中国は包囲網で圧迫されている(続き)2015年9月14日
この欄で書いた「中国が嫌いになったEさんへ」について、いくつかの意見をいただきました。
前号で指摘したのは、中国は米国などの中国包囲網に圧迫されていることです。米国は、隙があれば中国を米国風の資本主義国にしようと考えています。
中国国民の大多数は、それは受け入れられない、と考えています。社会主義を堅持したい、と考えています。そして、そのためには、国民が一致団結することが何よりも重要と考えています。ここに、中国社会の歪みや問題の根本原因があります。
たしかに、中国社会の歪みを嫌う日本人は少なくないと思います。しかし、その歪みをもたらす根本原因の中国包囲網を見据えた上で評価すべきでしょう。
その中国包囲網をみてみましょう。いま日本の国会で審議中の安保法制案は、中国を仮想敵国にして、その脅威を唱えています。中国はそれほど脅威なのでしょうか。
中国は軍事費を急速に増やしているといいますが、米国の3分の1でしかありません。その上、中国は人口大国で、人口は米国の4倍です。だから、人口1人当たり軍事費をみると、中国は米国の12分の1にすぎません。
これは、中国包囲網を作るための、偽りの中国脅威論です。
日本の農業を崩壊させるTPPも、中国包囲網の一部です。
こうした中国包囲網のなかで、中国社会は歪められ、多くの問題をかかえ、苦吟しています。
◇
はじめに、中国における自由の問題をみましょう。言論や表現の自由は、民主主義にとって最も重要なことです。中国では、ときどき、この自由が制限されます。ここには、中国包囲網が直接かかわっています。
言論は自由でなければなりません。現在の政府を批判するのは自由です。現在の社会主義体制を批判するのも自由です。しかし、それが社会主義体制を転覆し、資本主義体制に代えようとする行動に移るばあい、その行動を自由にしておくわけにはいかないでしょう。中国包囲網がその行動に加担するからです。そして、なによりも国民の大多数が資本主義体制に反対だからです。
◇
チベットやウイグルの問題も、中国包囲網の中での問題です。
中国は、世界のなかで、まだまだ非力な国です。だが、多くの民族が大同団結しているから、中国包囲網のなかで存在しつづけられるのです。
中国には、56の民族がいますが、分裂したら各個撃破されて、それぞれが資本主義化を強制されるでしょう。
中国包囲網が解ければ、民族問題も解決するでしょう。各民族の自治権も拡大できるでしょう。
それぞれが独立して、中国社会主義共和国連邦になるかもしれません。そのためにも、中国包囲網は断固として、拒否しています。
◇
つぎは、経済格差の問題です。格差が資本主義に由来することを否定する人は、いないでしょう。生産手段の私有制が格差を生む根源です。だから、私有制をやめて社会有制にするのが社会主義です。
中国は、社会主義国だから、格差はないはずです。平等なはずでが、実際には大きな較差があります。しかし、この状態が良いと考える人は、中国にはほとんどいません。ここが米国などの資本主義国とは違うことです。
米国などでは、格差は経済発展の起動力だ、と多くの人が考えています。これでは、格差はいつまで経っても解消しないでしょう。格差は資本主義に必然的、構造的な問題です。
ここが、社会主義国と資本主義国との大きな違いです。
中国は社会主義国だから、格差を解消する制度的な保証があります。格差を解消しようとする圧倒的な社会的支持があります。政府は、格差の解消を最重要な政治課題に掲げています。実際に、内陸の農村部へ重点投資しています。
だから、やがて格差は解消されるでしょう。
農村戸籍と都市戸籍を画然と分ける戸籍問題などの解決は、遅々としていて、格差解消は捗りません。しかし、着実に進んでいます。
◇
つぎは汚職問題です。中国の高級幹部の汚職は、目に余ります。
これは、対中包囲網に対する国家統一のための権力の集中にともなうものという側面があります。だからといって、見過ごすわけにはいきません。そのように大多数の国民は考えています。
習近平主席は、主席就任の直後の2013年正月に、腐敗の撲滅を政策の第一に掲げ、今後10年間で撲滅すると宣言しました。
腐敗はごく一部の高級幹部の問題で、一般官僚は、主席の宣言を支持しています。腐敗を放置することは、むしろ国論統一の障害になるでしょう。
腐敗を容認する世論は、もちろん無いし、政治もない。やがて撲滅される日がくるにちがいありません。
◇
最後に、尖閣問題に触れておきましょう。この問題は、1972年には竹入義勝と周恩来との間で、また、田中角栄と周恩来との間で、1978年には鄧小平が記者会見で、この問題の棚上げを合意し、発表しました。
その後、2012年に日本政府は、ここを唐突に国有化しました。しかし、中国は認めていません。そして、日中間の紛争の種になり、1972年以前の状態に戻ってしまいました。いまは、中国包囲網を強化する口実にしています。
はやく、先人の叡智に学んで、日中友好の道へ戻るべきでしょう。
◇
もう1つは、靖国問題です。これは、戦争責任の問題です。中国は靖国神社に対中侵略戦争の数人の最高責任者が祭られていること、その神社に政治の責任者が参拝することを非難しています。数人の戦争責任者を分祀すれば済むことです。それを、かたくなに拒否していることを非難しています。
日中間の、このような棘をなくせば、相互理解はもっと深まるでしょう。
(前回 中国は包囲網で圧迫されている)
(前々回 中国が嫌いになったEさんへ(続き))
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