農薬:防除学習帖
野菜の病害防除6【防除学習帖】第52回2020年5月22日
6.炭疽病
(1)病原菌
ア.菌種
病原菌は、子のう菌類(または類縁)に属する糸状菌(かび)である。
高温多湿を好み、雨が多い時に被害が大きくなるものが多い。
野菜や草花、果樹など多くの作物に発生する。
イ.病徴
一般的には、茎葉では、灰白色や黒ずんだ円形から紡錘形の斑点が表面に現れ、後に葉や茎全体へと広がる。葉柄に発生した場合は、病斑部より先端が枯死する。
いちごの場合、クラウン部に発生すると、下葉が生気を失って垂れ下がるようになり、病勢が進むと株全体がしおれて枯死する。クラウン部を切断すると外から内側へ褐変が生じる。
ウ.被害
葉や茎が侵されると著しく生育不良になりひどい場合には枯死する。また果実に発生すると著しい品質の低下や収量減少を起こす。
(2)生活環
被害茎葉内に潜伏している菌糸や発病後に放出された胞子が付着した育苗資材、病原菌の胞子や菌糸を内在する汚染種子・苗が第一伝染源となる。
春先に病斑をつくり、その上に分生胞子を形成する。
この分生胞子は、雨滴や水やり時の水滴に乗って周囲に伝搬していき、自身に粘性があるため風で飛ばされて伝搬することはない。
(3)防除法
ア.耕種的防除
雨滴や灌水時の水滴など伝搬には水が絡むので、水滴が作物の茎葉にできるだけ触れないようにすることが防除の第一歩である。
このことを念頭に置いた上で、次の対策の内、実行可能なものを積極的に実行する。
(1)窒素質(N)肥料のあげすぎ(葉色が濃緑になる)は発病を助長するので、土壌診断に基づいた適正施肥を行う。
(2)雨滴で伝搬するので、雨除け栽培やハウス栽培を行う。
(3)被害葉、被害果実、巻きひげ等は翌年の伝染源になるので、できるだけ取り除く。
(4)排水を良くして、敷きワラやマルチなどを施して、土や水の跳ね上がりを防ぐ。
(5)種子の温湯消毒が可能な作物(シュンギク等)の場合は、実施する。
イ.化学的防除
(1)効果のある有効成分
主要な防除薬剤は以下のとおりである。
炭疽病の発生が多くなった後では、たとえ治療効果のある薬剤でも十分な効果を発揮することが難しい。
効率的に防除するには、予防効果のある薬剤の定期散布を基本とし、病害が発生したら、発生初期のまだ病害が少ないうちに治療効果のある薬剤を使用して徹底防除を行うとよい。
「病害蔓延後に使用しても効果が期待できる治療剤は無い」と考え、早め早めの予防剤あるいは予防治療混合剤によるローテーション散布が最も重要である。
クリックで拡大
(2)土壌消毒の徹底
土壌中に存在する病原菌を効率的に除去するのに有効な方法である。土壌消毒の方法によって使用方法は異なるが、薬剤の土壌混和・被覆、土壌灌注処理・被覆といった方法が一般的である。
(3)作物別有効薬剤
炭疽病に登録のある農薬の使用方法、適用作物を別表に示したので参考にしてほしい。散布剤を使用する場合は、株元や葉裏にも薬液が十分にかかるように丁寧に散布する。
クリックで拡大
重要な記事
最新の記事
-
約1cm程度の害虫を強力捕獲「吊るしてGET虫ミニ強力タイプ」新発売 平城商事2025年5月2日
-
農中情報システム 自社の導入・活用のノウハウを活かし「Box」通じたDX支援開始2025年5月2日
-
洗車を楽しく「CRUZARD」洗車仕様ホースリールとノズルを発売 コメリ2025年5月2日
-
戦後80年の国際協同組合年 世代超え「戦争と平和」考える パルシステム神奈川2025年5月2日
-
生協の「地域見守り協定」締結数 全市区町村数の75%超の1308市区町村に到達2025年5月2日
-
ムコ多糖症ニホンザルの臨床徴候改善に成功 組換えカイコと糖鎖改変技術による新型酵素2025年5月2日
-
エフピコ×Aコープ「エコトレー」など積極使用で「ストアtoストア」協働を拡大2025年5月2日
-
JA愛知信連と高機能バイオ炭「宙炭」活用に関する協定締結 TOWING2025年5月2日
-
5月の野菜生育状況と価格見通し だいこん、はくさい、キャベツなど平年並み 農水省2025年5月2日
-
「ウェザーニュースPro」霜予測とひょう予測を追加 農業向け機能を強化2025年5月2日
-
新品種から商品開発まで 米の新規需要広げる挑戦 農研機構とグリコ栄養食品2025年5月1日
-
米の販売数量 前年比で86.3%で減少傾向 価格高騰の影響か 3月末2025年5月1日
-
春夏野菜の病害虫防除 気候変動見逃さず(1)耕種的防除を併用【サステナ防除のすすめ2025】2025年5月1日
-
春夏野菜の病害虫防除 気候変動見逃さず(2)農薬の残効顧慮も【サステナ防除のすすめ2025】2025年5月1日
-
備蓄米 小売業へ2592t販売 3月末の6倍 農水省2025年5月1日
-
イモ掘り、イモ拾いモ【酒井惇一・昔の農村・今の世の中】第338回2025年5月1日
-
地元木材で「香りの授業」、広島県府中明郷学園で開催 セントマティック2025年5月1日
-
大分ハウスみかんの出荷が始まる 大分県柑橘販売強化対策協議会2025年5月1日
-
Webマガジン『街角のクリエイティブ』で尾道特集 尾道と、おのみち鮮魚店「尾道産 天然真鯛の炊き込みご飯」の魅力を発信 街クリ2025年5月1日
-
5月1日「新茶の日」に狭山茶の新芽を食べる「新茶ミルクカルボナーラ」 温泉道場2025年5月1日