農薬:防除学習帖
みどり戦略に対応した防除戦略(11)1作期を通じたのリスク換算量【防除学習帖】 第217回2023年9月23日
令和3年5月に公表され、農業界に衝撃を与えた「みどりの食料システム戦略」。防除学習帖では、そこに示された減化学農薬に関するKPIをただ単にKPIをクリアするのではなく、できるだけ作物の収量・品質を落とさない防除を実現した上で、みどりの食料システム法のKPIをクリアできる方法がないかを探ろうとしている。
前回までに、水稲栽培を種子消毒、播種・育苗期、移植、生育期、収穫期の5つに分け、その時期の農薬の使用場面ごとにみどり戦略対策の方向を探り、それぞれの検討が終了した。
今回は、時期を分けずに、1作期を通じてのリスク換算量を比較して対策を検討する。比較は時期別にリスク換算量が大きかった薬剤の組み合わせと最小の薬剤の組み合わせを選んで比較・検討してみる。
1. 各時期別の防除薬剤の選択
(1) 種子消毒:薬剤別にはほとんど差がないため、一般的な吹付処理した場合を選択
(2) 苗立枯病防除剤:苗箱に灌注するタイプで異なる薬剤を選択
(3) 育苗箱処理剤:単純にリスク換算量の最大のものと最小のものを選択
(4) 除草剤:初期除草剤から初中期一発処理除草剤につなぎ、中後期除草剤で仕上げる体系からリスク換算量の最大のものと最小のものを選択
(5) 仕上げ防除:殺虫殺菌剤を地上散布するものと空中散布するものを選択
2. リスク換算量比較
1. に基づき薬剤を選択して1作期を通じてリスク換算量を試算したものを次の2表に示す。
いずれも一般的な防除体系であるが、8薬剤で17成分と19成分であるが、薬剤の選び方でリスク換算量の合計は、防除体系1が357.7に対し、防除体系2は76.7となり約5倍もの開きがあった。リスク換算量は、成分数よりも有効成分の含有量(%)とリスク係数の大小、および散布方法に大きな影響を受けるので、従来から減農薬の指標とされていた成分数カウントは、みどり戦略対応ではあまり意味がなさそうだ。
なお、時期別では、育苗箱処理剤、除草剤、仕上げ防除の時期が防除暦全体でのウエートが高かった。


3.みどりの食料システム法対応の検討
時期別では、育苗箱処理剤、除草剤、仕上げ防除の時期が防除暦全体でのリスク換算量のウエートが高かったので、このウエートの高い時期の薬剤を調整することが最も効率がよいようだ。
その方法は、前回までの時期別の検討で詳細をしたので、そちらを参照願いたい。
ただ、共通して言えることは、やはり薬剤の選択と処理方法の選択が重要なポイントであることだ。
まずは防除効果を優先して検討を進め、防除効果が同程度の候補を数剤に絞ることから始める。その中からの選択の際にリスク換算量の少ないものを選ぶようにすると良い。また、散布方法を変更できるものがあれば合わせて検討する。
その際には、あくまで防除効果を優先し、代替剤が無いものについてはそのまま残し、変更が可能な場合のみ薬剤の変更や散布方法の変更を検討するようにすると良い。防除暦はあくまで効果が無ければ意味がないので、防除効果優先の鉄則を確実に守って検討を進める必要がある。
重要な記事
最新の記事
-
情報提供やDXで厚生連医療を支える 医薬品メーカーは"節度"ある利潤を 日本文化厚生連・東公敏理事長2025年12月23日 -
数字で読む「令和の米騒動」(上) 混乱招いた流通悪者論 集荷後半に"異変"2025年12月23日 -
数字で読む「令和の米騒動」2025 (下) 始まった損切り 小売りにも値下げの動き2025年12月23日 -
【肉とビールと箸休め ドイツ食農紀行】(4)クリスマスマーケットとホットワイン2025年12月23日 -
神明が先物市場の価格使った契約を生産者に呼びかける【熊野孝文・米マーケット情報】2025年12月23日 -
米のコスト指標作成へ 米穀機構に委員会設置2025年12月23日 -
「令和7年産新米」最大12.5%値下げ アイリスグループ2025年12月23日 -
業務用米の特徴を紹介 播種前・書面契約のリスク管理 東京で業務用米セミナー&交流会2025年12月23日 -
甘み増す旬野菜「和歌山県産冬野菜フェア」直営店舗で開催 JA全農2025年12月23日 -
ノウフク・アワードで「チャレンジ賞」障害者の社会参画や地域農業に貢献 JA全農2025年12月23日 -
「石川佳純47都道府県サンクスツアーin鳥取」4年かけて遂に完走 JA全農2025年12月23日 -
「水戸ホーリーホックJ2優勝&J1昇格キャンペーン」開催中 JAタウン2025年12月23日 -
米国ニューヨーク市に人工光型植物工場のマーケティング拠点を開設 クボタ2025年12月23日 -
鳥インフル 英国からの生きた家きん、家きん肉等 輸入を一時停止 農水省2025年12月23日 -
鳥インフル ハンガリーからの生きた家きん、家きん肉等の一時輸入停止措置を解除 農水省2025年12月23日 -
鹿児島県南大隅町と包括連携協定を締結 町内事業者と働き手をサポート タイミー2025年12月23日 -
まるまるひがしにほん「東日本酒博覧会~年越し酒~」開催 さいたま市2025年12月23日 -
利用者・行政・協同組合が連携 焼売やナゲットで食料支援 パルシステム神奈川2025年12月23日 -
本格スイーツの味わい「安納芋プリン スイートポテト仕立て」期間限定で発売 協同乳業2025年12月23日 -
普段使いしながら「もしも」に備える「日常×防災・防犯」特集公開 日本生協連2025年12月23日


































