【特殊報】サツマイモ基腐病 県内で初めて確認 県北部で発生 兵庫県2022年6月23日
兵庫県病害虫防除所は、サツマイモ基腐病の発生を県北部で確認。これを受け、6月23日に病害虫発生予察特殊報第2号を発令した。
現地における発病株(赤変、萎れ、生育不良)(写真提供:兵庫県病害虫防除所)
4月下旬、兵庫県北部のサツマイモ育苗施設で、萌芽した茎葉部が生育不良、萎れ、枯死する症状が現れたため、株を掘りあげたところ、種芋の腐敗が確認された。県病害虫防除所と農林水産省神戸植物防疫所で、病原菌を同定したところ、兵庫県では未発生のサツマイモ基腐病と判明した。
サツマイモ基腐病は、国外では、台湾、中国、タンザニア、南アフリカ、ニュージーランド、米国、キューバ、ジョージア、カリブ諸国、ブラジル、ペルー、アルゼンチンで発生していたが、2018年に沖縄県で初めて発生が確認され、その後、25都道県で発生が確認されている。
サツマイモ基腐病は、Diaporthedestruensという糸状菌に感染することにより、苗床や本圃で発生する。発病すると、茎葉の生育不良や萎れ、黄変、赤変が起こり、株の地際部から、暗褐色から黒色に変色する。その後、茎葉の枯死や地下部に形成された塊根の「なり首」部分から腐敗が拡大し、次第に塊根全体に広がる。
発病株における塊根の腐敗(なり首部、萌芽部)(写真提供:兵庫県病害虫防除所)
同病の病原菌は糸状菌で、発病株では、萌芽部の表層に微小な黒点粒状の柄子殻が形成され、降雨等により柄子殻内部から多量の胞子が漏出する。胞子は、激しい風雨やほ場の停滞水によって周辺の健全な周辺株に広がって感染する。また、本圃での生育が盛んな茎葉繁茂期は、株の異常が確認しにくいため、収穫期近くの茎葉の生育が衰える頃までに、発生が拡大して急激に枯れ上がったように見えることが多い。
同病は、主に感染した種芋や苗を植え付けることで苗床や本圃に持ち込まれ、伝染する。病変部には柄子殻または分生子殻とも呼ばれる微小な黒粒が多数形成され、水に濡れるなどすると、そこからおびただしい数の胞子が漏出し、周辺株に広がり蔓延を引き起こす。同病が発生した圃場では、植物残渣上で越冬し、それが翌年の伝染源となる。
実体顕微鏡下で観察された柄子殻(茎上、バーは0.5mm)(写真提供:兵庫県病害虫防除所)
同防除所では次のとおり防除対策を呼びかけている。
★対策の基本は、病原菌を「持ち込まない、増やさない、残さない」こと。
〇未発生地域では、汚染種苗を「持ち込まない」対策を行う。
①種芋は未発生圃場から採取する。種芋や苗を購入する場合は消毒の実施の有無を確認し、無消毒の場合には消毒する。また、苗床も消毒を行う。
②長靴や農機具(ロータリー等)などの機材は使用後の洗浄・消毒による防疫措置を行う。
〇発生地域では、病原菌を「増やさない」、「残さない」対策を。
①同病は、作物ではサツマイモのみで被害が知られている。発生が認められた圃場ではサツマイモの連作を避け、ヒルガオ科以外の作物との輪作等を行う。
②同病は、排水が不良な場所で感染が拡大しやすいため、圃場の排水対策を行う。
③発病株は抜き取り、圃場とその周辺に残さないように適切に処分する。発病株の除去後には、周辺株への感染を防止するため予防的な薬剤散布を行う。
④感染拡大を防ぐために、感染株だけでなく発生周辺株も含めて作物残渣を圃場から肥料袋に入れて持ち出し、焼却を行うか、石灰窒素を混入する等により分解促進を行う。
⑤育苗や収穫後の調整作業を行う施設の洗浄や消毒を併せて行う。
〇詳細な防除対策は、農研機構生研支援センターイノベーション創出強化研究推進事業(01020C)令和3年度版マニュアル「サツマイモ基腐病の発生生態と防除対策」を参照。
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