流通:食は医力
【シリーズ・食は医力】第69回 老化も防ぐ梅干の底力2015年1月28日
・最初の駅弁梅干おにぎり
・クエン酸で代謝も活発に
・下痢にも便秘にも
・ほぐして飲む梅干割り
各地で梅のつぼみがぼつぼつ膨らみ始める季節となりました。『源氏物語』には桜と覇を競うように梅が頻繁に登場しますが、これはもっぱら花の話。平安、室町の時代は実のほう、つまり梅干はあまり関心がもたれませんでした。
それでも戦国時代には、武将たちが喉の渇き防止や疲労回復に利用したと言われています。文献的には1615年、家康が大坂夏の陣の陣中にコメ、梅干、味噌、鰹節のほかは持ち込まぬよう命じたというのが古い部類に属します。
◆最初の駅弁 梅干おにぎり
時代は下って上野から宇都宮まで鉄道が走るようになった明治18年、宇都宮で梅干お握りの駅弁が売り出されました。たくわん付きで2個5銭だったそうです。今なら250円くらいでしょうか。
戦中戦後の弁当といえば日の丸弁当でした。麦ご飯をアルミの弁当箱に詰めたその真ん中に梅干が一個、埋め込まれているのをよく食べたものです。
これもタクワンぐらいしか付いていなかった気がしますが、戦後もしばらくすると、その上に、醤油の掛かった鰹節と海苔が覆いかぶさるようになりました。
◆クエン酸で代謝も活発に
梅干はあの酸っぱさが身上です。主役の有機酸はクエン酸、リンゴ酸、コハク酸、フマール酸などですが、酸っぱいというので唾液がたくさん出てくるばかりか、胃液、胆汁、膵液の分泌まで増えて消化作用を促します。
歳をとると胃酸のバランスが崩れがちですが、梅干は消化促進、食欲向上、肝機能強化などが期待できるので、中年以上にはとりわけありがたい食品ということになります。
特にクエン酸は代謝活動を活発化して乳酸の燃焼を進めるので疲労回復に貢献するほか、中高年の肩こり、腰痛に著効があると言われてきました。乳酸の害を防ぐということは、血管の老化を防ぐのをはじめ、体全体の老化防止にも非常に重要なことです。
昔から「朝の梅干で一日、難逃れ」などと言ってきたし、長野県南部では梅干を食べて山に入ると道に迷うことがないと信じられてきたとか。梅干の霊験(効能というべきですが)はすごかったようです。
◆下痢にも便秘にも
昔から言われたのは殺菌・解毒力で、日の丸弁当がはやった一因はここにあります。私の母も、夏などご飯を釜からお櫃(おひつ)に移すときに、まず梅干を一つ入れてから移していました。
そんなわけで、梅干は下痢にも便秘にも効くという面白い働きがあります。農林業に携わる人たちに好まれたのは、こうした梅干のさまざまな効能が重宝されたからでしょう。
梅を干したものはいろんな形で利用されてきました。たとえば梅肉エキスです。梅干を裏ごしして砂糖などと煮込んだもので、梅醤(うめびしお)とも言い、サプリメントとしても売られています。
梅肉エキスは体力回復剤として使われるほか、風邪、発熱、体調不良、食欲減退、頭痛、歯痛などいろんな場面で効果を発揮します。
そんなときわが家では梅醤(うめしょう)番茶も利用してきました。梅醤番茶は、梅干をほぐして生姜をおろしたのを加え、醤油を少々たらし、熱い番茶を注いだだけのもの。ふうふう言って飲むと汗が出て、特に風邪の特効薬としてお勧めします。
◆ほぐして飲む梅干割り
最後は酒の話です。梅の実といえば何より梅酒ですが、焼酎好きの多くが梅干割りを愛飲しているのはご存じですね。でもそのほとんどが梅干をただ飾りもののように入れています。
これでは梅の成分は出るはずもなく、「焼酎の塩水割り」のようなものです。見た目は悪いけれど、梅干はほぐして飲んでもらいたいです。
梅干で心配なのは塩分過多ですが、塩出しするか塩分5%前後のものを選べばいいでしょう。近所の梅干専門店の主人は「減塩梅干なんて本物じゃない」と小馬鹿にしたような口ぶりだったので、以来、わが家は別の店で減塩ものを買っています。塩辛いばかりが能ではないし。
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