イネの栽培システムにおけるカーボンフットプリント削減へ IRRIと提携 BASF2024年3月1日
ドイツのBASFとフィリピンのInternational Rice Research Institute(国際稲研究所・IRRI)は、イネの栽培システムにより排出される温室効果ガス(GHG)を削減するための科学的提携を締結した。
BASFは、「OPTIMA Rice(Optimizing Management for Reduction of GHG in Rice)」と名付けられたIRRIとの取り組みにより、2030年までに作物生産量1トン当たりのCO2e(二酸化炭素換算値)排出量を30%削減するというBASFの目標達成をめざす。共同での取り組みは、フィリピンの複数の稲作シーズンにわたって計画され、両組織のイネ研究拠点があるラグナ州で実施を予定している。
イネは、アジアで最も多く生産されているが、その地理的な広がりと典型的な水稲耕作の手法のため、農業場面における温室効果ガス総排出量の約10%を世界の水稲生産が占め、主に水稲が継続的に湛水することが原因と考えられている。カーボンフットプリントが大きい稲作だが、イネの栽培システムは、農作物生産の中でGHG排出量を削減できる可能性が最も高いと推定されている。
これを受けて、BASFとIRRIは、イネ栽培システムにおける気候変動に配慮した農業に関連する、複数のトピックについて調査を予定。これには、直播イネの品種、窒素固定剤、施肥・残渣管理、それぞれのイネ生産者にテーラーメイドした新しい防除ソリューション、交互湿潤乾燥管理(AWD)のような水削減技術などが含まれる。さらにIRRIは、温室効果ガス排出量を推定するための新しい計算アルゴリズムを含む、生態生理学モデルORYZA(オリザ)を本プロジェクトに適用するため、さらなる改良に着手。BASFは自社のAgBalance(アグバランス)ツールを使ってGHG排出強度を推定。IRRIと協力して自社製品のフィールドテストを行い、質の高い農業データとGHGデータを取得する。
両社はともに、フィリピンをはじめとするアジアのイネ生産地域における、イネの気候変動緩和と適応策に関する科学的理解を深めるモデルをさらに開発し、適用することを目指す。最終的には、イネ生産者の生産システムにおける脱炭素化を支援することを目標にしている。
BASFアグロソリューション事業本部のグローバルマーケティング担当シニアバイスプレジデントのマルコ・グロズダノビッチ氏は「イネという主要作物には大幅な炭素削減の可能性があるため、IRRIのイネ生産システムに関する専門知識活用を通じて連携していく」とコメント。また、IRRIのリサーチディレクターで持続可能なインパクト部門を率いるBas Bouman氏は「今回の提携は、メタンやその他の温室効果ガス削減のための大きなチャンスをもたらし、農業者の価値を創造し、アジア、とりわけフィリピンにおけるイネの生産性向上に貢献することでしょう」と話している。
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