昆虫の細胞内の細菌が宿主の野外性比をメスに偏らせる過程 世界で初めて観測 農研機構2024年5月22日
福井大学学術研究院工学系部門の宮田真衣助教と千葉大学大学院園芸学研究院の野村昌史教授、農研機構生物機能利用研究部門の陰山大輔グループ長補佐らの研究グループは、宿主をメスのみにする細菌ボルバキアが、石垣島のミナミキチョウ(Eurema hecabe)において急速に広まる過程を観測。その結果、オスとメスがほぼ1:1で存在していた状態から、93.1%がメスといった著しくメスに偏った状態に、4年間で変化したことを明らかにした。
同研究では、2015年から2022年にかけて、石垣島で合計1392匹のミナミキチョウを採集し、性比を記録。その結果、2015から18年にかけてほぼ1:1だった性比が2019年からメスに偏り始め、2022年には93.1%がメスとなった。
採集した個体を持ち帰り全ての個体のwFem保有の有無をPCR法によって調査した結果、2017年以降wFem保有率が上昇し、2022年にはメスの87%がwFemを保有していた。また、石垣島における野外の性比がメスに偏り始めた2019年に、野外で採集したメスを実験室内に持ち帰り、次世代を飼育し、その性比を確認。その結果、wFemを保有していた個体では、たしかにメス化が起きており、野外においてwFemが広がることによって性比がメスに偏ったことが明らかとなった。
4年間という短期間で、メス化を引き起こすボルバキアにより島中がメスばかりになったミナミキチョウだが、今後どの程度この性比異常が維持されるのかを継続して調査する予定。リュウキュウムラサキというチョウでは、オス殺しを引き起こすボルバキアが蔓延することによって著しくメスに偏っていた性比が、数年で雌雄1:1に回復したことが報告されている。
ボルバキア等の細菌が引き起こす生殖操作によって子がメスのみになる現象はいくつかの昆虫で報告されていたが、今回、こうした細菌が野外の宿主集団内で急速に広まり、短期間で宿主の集団性比を極端に歪めるまでに至ったことを世界で初めて示した。集団性比の劇的な変化は、進化、生態、行動、ゲノムなど、宿主の様々な側面に大きなインパクトを与えると考えられる。
同研究は、野外における細菌と宿主昆虫の攻防の一端を捉えた貴重な研究となる。
重要な記事
最新の記事
-
【注意報】とうもろこしにアワノメイガが多誘殺 早めの防除を 北海道2025年7月1日
-
【人事異動】農水省(7月1日、6月30日付)2025年7月1日
-
農水省 熱中症対策を強化 大塚製薬と連携し、コメリのデジタルサイネージで啓発2025年7月1日
-
作況指数公表廃止よりもコメ需給全体の見直しが必要【熊野孝文・米マーケット情報】2025年7月1日
-
【JA人事】JA岡山(岡山県)新会長に三宅雅之氏(6月27日)2025年7月1日
-
【JA人事】JAセレサ川崎(神奈川県)梶稔組合長を再任(6月24日)2025年7月1日
-
【JA人事】JA伊勢(三重県) 新組合長に酒徳雅明氏(6月25日)2025年7月1日
-
米穀の「航空輸送」ANAと実証試験 遠隔地への迅速な輸送体制構築を検証 JA全農2025年7月1日
-
JA全農「国産大豆商品発見コンテスト」開催 国産大豆を見つけて新商品をゲット2025年7月1日
-
産地直送通販サイト「JAタウン」新規会員登録キャンペーン実施2025年7月1日
-
7月の飲食料品値上げ2105品目 前年比5倍 価格改定動向調査 帝国データバンク2025年7月1日
-
買い物困難地域を支える移動販売車「EV元気カー」宮崎県内で運用開始 グリーンコープ2025年7月1日
-
コイン精米機が農業食料工学会「2025年度開発賞」を受賞 井関農機2025年7月1日
-
「大きなおむすび 僕の梅おかか」大谷翔平選手パッケージで発売 ファミリーマート2025年7月1日
-
北海道産の生乳使用「Café au Laitカフェオレ」新発売 北海道乳業2025年7月1日
-
非常事態下に官民連携でコメ販売「金芽米」市民へ特別販売 大阪府泉大津市2025年7月1日
-
農作物を鳥被害から守る畑の番人「BICROP キラキラ鳥追いカイト鷹」新発売 コメリ2025年7月1日
-
鳥取県産きくらげの魅力発信「とっとりきくらげフェア」開催 日本きのこセンター2025年7月1日
-
鳥インフル 英国チェシャ―州など14州からの生きた家きん、家きん肉等 一時輸入停止措置を解除 農水省2025年7月1日
-
新潟県長岡市から産地直送 フルーツトマト「これトマ」直送開始 小海工房2025年7月1日