農薬:防除学習帖
みどり戦略に対応した防除戦略(18)トマトのコナジラミ類防除剤【防除学習帖】 第224回2023年11月11日
令和3年5月に公表され、農業界に衝撃を与えた「みどりの食料システム戦略」。防除学習帖では、そこに示された減化学農薬に関するKPIをただ単にKPIをクリアするのではなく、できるだけ作物の収量・品質を落とさない防除を実現した上で、みどりの食料システム法のKPIをクリアできる方法がないかを探ろうとしている。
現在、農薬の使用量も多く、出荷量も多いトマトを題材にして、どんなリスク換算量の低減方策があるのか探っており、まずは、トマトの防除タイミング(場面)ごとにリスク換算量を減らす方策にどんなものがあるか検証している。検証する防除タイミングは、①苗の本圃への植付前、②育苗期後半~植付時、③生育期の3つであり、前回から③の生育期に使用する農薬について検証しており、具体的な対象病害虫別に検証してみる。今回は、防除が必須のコナジラミ類防除剤について検証する。
1.生育期トマトのコナジラミ類防除剤の10aあたりリスク換算量
トマトのコナジラミ類防除には、多くの農薬登録があり、薬剤系列ごとに複数の農薬が登録を持っている。コナジラミ類は、抵抗性の発達リスクが高い害虫であるため、実際には複数の薬剤系列をローテーションで使用することが多い。
このため、薬剤系列別に薬剤を並べ、リスク換算量を比較した。散布水量については、300ℓ/10aに統一して試算した(次表)。また、希釈倍数に幅がある場合は、最も濃い濃度の登録内容を採用して試算した。
10aあたりのリスク換算量は、今回比較した主要な薬剤では1.5~67.2gと薬剤によってまちまちであるが、数百の単位になる薬剤はなく、1回散布あたりのリスク換算量はそう多くはない。
このため、コナジラミ類防除剤においても防除効果を最優先にして薬剤のローテーションを考えるようにした方が良いだろう。

2.みどりの食料システム法対応の検討
前述のとおり、この処理時期の薬剤については、リスク換算量はあまり意識せずに、防除効果を優先すべき時期だ。一覧表に示したとおり、いずれの農薬も作期全体を通してのリスク換算量の低減に与える影響は少なく、必要な農薬は確実に使用した方が良いので、異なる薬剤系列でのローテーション散布を実施するようにする。
もし、あえてリスク換算量を生育期に考えるとするならば下記のような対策が考えられるので、必要に応じて検討してほしい。しかし、繰り返しになるが、防除効果が落ちないことを最優先にしてほしい。
(1) 害虫の発生盛期に複数散布する薬剤についてはリスク換算量の小さいものを選ぶ
害虫の発生盛期においては、ローテーション散布が1巡では収まらず2巡目以上になって、同じ薬剤が複数回散布されるケースもある。
このため、登録上の1作期あたり散布回数の多い薬剤はできるだけ、同じ系列の薬剤群の中からリスク換算量の小さいものを選択するとよい。
リスク換算量を比較して単純にリスク換算量が少ない薬剤を選択する場合は、同じ効果を有することを前提とすべきであって、防除効果が明らかに劣ると判明している場合の変更は得策ではない。
(2) 薬剤の1回当たりの処理量を減らす
1000倍~2000倍など希釈倍数に幅のある登録がある場合は希釈液が薄い方(この場合は2000倍)で使用する。
ただし、濃度のよって適用できる害虫が異なったり、残効が短くなったりすることもあるので、発生量が少ない時など防除効果を落とさないよう注意が必要である。
(3) できるだけ残効期間の長い薬剤を使用する
残効が長ければそれだけ散布間隔を長くすることができるので、1作期の総使用回数を減らすことが可能となる。
(4)生物農薬などリスク換算値ゼロの農薬を使用する
天敵農薬や気門封鎖剤など、リスク換算値がゼロの剤を防除体系に組み込むことでリスク換算量を減らすことができるので、実際の営農と照らし合わせて、作業性やコスト面がクリアできる場合には積極的に活用すると良い。
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