リンゴやブドウの着色を促す「果実発色促進装置」誕生 生研支援センター2021年12月1日
農林水産業や食品産業の分野で新産業の創出や技術革新を目指す研究に資金を提供する生研支援センターは、研究成果から生まれた、リンゴやブドウの着色を促す「果実発色促進装置」を紹介している。
青白い光を放つ「果実発色促進装置」(提供:山口県産業技術センター)
「果実発色促進装置」は、味はよいのに、着色不良で果皮に色むらがあるリンゴや赤色系ブドウなどに青色LED光を照射することで商品価値を高める装置。地球温暖化の影響などでリンゴやブドウで着色が不良になり、商品価値が低下する問題の解決策のひとつとして誕生した。東京大学などが開発した青色光を放つチップLEDを多数配置した基板で仕切られた箱型の装置で、この中に着色不良のリンゴやブドウを入れて青色LED光を照射すると、果実の赤みが増すことが確認されている。
今回開発された「果実発色促進装置」は、幅50cm、奥行き40cm、高さ15cmのシンプルな箱型で、青い光を放つチップLEDを多数配置した基板が装着された仕切り板で3つの部屋に分けられている。低温の冷蔵貯蔵庫内にこの装置を置き、青色LEDを点灯させると、その熱と装置の吸排気口の調節によって、装置内の温度がそれぞれの果実の着色促進に適した温度に保てる仕組みになっている。直径12センチまでのリンゴなら、一回に最大12個を処理できる。
東京大学の試験で、貯蔵庫の中に同装置を置き、装置内の温度を15℃に保ったまま、リンゴ品種「ふじ」に青色LED光を5日間照射したところ、赤みが少なかった果皮の色が赤色になり、色むらが改善されることが確認された。照射することで果皮に含まれる色素のアントシアニンがより多く蓄積されて、着色が進む仕組みとなっている。
着色不良は、果実が葉や枝の影になって光が十分当たらないことのほか、肥料のやりすぎや高温などが原因で発生。生産者は果実に太陽の光がまんべんなく当たるように葉を摘んだり、果実の向きを変えたり、地面に反射シートを敷いたりといった工夫をこらしているが、重労働で必ずしも効果が現れるとは限らない。また、最近は、温暖化による高温で着色が進みにくいという問題も発生している。
「果実発色促進装置」はこうした生産者の悩みを解消する簡便な手法として役に立てることができる。装置を操作するために高度な技術習得は必要なく、糖度が13度以上ある果実で、着色促進効果が認められている。
この研究成果は、11月に東京ビッグサイトで開かれた「アグリビジネス創出フェア2021」で発表。「果実発色促進装置」の販売は少し先になる予定。装置の研究開発に携わった山口県産業技術センターの吉村和正専門研究員は、コストダウンが見込める台数で量産した場合、販売価格は1台当たり2万6000円程度になると試算している。
最近は、スーパーやコンビニエンスストアで粒売りのブドウが販売されており、透明な袋に詰めた着色不良のブドウに小売り店で青色LED光を照射して着色促進すれば、価格を上げて販売できる可能性もある。吉村専門研究員は「将来的には、海外へ輸出される果実を運搬中や貯蔵中に着色促進して商品価値を高める手段にも応用できる。流通事業者だけでなく、生産者が活用すれば農業所得の向上も見込める」と装置の幅広い普及を期待している。
青色LED光の照射で、色むらのあるリンゴ(上段)の果皮は赤色に改善(提供:東京大学)
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