすことができれば、翌年の発生源を大きく減らし、翌年の発生量を少なくすることができるというわけである。以下、この方法による実績が多いラウンドアップマックスロードによるクログワイの防除例を紹介する。
(写真=オモダカ)
◆クログワイの水稲刈跡散布による防除
クログワイは、稲の刈り跡にも茎葉が伸びてくるので、この時期に浸透性の高い除草剤を使って枯らすことで、塊茎の量を減らし、塊茎のサイズも小さくすることができる。これを毎年続ければ、年を追うごとにクログワイの発生量を減らすことができるわけだ。
この防除の決め手は、除草剤の根までの浸透移行力にある。その点、ラウンドアップマックスロードは根までの浸透力に定評があり、クログワイの水稲刈跡処理での有効事例も多いので、同剤を例にとって使用方法を紹介する。別表には、水稲刈跡散布の登録がある除草剤を整理したので参考にしてほしい。
この除草法のコツは、クログワイの緑の部分が十分に残っている状態(目安20cm以上)で、ラウンドアップマックスロードの50倍液をクログワイの茎葉に十分量散布することである。緑が残っていることで、雑草内での浸透移行がしっかり行われ、50倍液という通常より少し濃いめの液にすることで、根っこまで到達する有効成分の量を増やすことができる。
もちろん、気候や地域の違いによって、最適な倍率や散布水量が異なるであろうが、ラウンドアップマックスロードの場合、50倍液の10アールあたり50リットル散布が最も効果が高くお勧めのようだ。
この方法は、もちろんスルホニルウレア抵抗性であっても問題無く効果があるので、クログワイの発生が多い田んぼや、抵抗性に悩まされているような場合には是非お試しいただきたい。
(写真=クログワイ)
(上図はクリックすると大きなPDFファイルにリンクします)
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