TPP効果による酪農崩壊の危機2014年6月30日
酪農がいま崩壊の危機にある。
酪農王国の北海道では、若い後継者が酪農から離脱しようとしている。そのことを、北農中央会の調査によるものとして、道新が伝えている(24日)。
この調査によれば、2012年度に牛乳の出荷をやめた205戸のうち、約100戸が20~49才の働き盛りのいる農家だったという。
中央会の片田英隆調査役は、TPPなどの先行き不安によるもの、と分析している。
片田調査役によれば、これまでは、離農したばあい、近くに残った農家が引き受けて規模拡大してきた。だが、いまは、残った農家も投資意欲を失って、地域の生産量を維持できなくなった。
理由はアベノミクスの円安による飼料高だけではない。TPPなどによる将来の乳価安と牛肉安の不安が、重くのしかかっているという。
これはTPP効果といっていい。TPP交渉が妥結したわけではないのに、交渉を行っているだけで酪農家の将来への希望を奪っている。それほどに、TPPの酪農にたいする破壊力は強い。
北海道酪農は、このTPP効果によって、崩壊へ向かう新しい局面に入った。
◇
北海道だけではない。府県の酪農も生産量を維持できなくなった。
下の図は、全国の生乳生産量を、1990年度から昨年の2013年度まで示したものである。
1996年度は866万トンで最大の生産量だった。だが、それ以後減り続け、2013年度は745万トンで14%も減ってしまった。
昨年の夏以後は、以前よりも激しい減少率で減り始めた。それが、2014年度に入っても続いている。
最近では、年率で3%程度の減少率である。1世代を20~30年とすれば、次の世代には生乳生産量が半分に減ってしまう、という勢いである。
◇
酪農崩壊が新しい局面に入ったというのは、減少率が以前よりも大きくなった、というだけではない。働き盛りの農業者が離農しだした、という新しい深刻な局面に入った、ということである。
彼らは、将来、TPPなどで安い酪農製品や牛肉が自由に輸入され、酪農が立ちゆかなくなる、と考えたのだろう。
彼らは、20年先き、30年先きの将来を見据えて酪農をやめ、新しい職業を選んだ。高齢になってからではおそいし、思うような転職ができない、と考えたのだろう。
新規就農者対策などでは、この局面は転換できない。転換するには、TPPなど市場原理主義農政を止めるしかない。諸悪の根源はここにある。これは根こそぎ絶たねばならぬ。
◇
酪農だけではない。全ての畜産だけでもない。TPPなどで輸入自由化をすすめれば、米作など、ほとんど全ての農業が、後継者を失うという同じ道を通って、崩壊へ向かうだろう。
そうした代償を払ってまで、自動車などの輸出を僅かに増やすことが国益なのか。それが、いま問われているのだ。
◇
今日から、TPP交渉の日米実務者協議が始まる。
そこに注目が集まらないように、財界が農協改革という口実で、農協攻撃を仕掛けている。反TPP運動の主力である農協に的をしぼって攻撃を集中している。
農協はいま、内向きになって自己改革に全力を注ぐときではないだろう。それでは、財界の思うつぼにはまる。
そうではなくて、反TPP運動を中心にすえ、運動を強化しながら、その中で農協攻撃に対峙しなければならないだろう。
(前回 財界の狙いは農政運動の弱体化だ)
(前々回 全中への嵐は去ったが―まだ安心できぬ)
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