新しい米政策は米価下落と窮迫販売を招く2013年11月27日
政府は、昨日、新しい米政策を発表した。減反制度の廃止である。
これまでは、減反に協力する農家にたいして補助金を出していたが、これからは出さないという。政府は減反の目標だけは示すが、目標の達成のために協力したからといって、補助金は出さないという。4年間の移行期間はあるが、5年後からは、そうする。
その代わりに、飼料米などへの転作補助は充実させる。減反目標にしたがって主食米を作るか、それとも補助金をもらって転作をするかは、各経営が判断せよ、というのである。
この政策で、政府が示した減反目標を達成できれば、それは神業というしかない。
つまり、政府は主食である米の需給と価格の安定を神だのみにして、その責任を放棄したのである。歴史的な暴挙といっていい。そんな国は、世界中のどこにもない。
飼料米などへの転作補助金の充実は、食糧安保という点で評価していい。食糧自給率の向上に直接貢献するからである。不測の事態になれば、主食として食べられる。
だからといって、主食米の需給と価格を不安定にするのなら、評価できない。本末転倒である。根元を腐らせておいて、枝葉が茂るわけがない。
◇
減反するか、しないか、を経営の判断に任せるという。
そのためには、減反に協力して転作するほうが経営にとって有利か、それとも、協力しないで主食米をつくるほうが経営にとって有利か、迷うほどに同じ程度の有利さになっていなければならない。それほどまでに、転作の補助金を充実できるか、政府の本気度が試される。
同じ程度の有利さにできたとして、そうなると、こんどは、誰もが減反するか、誰もが減反しないか、一方に偏りやすくなる。まことに不安定な状況になる。
◇
この不安定な状態は、市場が調整する、というのだろう。だが、そうはならない。
価格が安くなれば、供給量が減って、次は価格が高くなる、といいたいのだろうが、そうはならない。
農産物のばあい、価格が安くなると、供給量を減らすのではなく、反対に供給量を増やす。収入額が減るので、収入額を維持するためである。そのため、価格はさらに下がる。教科書でいう、窮迫販売である。
◇
だから米価は、いったん下がると、際限なく下がる。市場に一切を任せる新しい米政策には、その対策がない。米価は下がりつづけ、供給量は増えつづける。補助金が足りなくなる。そうして破綻する。
こうした事態を避けるには、政府が主食米の供給量を誘導するしかない。政府が、責任を持って減反を続けねばならない。その上で、転作の補助金の充実をはかり、国民への食糧の安定供給の責任をはたすことである。
(前々回 米政策見直し案の財源問題)
(「正義派の農政論」に対するご意見・ご感想をお寄せください。コチラのお問い合わせフォームより、お願いいたします。)
重要な記事
最新の記事
-
【第46回農協人文化賞】地域包括医療を推進 厚生事業部門部門・長野県厚生連佐久総合病院名誉院長 夏川周介氏2025年7月15日
-
【特殊報】ナシにフタモンマダラメイガ 県内で初めて確認 島根県2025年7月15日
-
【注意報】水稲に斑点米カメムシ類 島根県内全域で多発のおそれ2025年7月15日
-
【注意報】野菜類、花き類、ダイズにオオタバコガ 滋賀県内全域で多発のおそれ2025年7月15日
-
【注意報】水稲に斑点米カメムシ類 栃木県全域で多発のおそれ2025年7月15日
-
米価 7週連続で低下 5kg3602円2025年7月15日
-
農業法人 米販売先 農協系統がメインは23% 日本農業法人協会2025年7月15日
-
2025年産米 前年比56万t増の見込み 意向調査概要2025年7月15日
-
テキサス洪水被害は対岸の火事か 公務員削減が安全・安心を脅かす 農林水産行政にも影響2025年7月15日
-
コメ増産政策に転換で加工用米制度も見直しが急務【熊野孝文・米マーケット情報】2025年7月15日
-
青森米パックご飯ご愛顧感謝キャンペーン 抽選で200人にQUOカード JA全農あおもり2025年7月15日
-
農機担当者向け「コンプライアンス研修会」を初開催 JA全農やまなし2025年7月15日
-
農機フェア2025を開催 2日間で5309人が来場 富山県JAグループ2025年7月15日
-
GREEN×EXPO2027 特別仕様ナンバープレート交付記念セレモニー開く 横浜市2025年7月15日
-
「幻の卵屋さん」アリオ北砂で5年ぶり出店 日本たまごかけごはん研究所2025年7月15日
-
子ども向け農業体験プログラム「KUBOTA AGRI FRONTの夏休み2025」開催 クボタ2025年7月15日
-
香春町と包括連携協定締結 東洋ライス2025年7月15日
-
官民連携 南相馬市みらい農業学校生へ農業経営相談機能等を提供 AgriweB2025年7月15日
-
鳥インフル 米ワシントン州などからの生きた家きん、家きん肉等 輸入停止措置を解除 農水省2025年7月15日
-
鳥インフル ブラジルからの生きた家きん、家きん肉等 輸入を一時停止 農水省2025年7月15日