「コシヒカリ」で出穂早める遺伝子特定 生物研2013年7月3日
稲は日の長さの変化に反応して穂が出る(出穂)性質を持つ。(独)農業生物資源研究所(生物研)は、「コシヒカリ」で、出穂を調整する遺伝子を突き止めた。この遺伝子を活用することで、出穂時期を早めた新品種開発の可能性がひらかれる。この成果は6月17日、英国科学雑誌『The Plant Journal』(電子版)に掲載された。
「コシヒカリ」は、日本一の栽培面積と生産量を持つが、その理由には、食味のよさとともに比較的寒冷地でも栽培できることがある。これは、「日本晴」などの他品種に比べて穂が出る時期が早く、寒くなる前に収穫を終えることができるためだ。
生物研は、「日本晴」と「コシヒカリ」のゲノム(遺伝子情報)を利用して、穂が出る時期を早くする遺伝子・Hd16を特定した。それによると、「日本晴」の遺伝子は日の長さに対する反応性を強く持ち、日の長さが短くなるまでは穂が出る時期を遅くする働きをする。一方、「コシヒカリ」のHd16遺伝子は、その働きが低下して日の長さに対する反応が弱まるため、穂の出る時期が早まることが分かった。
また国内外の稲品種について、このコシヒカリ型「Hd16」遺伝子のタイプを調べたところ、100年前に山形県で育成された「森多早生」から伝わったことが明らかになった。さらに1956年以降の品種では、コシヒカリ型のHd16遺伝子を持つ品種の比率が高くなっており、新しい品種を育成する際にこの遺伝子を持つ系統が選ばれてきたものと考えられる。
同研究所では「今後、コシヒカリ型のHd16遺伝子を導入した新品種を育成することで、さまざまな稲の品種の栽培時期を早めることできる」と期待している。出穂時期の遅い品種を改良して北陸や東北地方で寒くなる前に収穫を終えたり、九州などの品種の収穫時期をずらして作期を分散させたりすることが可能になる。
(写真、左が日本晴、右がコシヒカリ。同じ時期でもコシヒカリの方が10日ほど早く出穂する)
(関連記事)
・生物研「オープンカレッジ」受講生募集(2013.05.22)
・トビイロウンカの遺伝地図作製 イネ害虫では世界初(2013.03.07)
・気象データからイネの生育状況を予測 世界初のシステムを開発 生物研(2012.12.07)
・免疫不全豚開発に成功 生物研などが世界で初めて(2012.06.14)
重要な記事
最新の記事
-
「良き仲間」恵まれ感謝 「苦楽共に」経験が肥やし 元島根県農協中央会会長 萬代宣雄氏(2)【プレミアムトーク・人生一路】2025年4月30日
-
【農業倉庫保管管理強化月間特集】現地レポート:福島県JA夢みなみ岩瀬倉庫 主食用米確かな品質前面に(1)2025年4月30日
-
【農業倉庫保管管理強化月間特集】現地レポート:福島県JA夢みなみ岩瀬倉庫 主食用米確かな品質前面に(2)2025年4月30日
-
アメリカ・バースト【小松泰信・地方の眼力】2025年4月30日
-
【人事異動】農水省(5月1日付)2025年4月30日
-
コメ卸は備蓄米で儲け過ぎなのか?【熊野孝文・米マーケット情報】2025年4月30日
-
米価格 5kg4220円 前週比プラス0.1%2025年4月30日
-
【農業倉庫保管管理強化月間にあたり】カビ防止対策徹底を 農業倉庫基金理事長 栗原竜也氏2025年4月30日
-
米の「民間輸入」急増 25年は6万トン超か 輸入依存には危うさ2025年4月30日
-
【JA人事】JAクレイン(山梨県)新組合長に藤波聡氏2025年4月30日
-
【'25新組合長に聞く】JA新潟市(新潟) 長谷川富明氏(4/19就任) 生産者も消費者も納得できる米価に2025年4月30日
-
備蓄米 第3回は10万t放出 落札率99%2025年4月30日
-
「美杉清流米」の田植え体験で生産者と消費者をつなぐ JA全農みえ2025年4月30日
-
東北電力とトランジション・ローンの契約締結 農林中金2025年4月30日
-
大阪万博「ウガンダ」パビリオンでバイオスティミュラント資材「スキーポン」紹介 米カリフォルニアで大規模実証試験も開始 アクプランタ2025年4月30日
-
農地マップやほ場管理に最適な後付け農機専用高機能ガイダンスシステムを販売 FAG2025年4月30日
-
鳥インフル 米デラウェア州など3州からの生きた家きん、家きん肉等 輸入停止措置を解除 農水省2025年4月30日
-
埼玉県幸手市で紙マルチ田植機の実演研修会 有機米栽培で地産ブランド強化へ 三菱マヒンドラ農機2025年4月30日
-
国内生産拠点で購入する電力 実質再生可能エネルギー由来に100%切り替え 森永乳業2025年4月30日
-
外食需要は堅調も、物価高騰で消費の選別進む 外食産業市場動向調査3月度 日本フードサービス協会2025年4月30日