美しい立ち姿で収穫性アップ・コマツナの新品種発表 サカタのタネ2019年11月26日
サカタのタネは11月21日、千葉県袖ケ浦市の君津育種場でメディアに向けて野菜品種見学会を開き、同日リリースされたコマツナの新品種「さくらぎ」を発表した。
カブ、ホウレンソウ、大根、ハクサイ、レタス、ブロッコリー、トマト、キャベツなどの試験ほ場が広がる君津育種場
君津育種場は野菜の品種改良を目的に1971年に設立。約10haのほ場でさまざまな野菜の品種育成や国内外の研究情報の集約とフィードバック、生産者への情報発信などを行っている。新たに開発された品種「さくらぎ」は、極立性で収穫・調整作業性に優れる中早生の品種で2020年6月下旬に発売される。
野菜全体の作付面積が年々減少するなか、コマツナの作付面積は2016年から2018年の3年間で約30%増加し、出荷量も増加傾向にある。その要因はビタミン、ミネラル、カルシウムなど栄養が豊富なうえ、漬物や炒め物からスムージーまで料理の用途が広く消費者からの需要が高いこと。また、栽培する上でも夏場なら約1か月と栽培期間が短く、大規模化や法人化で雇用型農業を営む生産者が閑散期に輪作として組み込みやすいこともある。さらに、栽培のしやすさと栽培期間の短さから経営的に安定し、大規模化しやすいなどのメリットがある。
そんな中で課題となるのは栽培経費のうち57%を占める出荷経費とコマツナ栽培の全労働時間のうち85%を占める出荷調整に要する時間の削減だ。
コマツナの試験ほ場
同社君津育種場育種第2課の西川和裕課長は「出荷調整にかかる時間を減らし人件費を削減できれば、その時間によりよいものを作るための畑作りや除草作業をしたり、趣味に使うこともできる」と話し、慢性的な人手不足にも対応できる品種となるよう「さくらぎ」の開発を進めたという。
◆作業性が良く貯蔵性・棚もちも
「さくらぎ」を見てまず感じるのはその見た目の美しさ。従来の品種と比べてもシュッとした立ち姿で極立性に優れている。実際に手を入れて株を引き抜くと、ふつうは周りの葉と絡み、折れた葉は出荷後の傷みや調整作業の手間になるが、「さくらぎ」は隣の葉と絡まずきれいに引き抜ける。西川さんは「収穫の作業時間は、手でいじればいじるほど長くなり、傷みにもつながるので作業性のよさはその後の貯蔵性や棚もちのよさにつながる重要なポイント」と説明する。
◆根にも特徴が
根の部分にも特長がある。同社はこれまでもコマツナの品種開発にあたり収穫する地上部はもちろん、特に根っこに注目し収穫作業性を上げるための育種を進めてきた。その成果が「さくらぎ」の根っこ部分に表れており、根の長さは長いが横の細根が少ないため、抜いた時に付いてくる土が少ない。これは調整作業が楽になるだけでなく、「良い土をできるだけ畑に残したい」という篤農家の要望にも応えている。
極立性に優れ収穫作業性のよい従来品種「はまつづき」(左)も並べてみると新品種「さくらぎ」との違いは一目瞭然
栽培面では、主根が長く深いため、乾燥によるカッピングやチップバーンが発生しにくく、春・秋に発生しやすい白さび病や、夏に発生しやすい萎黄病に耐病性がある。また、寒さ、暑さへの適応範囲が広く、気候が読みにくい季節の変わり目でも栽培できる。
各地で行われた試作では生産者から従来の10~15%のスピードアップを図れたという声が届いたという。
◆充実したコマツナのラインアップ
「さくらぎ」が加わったことで同社のコマツナのラインアップはさらに充実。従来品種で同社コマツナのエース級品種「いなむら」は春から秋の高温期にかけてカバーし、美しい草姿に評価が高い。ほかにもより高温期に強い「つなしま」、厳寒期に強い「はまつづき」と代表的なコマツナに「さくらぎ」が加わったことでより各地の作型を幅広くカバーできるようになった。
西川さんは「育種で一番大事なのは農家の収入につながる収量性と、手元に残る利益に直結する作業性と作物の品質。コマツナのリーディングカンパニーとして、市場がさらに広がるようお客さんに何度も喜んで買ってもらえる育種を続けていきたい」と話した。
各メーカーが育種開発でし烈に争う"コマツナ戦国時代"の中、売上目標は3年後に1億円。同社は「さくらぎ」をコマツナのスター品種にするべく展開していく。
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