TPP交渉の中断2014年5月26日
日米のTPP交渉は、あれだけ意気込んで、会合を重ねたが、ついに合意に到らなかった。来月を越えて、7月までは閣僚会合を予定できなくなった。夏以降になっても、交渉は停滞するだろう、というのが林芳正農水相の見通しだ、と新聞が伝えている。11月には、アメリカで中間選挙があるからだろう。
日本にとって、TPPによるアジア進出は、アベノミクスの最も重要な柱だという。また、アメリカにとって、TPPはアジア重視の政策の中で、最も主要な経済政策だという。
だから、日米の両政府ともTPPを諦めたわけではない。
TPP交渉が先延ばしされたことは、反TPP運動の成果といっていい。だが、勝った、と評価すべきではない。交渉はまだまだ続く。
そもそも、こうした政治過程は、勝った、負けた、と単純に評価できない。反TPPの考えが、より多くの国民の賛同をえたか、より深い理解をえたか、という点で評価すべきである。そうして、政治に反映できたか。
今後、TPP推進派を諦めさせることが出来るかもしれないし、出来ないにしても骨抜きにすることはできる。政治は、このようにして動くのである。
◇
TPP交渉が中断したからといって、推進派が諦めたわけではない。今後も長い間、攻防がつづくだろう。
さっそく、反TPP運動の旗頭を担っている農協への集中攻撃が始まった。それが、規制改革会議の、いわれなき農協攻撃である。ここに農協の力を分散させて、反TPP運動の力を弱めようとしている。
◇
農協が標的になっているが、それがTPP推進派の作戦である。
しかし、TPPは農産物の関税問題だけではない。ISD問題や食品の安全問題など、国家主権や国のかたちを変えるほどの大きな問題である。だが、政府は関税問題だけを突出させて、これらの問題を隠している。マスコミも取り上げない。
政府は、TPP交渉で、いま問題になっているのは、関税問題と特許権問題と国営企業問題だけだ、といっている。これらが解決すれば、交渉は妥結する、といっている。ISD問題などは妥結した、とでもいうのだろうか。では、どのように妥結したのか。政府は発表しないし、マスコミの報道もない。
こうして、農協を反TPP運動のなかで孤立させようとしている。
◇
TPP交渉が中断したからといって、安心して目を離すわけにはいかない。急展開して、一挙に妥結するかもしれない。日本だけでなく、アメリカの政界も「一寸先は闇」なのだろう。
規制改革会議に反撃しながら、その一方で、TPP交渉を注意深く監視し、反対運動をねばり強く続けねばならない。
(前回 規制改革会議の農協つぶし)
(前々回 日豪EPAの国会批准)
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