農薬:防除学習帖
野菜の病害防除12 土壌病害(2)【防除学習帖】第58回2020年7月3日
土壌病害の病原菌は、多犯性(多くの作物を病害を起こす)のものが多く、一つの病原菌が複数の作物に被害を起こすことが多い。
違う作物で違う病名であっても、病原菌が同じであれば防除対策が同じである場合が多いので、この項では病原菌別に防除対策を整理する。
なお、全ての土壌病害に共通する防除法である輪作、太陽熱消毒、土壌還元消毒、蒸気・熱水消毒については前回紹介したので、必要な場合を除き割愛して紹介する。
1.フザリウムが起こす病害
フザリウム(Fusarium)は、糸状菌(かび)の仲間で、不完全菌類に分類される。野菜に重篤な病害を起こすのは、Fusarium oxysporumという菌がほとんどである。
主な病害を表に示したので参考にしてほしい。
2.病徴と生態
発病に不適な環境になると、厚膜胞子と呼ばれる耐久体をつくり土壌中でも4~5年と長く生き残ることができる。土壌中では作物の根の先端部や傷口から侵入し、多くの作物で種子伝染もする。一度発生するとたくさんの伝染源が長年残る厄介な病原菌である。高湿度や極端な乾燥状態になると発生が多くなる。
共通の特徴として、維管束を侵して養分や水分の転流を妨げて萎れたり、葉が黄化したりする。維管束を輪切りにしてみると、褐変していることが多い。
3.防除法
(1)抵抗性品種・台木の利用
フザリウム菌は多くの作物に重篤な被害を及ぼすため、多くの作物に抵抗性品種が開発されている。ただし、これらの抵抗性品種は万能ではないことも多く、抵抗性品種であっても病害が発生したり、その抵抗性品種も侵すことができる病原菌が登場することがしばしばある。
このため、抵抗性品種は病害が起こりにくくなる補助的なものと割り切り、他の耕種的防除法や化学防除を組み合わせて防除を組み立てるようにするとよい。
(2)輪作
ほとんど侵されることの無いイネ科作物との輪作が効果高い。可能であれば、時々水田化すると抑制効果が高くなる。
(3)有機物の施用
有機物の施用は、土壌の物理性を改善し、土壌微生物の多様性を増すことで病原菌の密度を下げる効果がある。フザリウムの場合も、堆肥(完熟)、バーク堆肥、鶏糞、稲わらで病害発生の軽減効果が認められている。
しかし、未熟堆肥など未分解有機物を施用した場合、フザリウムの厚膜胞子の発芽を促すことが知られており、菌密度が増加してかえって発病が多くなる。このため、フザリウム病が発生している畑では、絶対に未熟堆肥など未分解の有機物は使用してはならない。
(4)石灰の施用
フザリウム病は酸性土壌で発生が多くなるので、消石灰など石灰質資材の施用して酸性土壌をアルカリ側に矯正することにより発病を抑えることができる。
(5)湿度を下げる
湿度が高いと発生が多くなるので、ほ場の排水をよくし、風通しをよくして湿度を下げる。
(6)窒素肥料を多用すると、葉色が濃く、作物体が柔らかくなるので発生が多くなるので、土壌診断にもとづく適正施肥を心がける。
(7)根が傷むと菌が侵入しやすくなるので、根いたみの原因(湿害、干害、塩類集積、土壌害虫の被害、土壌センチュウの被害)を避けるよう管理する。
(8)発病した作物残渣などをほ場に残したりすき込んだりするとフザリウム菌の密度が増して発病が多くなるので、それらは可能な限り速やかにほ場の外に出して適切に処分すること。
(9)種子消毒
フザリウム菌は種子伝染するので、健全種子か種子消毒済の種子を使う。
(10)土壌消毒剤の使用
土壌消毒剤(クロルピクリン剤、ディトラペックス剤、ダゾメット剤)を使用し、病原菌密度を下げるようにする。その際、土壌消毒剤の使用方法を確実に守って使用すること。特に、ダゾメット剤は使用する際の土壌水分や確実なガス抜きの実施など使用方法を誤ると効果が出ないばかりか薬害が起こる可能性もあるので十分な注意が必要である。
(11)登録農薬の使用
フザリウム病に登録のある農薬の一覧を表に整理したので、参考にしてほしい。
フザリウムは土壌病害であるので、地上部に散布して防除する薬剤はなく、土壌消毒か薬液の土壌灌注、種子粉衣(種子にまぶす)、種子浸漬、種球浸漬といった使用法になる。
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