地方創生という傲慢2015年6月8日
地方創生とか地方創成という言葉は傲慢だ。農協の自己改革元年なども傲慢だ。一強政治の驕りが、そういう言葉になるのだろう。
これは「現実的なるものは合理的」が分かっていない。現実の不合理が何に起因するか、を考えずに現実を無視し、全否定して白紙の上に設計図を書く。これは知性の怠慢でもある。
東畑精一先生の名言に「時計を止めないで時計をなおすのが農業政策の難しさだ」がある。ここには、人間をみる暖かい眼差しがある。この名言が、まるで分かっていない。食うか食われるか、の野獣の目しかない。
地方創生、地方創成などというが、地方は大昔から存在していて、多くの人たちが、そこで生きてきたし、生きている。創成と創生との違いも分からない。珍奇な言葉を使った、こけおどし、でしかない。
農協の自己改革元年もそうだ。自己改革は説教されるまでもなく不断に行っている。そうした農協の努力をみずに全否定し、現実にある農協をつぶし、新しい農協を作る、というのだ。
地方の人たちが培ってきた歴史や文化、そこに生きてきた農業者たちが築き上げた農協を全て否定し、農業を破壊し、農業者を追い払って、新しい設計図を作り、新しい地方を創り、農業を創り、農協を創るというのだろう。それは、人間の否定である。そんな農協は名ばかりで、協同組合ではない。
◇
これは、地方で現実に生きる農業者を邪魔者扱いし、排除して、いったん無人の更地にし、その上に新しい農業・農協を設計するという権力者の奢った考えである。
これは、戦前の植民主義者の傲慢な考えでもある。植民地で生きてきた人たちを放逐し、本国の「余剰」で邪魔な人たちをそこに植えつけ、勝手に生きてゆけ、という考えである。
こうした考えは、現場で生きている人たちを人間とみていない。地方で生きている農業者を人間としてみていない。そうした傲慢な考えである。
◇
創成や創生や元年などというと、閉塞した現状を打破する明るい希望に満ちた考えのように聞こえるが、そうではない。不連続な改革などというと、新鮮に聞こえるが、そうではない。ただ現状をぶち壊すだけだ。将来への展望はない。
こうした内容の空疎な言葉の遊びは聞き飽きた。うんざりしている。それだけではない。地方で懸命に生きている人たち、農業に丹精をこめている人たちを愚弄するものだ。
◇
そういうと、守旧派というレッテルをはって、悪しざまに罵る。そうして、正義の改革者のように振舞う。
だが、そんなことを他人様に言われる筋合いはない。友情ある善意の忠告ならともかく、オレの思い通りにしなければ農協をつぶす、などという脅しは全くの筋違いだ。
いまの政治は安保法制の問題に隠れていて、農政が注目されていない。しかし、農協つぶしの農協法案の審議は陰で進んでいる。見逃すわけにはいかない。
(前回 協同組合間の競争)
(前々回 民主と維新の合同勉強会に期待)
(「正義派の農政論」に対するご意見・ご感想をお寄せください。コチラのお問い合わせフォームより、お願いいたします。)
重要な記事
最新の記事
-
【特殊報】果樹などにチュウゴクアミガサハゴロモ 県内で初めて確認 兵庫県2025年12月16日 -
【特殊報】トマト青かび病 県内で初めて確認 栃木県2025年12月16日 -
【プレミアムトーク・人生一路】佐久総合病院名誉院長 夏川周介氏(中)農村医療と経営は両輪(1)2025年12月16日 -
【プレミアムトーク・人生一路】佐久総合病院名誉院長 夏川周介氏(中)農村医療と経営は両輪(2)2025年12月16日 -
全中 新会長推薦者に神農佳人氏2025年12月16日 -
ひこばえと外国産米は主食用供給量に加えられるのか?【熊野孝文・米マーケット情報】2025年12月16日 -
米トレサ法で初の勧告措置 「博多天ぷら たかお」が米産地を不適正表示2025年12月16日 -
鳥インフルエンザ 兵庫県で国内7例目を確認2025年12月16日 -
「第3回高校生とつながる!つなげる! ジーニアス農業遺産ふーどコンテスト」受賞アイデア決定 農水省2025年12月16日 -
「NHK歳末たすけあい」へ150万円を寄付 JA全農2025年12月16日 -
米の流通に関する有識者懇話会 第3回「 研究者・情報発信者に聴く」開催 JA全農2025年12月16日 -
【浅野純次・読書の楽しみ】第116回2025年12月16日 -
北海道農業の魅力を伝える特別授業「ホクレン・ハイスクール・キャラバン」開催2025年12月16日 -
全自動野菜移植機「PVZ100」を新発売 スイートコーンとキャベツに対応 井関農機2025年12月16日 -
Eco-LAB公式サイトに新コンテンツ開設 第一弾は「バイオスティミュラントの歴史と各国の動き」 AGRI SMILE2025年12月16日 -
国内草刈り市場向けに新製品 欧州向けはモデルチェンジ 井関農機2025年12月16日 -
農機の生産性向上で新製品や実証実験 「ザルビオ」マップと連携 井関農機とJA全農2025年12月16日 -
農家経営支援システムについて学ぶ JA熊本中央会2025年12月16日 -
7才の交通安全プロジェクト 全国の小学校に横断旗を寄贈 こくみん共済coop2025年12月16日 -
北海道上川町と未来共創パートナーシップ協定を締結 東洋ライス2025年12月16日


































