れんこん腐敗病の課題解決へ JA大津松茂と圃場検証を実施 AGRI SMILE2024年3月28日
AGRI SMILEはJA大津松茂と、れんこんの腐敗病に関する課題解決に向けた圃場検証を実施。菌叢解析および培養試験のデータなどを掛け合わせたバイオインフォマティクス手法を用いた分析をもとに、バイオスティミュラント資材散布を行ったところ、腐敗病被害の減少とれんこんの品質が向上するなど一定の成果が得られた。
JA大津松茂は徳島県の阿讃山脈東端に位置し、吉野川下流域の水利に恵まれた肥沃な土地で農業が盛んな地域にある。主要特産物はなると金時、梨、れんこん、だいこんの4品目で、主要品目のひとつであるれんこんの徳島県の生産量は全国3番目を誇る。
写真1:生育中の腐敗病発生の様子。写真中の枠内のれんこんにおいて腐敗病が発生している
れんこんの生産量は近年、減少が続いており、原因の一つが腐敗病。JA大津松茂も長年、腐敗病による収量の低下を強いられている(写真1)。現在、腐敗病に有効な農薬はなく、その防除法が確立されていないため、JA大津松茂にとって、腐敗病に関する知見を深め、安定生産体系を構築することは喫緊の課題となっている。そこで2022年から、AGRI SMILEとJA大津松茂は共同で、同管内のれんこん生産圃場における菌叢解析や培養試験、データ分析を含む調査を実施してきた。
この取り組みにおいては病原菌等の培養・PCRによる検出、土壌菌叢解析調査と、腐敗病が発生した圃場、発生していない圃場の差・病原菌等の培養特性等の調査を実施。また、これらの調査結果を踏まえた、「AGRI SMILEのライブラリー」による腐敗病対策に適した土壌還元効果と根の伸長を助ける効果のある資材の選定と圃場における効果検証を行った。
土壌菌叢解析では、土壌サンプル中からDNAを抽出し次世代シーケンサーを用いてDNA情報を解読し、それがどの微生物由来のものかを推定した。読み取られたデータをもとに、それぞれの微生物の存在比率を示すことができ、大きな分類としての類似性や多様性を分析。土壌全体の特徴を把握するためのもので、栽培環境や栽培暦と照らし合わせ、適切な施策を検討するための情報として活用している。
図1:腐敗病非発生土壌の菌叢解析グラフ
図2:腐敗病発生土壌の菌叢解析グラフ
検出データの例としては図1と図2を参照。図1は腐敗病非発生土壌、図2は腐敗病発生土壌における菌の比率を円グラフで示しており、差が確認されている。これらの違いをより詳細に調査し、培養試験や、環境情報・栽培暦から施策を検討した。
写真2:レンコンの断面から腐敗病の発生がないことを確認するJA大津松茂の佐々木伸夫組合長(右)と
レンコン生産者
土壌菌叢解析の結果、腐敗病発生圃場とそれ以外の圃場の間で菌叢の構成に差異が生じていることが判明。そのため、JA大津松茂管内の腐敗病発生圃場において、バイオスティミュラント資材を散布したところ、検証対象農家からは、「2022年度に収量が半減していたものの、2023年度は腐敗病になったれんこんは減少。身が引きしまって重量感もあり、一つひとつの節も大きくきれいなれんこんだった」と報告があった(写真2)。
今回の圃場検証の成績を受け、今後も対象とする圃場試験区を増やすとともに、各圃場において継続して試験を実施していく。
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