【コラム・ここがカンジん】中央会の新制度への移行 具体例で役割説明を2014年7月10日
今回の規制改革会議の議論は、農協批判というよりは、それを超えて協同組合そのものを否定することに大きな特徴を持つ(協同組合に対する、株式会社の運営の比較優位性を強調)。とくに中央会制度の議論については、その存在自体を根底から覆すもので、中央会関係者にとってまさに驚天動地の内容となった。多くの人は行政側がまさかこの制度を不要と考えることはないだろうと考えていただけに大きな衝撃を与えることになった。
中央会制度(前身は全指連)は昭和29(1954)年に農協法に盛り込まれて発足した。目的は、「組合の健全な発達を図る」という極めてシンプルなものだ。その背景には、再建整備法ができるなど農協の経営不振への対応があった。
中央会は、農水省の別働隊として経営指導に当たらせるという意図のもとにつくられた感のある組織であり、都道府県中央会や組合の全国中央会への当然加入や会員への賦課金徴収権の明記、監査の実施など強い権限を持つ。設立に当たり、農水省は全中の初代会長として荷見安(1891~1964年)を送り込んだ。彼は、歴代農林次官のなかでも抜きんでた実力者で「米の神様」と言われた人物である。こうした経過をみても、中央会にかける当時の農水省の強い意気込みが伺える。
その後、中央会は食糧管理制度のもとでの米価闘争や、その後の減反政策、農協合併、監査・教育事業の取り組みなどを通じて大きな役割を果たしてきた。今回の中央会制度の見直しは、制度発足から半世紀がたち、中央会の役割も変化してきており、とくにJAへの全国一律の
経営指導はもはや必要がなくなってきたとの判断があるとされる。
こうした表向きの理由のほか、中央会の農政活動(政治活動)の排除などその理由はさまざまに考えられるが、新制度への移行とは、つまるところ行政にとって中央会はこれまでに比べ必要性が薄い存在になってきているということだろう。
対応策の確立のためには、なぜこのような事態になったのか正確な分析が求められるが、それはともかくこれから新制度への移行の議論が始まる。
これまでの中央会事業を一般社団法人や自主的な指導連などで行うのは全くの自由(ただし、独禁法の適用除外措置は必要)ということになるが、引き続き中央会を農協法のなかに位置づけ国の関与を行うとすれば、国や農水省にとってはよほどの理由がなければそれは難しいということになる。
中央会事業が国民への食料供給として、国にとっても重要な役割があり、また監査事業などについても、協同組合監査としての存在が必要なことを、具体例を持って説明しなければならない。
いずれにしても、中央会が引き続き農協法の後ろ盾を得て農政・監査・教育などの機能をどの程度維持できるのか、予定される次期通常国会での法改正に向けて重大な局面が続く。
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