体験農園 JAの取り組み加速化へ-JA全中2017年10月16日
JA全中は、都市住民を巻き込んだ都市農業の振興や組合員の所得向上などに向けJA体験型農園を普及しようと関係者による研究会を設置し、普及のための課題を議論してきた。9月で一定の議論を集約し11月にその成果物を発行して理解を広めるとともに、JAの取り組みを支援するための体制について新たに検討していく。JA体験農園の意義とこれまでの議論などをまとめた。
体験型農園とは園主の指導のもとで新鮮で安心な「農産物の栽培と収穫」を行い、それを家族、地域、職場で分かち合って「食べる」という体験をおもに提供する取り組みである。
農園側が農具や肥料などの必要資材を準備し栽培を指導するため、都市住民が手軽に参加できる。JA全中の研究会(体験型農園の普及・改善に関する研究会)の議論では体験型農園は「体験」という価値を提供する「サービス業」とも捉えることができるととしている。食を中心としたイベント、地域づくりなどと連動していけば農産物を生産する農業よりも収益を安定的に確保できる可能性も持っている。
(写真)都市住民を農協の応援団に。作付を待つ体験農園。
農家にとっては農業所得の向上や安定、農作業の労力軽減、地域住民の理解と交流などのメリットがあるほか、JAにとっては准組合員を中心とした地域住民への「農協」としてのサービス提供、都市部JAへの認知とブランドイメージ向上、担い手のいない都市農地の持続的な保全や有効活用などのメリットがある。
研究会では先行して体験農園に取り組んでいるJAの視察などを通じて地域によって異なる体験型農園の類型化を行い、そのうえで課題と解決法を整理した。
こうしたなか園主となる農家主体の取り組みを進めるために、長年の取り組みノウハウを蓄積している全国農業体験農園協会との連携を進める方向で、今後、連携協定を締結する予定としている。すでに農園開設をめざし同協会の研修会などに首都圏JAの農家組合員とJA職員が参加する取り組みなどが行われている。
一方、JAが主体となって開設・運営する体験型農園については、ノウハウ不足から推進が難しく新たなにコンサル体制をつくるなど、支援体制が必要だとされた。
今後、普及を進めていくには関係団体がさまざまなかたちで体験型農園に関わる必要性も整理された。たとえば、東京農大と連携し農園の持つストレス軽減効果などを立証するための調査を実施している。5、6月の調査では8割以上のストレスが軽減されたとの結果が出ており、さらに詳細な調査を実施しているという。
食と農に関心の高い生協との連携も進めていくことにしており日本生協連と協議を実施することにしている。また、JA段階ではJAぎふがコープぎふとの連携で生協組合員が農園の利用者になっている事例もある。
また、今回の研究会の議論では、利用者の拡大策として企業の福利厚生事業に取り込むことがきわめて有望だと提起された。働き方改革や健康経営の観点から企業の福利厚生と連携することで体験農園市場の拡大も期待できる。
(写真)JAのOB職員が指導
研究会が11月に取りまとめる議論の成果物にも体験型農園の「ビジネスとしての高い発展性」を指摘する。時間に余裕のない若い世代や農業に触れたことがない都市住民でも、手ぶらで農園に行くことができる手軽さがあるにも関わらず、園主が指導して本格的な農業ができるという貸し農園との「質」の違いなどを認知されれば多くの利用者が期待できる。
さらに、企業の人手不足が深刻化するなか、福利厚生や人材育成の手段として農的な体験にも関心が高まっている。こうしたことをふまえると、JAによる体験農園は「さまざまな分野と異業種との連携」を視野に、地域に貢献する事業として考える必要があるのではないか。
(関連記事)
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・【現地レポート・JAぎふ】都市農業が「農」あるくらしを身近な社会へ(17.03.31)
・【インタビュー・JA全中 小林 寛史 農政部長(都市農業対策室長 )】体験型農園を新しいライフスタイルに(17.03.31)
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