ソバゲノムの解読 高精度ゲノム解読がソバの過去と未来を紡ぐ 京都大学など研究グループ2023年8月17日
京都大学大学院 農学研究科の安井康夫助教らの国際共同研究グループ(理研・農研機構・千葉大学・京都府立大学・かずさDNA研究所・総合研究大学院大学・雲南農業大学・ケンブリッジ大学など)は、孤児作物の一つであるソバのゲノム配列を染色体レベルで高精度に解読することにより、ソバのゲノムの進化と栽培ソバの起原を解き明かした。
研究イメージイラスト:高精度ゲノム解読が紡ぐソバの過去と未来 (©星野ロビン)
2050年の世界人口は97億と予想され、イネ、コムギ、トウモロコシなどの三大穀物への食料の依存が問題視されている。これに対し、食料としての価値が高いにもかかわらず研究が遅れ、未開発のポテンシャルが秘められたままの「孤児作物」への関心が増している。次世代シーケンシング技術による孤児作物のゲノム解読は、その効率的な育種を促進し、飢餓の撲滅や栄養改善などのSDGs達成への重要なステップとなることが期待されている。
ソバ(学名: Fagopyrum esculentum ssp. esculentum)の子実は、エネルギー源となるデンプンの他、ビタミン、ミネラル、食物繊維を多く含んでおり、栄養価の高い食品として知られる。ソバは日本においては主に麺(蕎麦切り)として食され、アジアの多くの国々では麺やパンとして食されている。アジア以外でもフランスのガレットやイタリアのピッツォッケリなど、ヨーロッパにおいてもソバは伝統的に利用され、世界の温帯地域を中心に広く栽培されている。
世界で広く利用されているソバについて、同研究グループは日本の食文化を象徴するソバ研究の道筋を切り開こうと、2016年に世界に先駆けてソバのドラフトゲノム配列(概要ゲノム配列)を公開。しかし、ドラフトゲノム配列は断片的で、連続性に欠けているため、正確な遺伝子の予測が難しかった。また、各遺伝子がどの染色体にどの程度の距離で位置しているか、という重要な情報が欠けていた。
今回、研究グループは、この問題を解決するため染色体レベルでの高精度なソバのゲノム配列の解読に取り組んだ。ゲノム配列は生命の設計図であり、そこには生命の歴史が刻まれており、ゲノムを解読することにより、生命の「過去」の歴史を紐解くことができる。また、同時に設計図を用いて、生物や作物を改良し、人類の「未来」を拓くことができる。
研究グループは、ソバの高精度ゲノム配列を利用して、ソバのゲノムの進化と栽培ソバの起原の解明を目指した。さらに、高精度ゲノム配列から予測された遺伝子をゲノム編集技術に依存しない汎用性の高い手法で改変し、これまで世界になかったモチ性ソバの開発や新たな自殖性ソバの開発に挑んだ。この結果、孤児作物の一つであるソバのゲノム配列を染色体レベルで高精度に解読することで、ソバのゲノムの進化と栽培ソバの起原を解き明かした。さらに、予測された遺伝子をゲノム編集技術に依存しない手法で改変。その結果、これまで世界に存在しなかったモチ性ソバを開発することに成功した。
同研究で用いられた育種方法は、ゲノム編集技術に未対応な多種多様な孤児作物の改良に貢献することが期待される。
同成果は8月10日、英国の国際学術誌『Nature Plants』にオンライン掲載された。
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