養分欠乏下で高い生産性 陸稲品種 マダガスカルで「Mavitrika」開発 国際農研2024年4月19日
国際農研は、マダガスカル国立農村開発応用研究センター(FOFIFA)とアフリカ稲センター(AfricaRice)と共同で、新たな陸稲品種として養分欠乏下で高い生産性を示す「Mavitrika(マヴィチカ)」を開発。マダガスカル共和国で3月21日に品種登録され、同国のChristian NTSAY首相、農業畜産大臣、高等教育・科学技術大臣の列席のもと、新品種が公表された。
新品種種子贈呈の贈呈式で。NTSAY首相(中央)と農家代表
新品種「Mavitrika」は、マダガスカルの主食であるコメの生産性向上に貢献する成果として、農家や普及を担当する行政機関の関心が高く、新聞、テレビなど、数多くの現地メディアに取り上げられた。
開発した新品種は、「Mavitrika」は、マダガスカル語で「活力のある」という意味をもち、成長(成熟)が早く、生産性の低い環境でもよく育つ、という新品種の特性から、FOFIFAの研究者が提案。同品種は、低肥沃度環境で優れた生産性をもち、インドやバングラデシュで雨季前半に栽培されるアウス稲のDJ123とサブサハラアフリカの主要陸稲品種であるNERICA4の交雑後代から選抜、育成された。
2020年から2023年にかけて、マダガスカルの計31地点の栽培環境で生産力試験を実施した結果、同国の主力陸稲品種のNERICA4に比べて、平均で6日短い到穂日数(播種日から出穂日までの生育日数)であること、低収量環境ではNERICA4に比べて19%有意に高い収量性であることを実証した。
「早生性」と「収量性」は稲の品種選択において農家が重視する形質であることから、Mavitrikaがもつ生育特性は、特に低収量地域の需要に合致するといえる。
陸稲新品種「Mavitrika」の外観(左から穂、籾、玄米、精白米)
さらに、農家への食味試験と栄養成分分析を実施した結果、NERICA4と同等の嗜好性であることを確認。また、対象地域で栽培された場合の精白米中の亜鉛含量が29ppmと、NERICA4よりも23%高く、微量栄養素不足の改善にも寄与し得ることが確認された。これらの特性から、マダガスカル農業畜産省種子管理委員会が、マダガスカルの稲作農家へ普及できる可能性が十分に高いと判断し、今回の品種登録に至った。
今後、国際農研は、FOFIFAや農業畜産省と共同で、新品種の認証種子生産と農家への普及を進める。マダガスカルは、一人当たりのコメ消費量が日本の2倍以上で、国民の半数以上が稲作に従事する稲作大国だが、国民の主食・主業であるイネの生産性が今日まで停滞しており、亜鉛をはじめ、微量栄養素の不足も深刻。新品種が普及することで、マダガスカルの安定的なイネ生産と栄養改善や貧困削減に貢献することが期待される。
重要な記事
最新の記事
-
シンとんぼ(140)-改正食料・農業・農村基本法(26)-2025年5月3日
-
みどり戦略対策に向けたIPM防除の実践(57)【防除学習帖】第296回2025年5月3日
-
農薬の正しい使い方(30)【今さら聞けない営農情報】第296回2025年5月3日
-
【鈴木宣弘:食料・農業問題 本質と裏側】「盗人に追い銭」「鴨葱」外交の生贄にしてはならぬ農産物2025年5月2日
-
【2025国際協同組合年】情報を共有 協同の力で国際協力 連続シンポスタート2025年5月2日
-
イネカメムシが越冬 埼玉、群馬、栃木で確認 被害多発の恐れ2025年5月2日
-
九州和牛をシンガポール人に人気のお土産に 福岡空港で検疫代行サービスを開始 福岡ソノリク2025年5月2日
-
就労継続支援B型事業所を開設し農福連携に挑戦 有機農家とも業務提携 ハピネス2025年5月2日
-
宮崎ガス「カーボン・オフセット都市ガス」 を県庁などに供給開始 農林中金が媒介2025年5月2日
-
5月29日から「丸の内 日本ワインWeeks2025」開催 "日本ワイン"を学び、楽しむ3週間 三菱地所2025年5月2日
-
協同心の泉 大切に 創立記念式典 家の光協会2025年5月2日
-
【スマート農業の風】(14)スマート農業のハードルを下げる2025年5月2日
-
(433)「エルダースピーク」実体験【三石誠司・グローバルとローカル:世界は今】2025年5月2日
-
約1cm程度の害虫を強力捕獲「吊るしてGET虫ミニ強力タイプ」新発売 平城商事2025年5月2日
-
農中情報システム 自社の導入・活用のノウハウを活かし「Box」通じたDX支援開始2025年5月2日
-
洗車を楽しく「CRUZARD」洗車仕様ホースリールとノズルを発売 コメリ2025年5月2日
-
戦後80年の国際協同組合年 世代超え「戦争と平和」考える パルシステム神奈川2025年5月2日
-
生協の「地域見守り協定」締結数 全市区町村数の75%超の1308市区町村に到達2025年5月2日
-
ムコ多糖症ニホンザルの臨床徴候改善に成功 組換えカイコと糖鎖改変技術による新型酵素2025年5月2日
-
エフピコ×Aコープ「エコトレー」など積極使用で「ストアtoストア」協働を拡大2025年5月2日