流通:食は医力
【シリーズ・食は医力】第59回 太陽の恵み、乾物・干物2014年2月13日
・干すことでおいしく
・健康にもよい出汁の王様
・日本の食の宝を大事に
立春は過ぎましたが、太陽のありがたみを感じる季節が続きます。日本人は食物を日に干して保存食にしたばかりか、食べ物をおいしくいただくことにも役立ててきました。今日は干物、乾物という地味だけれど大事な食物のお話です。
◆干すことでおいしく
昔あった乾物屋さんが姿を消してどのくらい経つでしょうか。店頭には干した農産物、海藻、魚介類がありましたが、考えてみればおコメだって収穫後、稲穂を竿にかけて日干ししたわけだし、ほかにもお日さまの恩恵に預かった食品は多岐にわたっていました。
乾物は農産物を乾燥させたもの、干物は魚介類を乾燥させたものです。ただし干物は腐敗しないように塩を振ってから乾燥させるのが昔も今も普通です。で、昔の山国の人々は、干物を食べて塩の補給をするという一石二鳥としていた一面もありました。
魚介を単純に塩漬けにせず干した理由は単純です。要するに干したほうがおいしくなったから。干すことで野菜も魚もおいしくなる。これはいつの時代にも変わらぬ真理です。
干し柿は生の柿より何倍も甘みが強いし、切干大根を煮たのなどは生より甘みを強く感じるので野菜が苦手な子供にも好適でしょう。
◆健康にもよい出汁の王様
干した食品は旨みも増しています。味噌汁も出し汁も、生シイタケではあの旨みは出ません。なにせ13世紀に宗から帰国した道元が出汁として干しシイタケを使った記録があるほどの伝統食です。
考えてみると、シイタケのみならず昆布、鰹節、煮干など出汁の王様は、みな干して出来上がります。干すことによって旨みが増しているわけで、太陽の力の偉大さを改めて感じさせられます。
乾燥品と生と、食物繊維が同量になるようにして比較してみると、ミネラルやビタミンB群は、切り干し大根のほうが生大根より多いことがわかります(シイタケは成分表のデータの制約により比較できず)。
ここで大事なことは二つです。
一つは生のほうがビタミンが壊れておらず栄養的に優れているという常識(?)は、大根、シイタケ、昆布などで見る限り正しくなく、ビタミン、ミネラル、蛋白質などでは日干し品も生も優劣がないこと。
もう一つ、もっと大事なことは、日干しすることで旨みが増すため、出汁の干しシイタケ、昆布、鰹節、煮干の栄養が溶け出して私たちがそれをたっぷり摂取することになることです(煮出した後のシイタケや昆布そのものを食べることもお勧めですが)。
日本の伝統的な出汁をとることの重要性を、健康の面からもしっかり受け止めたいものです。
◆日本の食の宝を大事に
紙数の関係で干しシイタケだけに話を絞りますが、なによりビタミンDの宝庫だという点。カルシウムの吸収を促すので骨粗しょう症対策には欠かせません。
そればかりか脳卒中や心臓病に効能があると言われているし、カゼへの抵抗力を増す働きもあります。味噌汁や煮物に干しシイタケを毎日、せっせと利用していることが、わが家にカゼが入り込まない理由の一つかと秘かに思っています。
ただし近年、室内で火力によって手早く干す乾物の割合が増え、天日干しが減っているのは残念です。乾物なら天日干しのほうが味も栄養も(特に味は)優れているはずで、薬膳では天日干しを強く推しています。
ともあれ昔は切干大根、干瓢(かんぴょう)、芋がら、大根などの干し葉、凍み豆腐、アジやカマスの干物、スルメ、しらす干し、ノシアワビなど、日干し食品が生活の中に多種多様に入り込んでいて、保存食として生活の質を守ってきたものでした。
保存食の重要性がやや薄れた現代とはいえ、健康のために日本の食の宝、日干し食品をもっと大事にしていきたいですね。先人の知恵に学ぶことの重要さを忘れないようにしたいものです。
重要な記事
最新の記事
-
【注意報】ダイズ、野菜類、花き類にオオタバコガ 県内全域で多発のおそれ 埼玉県2025年9月3日
-
【農協時論】小さな区画整理事業 生産緑地保全と相続対策の要に JA東京スマイル 眞利子伊知郎組合長2025年9月3日
-
【注意報】水稲に斑点米カメムシ類 県下全域で多発のおそれ 愛媛県2025年9月3日
-
【注意報】ねぎ、キャベツなどにシロイチモジヨトウ 府内全域で多発のおそれ 大阪府2025年9月3日
-
【注意報】いちごに炭疽病 県下全域で多発のおそれ 愛媛県2025年9月3日
-
【サステナ防除のすすめ2025】水稲の仕上げ防除 カメムシ対策は必須 暑さで早めに対応を2025年9月3日
-
ミサイルは兵糧攻めに有効か【小松泰信・地方の眼力】2025年9月3日
-
「コウノトリ育むお米」4万4000円 JAたじまが概算金 「消費者も付加価値を理解」2025年9月3日
-
【人事異動】農水省(9月2日付)2025年9月3日
-
8月大雨被害に営農支援策 農機修繕、再取得など補助2025年9月3日
-
緑茶輸出 前年比9割増 7月の農産物輸出実績2025年9月3日
-
JA貯金残高 107兆337億円 7月末 農林中金2025年9月3日
-
よりよい営農活動へ 本格化するグリーンメニューの実践 全農【環境調和型農業普及研究会】2025年9月3日
-
フルーツプレゼント第3弾は新潟県産日本ナシ 応募は9月23日まで にいがた園芸農産物宣伝会2025年9月3日
-
9月9日を「キュウリの日」に 行政と連携して"キュウリ教室"初開催 JA晴れの国岡山と久米南町2025年9月3日
-
大学協同組合講座設置促進シンポジウム 9月16日にオンラインで開催 JCA2025年9月3日
-
脱炭素と環境再生へ 農林中金のコンソーシアムが本格始動2025年9月3日
-
『農地六法 令和7年版』発売 農地法関連政省令・通知を完全収録2025年9月3日
-
「アウト オブ キッザニア in えひめ」で「だしの伝道師」担当 マルトモ2025年9月3日
-
大阪・関西万博で「EARTH MART DAY」開催へ 食と農の未来を考えるイベント クボタ2025年9月3日