気候変動による水稲の収量や外観品質への影響 予測以上に深刻 農研機構2021年7月21日
農研機構は、屋外での栽培実験の結果に基づいて、高温と高CO2の複合的な影響を考慮した水稲の生育収量予測モデルを構築。気候変動による国内の水稲(コメ)の収量と外観品質への影響を予測した結果、従来モデルによる予測と比べ、最新モデルではコメの収量の減少や、外観品質の低下がより早く深刻化することが分かった。同成果は、生産現場で必要な高温耐性品種や栽培管理技術の導入の目安と、国・自治体による気候変動適応計画の策定や更新の際の重要な基礎情報となる。
2020年に気候変動適応法が施行され、国や自治体における気候変動適応計画策定が必要になり、気候変動による影響について信頼性の高い予測へのニーズが高まっている。農研機構は、品種や移植日、肥料投入量等の栽培管理データと、気温や日射量などの日々の気象データから、水稲の発育過程(出穂・開花期や成熟期)と玄米収量を予測する「水稲生育収量予測モデル」を構築し、これを使って水稲の収量予測などを行ってきた。
一方で、CO2濃度を現在よりも200ppm高い約580ppmに制御した屋外栽培実験「開放系大気CO2増加(Free air CO2 enrichment、FACEフェイス)実験」を岩手県と茨城県で実施したところ、CO2濃度の上昇により光合成が活発になる「増収効果」が栽培地の気温が高いほど小さくなること、高CO2では外観品質が低下するなど新たな知見が得られた。そこで、従来は別個に考慮していた「高温」と「高CO2」の影響を複合的に考慮する最新の水稲生育収量予測モデルを構築し、これを使って気候変動による国内の水稲の収量および外観品質への影響を予測した。
複数の気候予測シナリオを入力し、日本全体の1981年から2100年までの水稲の収量(各シナリオの平均値)を予測したところ、温室効果ガスの排出によってCO2濃度が上昇し続けた。日本での気温上昇が大きくなる温室効果ガス排出シナリオのRCP8.5の条件では、1981~2000年の20世紀末を基準に、従来の予測モデルでは今世紀中頃までは増収傾向。以後、減収に転じ今世紀末は20世紀末と同等に戻るのに対し、最新の予測モデルでは従来モデルでの算定値を下回り、その差は年代が進むにつれて拡大。今世紀末には約80%に減収すると予測され、水稲の収量減がより早く深刻化することが分かった。
また、外観品質低下の主要な指標である「白未熟粒率」について、収量と同様にCO2濃度が上昇し続ける条件の複数の気候予測シナリオを用いて、日本全体の1981年から2100年までの全国平均値(各シナリオの平均値)を予測したところ、気温のみを考慮した従来の推定モデルでは、白未熟粒率は、今世紀半ばでは約15%、今世紀末では約30%と予測。これに対し、気温とCO2濃度を考慮した最新の推定モデルでは、白未熟粒率は、今世紀半ばでは約20%、今世紀末では約40%と予測した。
今回得られた気候変動の影響予測結果は、今後、自治体などによる気候変動適応計画の策定や更新の際の重要な基礎情報となる。なお、暑さに強い高温耐性品種と、被害軽減のための移植(田植え)期の移動や適切な施肥管理など新たな栽培技術など適応策の農業現場への導入で、ここで示され深刻な影響は軽減されると期待されている。
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