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TPPは消費者にとってソンだ2015年11月30日

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【森島 賢】

 TPPが、もしも発効すれば、消費者はソンをするか、トクをするか、という議論がマスコミをにぎわしている。そうして、TPPで豚肉などの関税が下がり、安い豚肉が買えるようになるから、消費者はトクだ、という結論に誘導している。
 だから、消費者はTPPの国会批准に賛成せよ、といいたいようだ。そして、来年7月の参議院選挙で、与党に投票せよ、といいたいようだ。

 だが、いったい消費者とは誰のことか。それは、分析の都合で勝手に作り上げた、架空の虚像である。消費をしているだけの人間はいない。それは、全人間活動を行っている生きた人間ではない。
 ほとんど全ての人間は、消費者であるとともに生産者である。生産に貢献して得た所得を使って消費をしている。それは、家計の単位で行われているから、幼児のように親の所得に依存して消費をしている者もいる。しかし、消費が所得に依存していることに変わりはない。
 どんな政策でも、特にTPPのように人間活動の全般にわたって重要な影響をおよぼす政策は、全人格を備えた人間が、全人間活動のなかで、慎重に評価するものである。全人間のごく一部の側面の性質を切り取った、消費者という一側面だけからみてソンかトクか、で評価するものではない。ことに、目先の利害だけで評価するものではない。まして、豚肉が安くなるかどうか、だけで評価するものでは全くない。
 だから、問題の立て方が間違っている。

 消費者という一側面からみても、マスコミの議論は間違っている。それは、豚肉に限定した議論だからである。豚肉だけを消費している人はいない。簡単な例で説明しよう。
 豚肉と薬を考える。豚肉が安くなって、薬価が大幅に高くなった場合である。薬価が高くなった場合でなく、医療費が高くなった場合と考えてもいい、TPPで、そうなることは、充分に予想できる。
 この場合、薬価が高くなっても、健康を維持するために、いままで通りの薬を買って飲む。薬の代金が大幅に不足するから、豚肉を買う量を減らし、我慢して豚肉代金を節約し、薬代金の不足分に当てる。このように、TPPの結果として、消費生活の全体を考えると苦しくなる。消費者は、TPPでソンをする。
 TPPで消費者がトクをする、と主張するなら、このことを否定しなければならない。だが、そのことに無頓着な議論が横行している。政策論は結果の全てに責任を持っている。だから、想定外などという無責任な言い訳けは許されない。

 その上、間違っているのは、この議論が、所得は減らない、という架空の大前提に立っている、という点である。
 アメリカでさえ、TPPで雇用が奪われるとして強い反対がある。それは、雇用者所得の減少に直結する。それは、日本も同様である。所得は減らないのではなく、減ることを予想しなければならない。TPPで所得が減ることは、充分に予想できる。
 所得が減れば、消費水準が低くなるのは必然である。豚肉が安くなっても、消費水準は低下する。このことにも無頓着なのがマスコミの議論である。

 さて、消費者という人間の一側面からではなく、全人間活動からみたTPPの全面的な評価に戻ろう。
 はじめに指摘したいのは、TPPは日本の国としての姿を変えるほどの、大きな影響があることである。だから、目先きの評価でなく、十数年後どころか、数十年後、百年後に日本の姿が、どのように変わるか、を考えて評価せねばならない。
 農業と食糧をみると、TPPは食糧自給率を確実に下げる。農業を壊滅させる。そして、食糧安保を危殆に陥れる。環境の悪化も予想される。このことを、どのように評価するか。ここに問題の焦点がある。
 この点からみるとき、豚肉が安くなることは、それほど重大な問題ではない。

 つぎに指摘したいのは、先進国の労働力が安くなることである。これは、TPPで消費者はトクになる、という議論で仮定した、所得が下がらない、という大前提が大きな音を立てて崩れることを意味している。
 つまり、TPPは賃金の世界的な平準化をもたらす。それが原因になって、先進国の賃金が下落する。途上国の低賃金をテコにして、先進国の賃金を引き下げる。そのことが、TPPの主要な狙いである。それは、先進国内での賃金格差を拡大し、格差社会の、さらなる深刻化をもたらす。日本もそのようになる。
 農業、農村をみると、TPPで農業が壊滅し、農業者は脱農させられるが、その行きつく先は、格差社会しかない。これを、どのように評価するか。

 最後に指摘したいのは、TPPによって世界経済をブロック化する、という点である。それは、世界の政治的、さらに軍事的なブロック化をもたらす危険なものである。
 アメリカは世界のルールを太平洋地域に広めるという。さらに、太平洋地域に限らず、世界に広めたいのだろう。そして、世界に世界ルールという名前のアメリカルールを押し付けたいようだ。
 ことに、中国を標的にし、中国を仲間はずれにして、世界のなかで孤立させたいと考えている。中国を社会主義から離脱させ、資本主義国にしたいのだろう。だから、アメリカはTPPで、社会主義に固有な国家企業を圧迫することに、強くこだわっている。国際ルールという名目で、アメリカ資本主義のルールを押し付け、中国社会主義のルールを抹消したいのだろう。
 さらに、アメリカは、軍事力による世界の制覇を目指している。貿易自由化とか、経済連携とかいう名目で、国境を無視し、軍事力を見せつけながら、国家主権を奪おうとしている。まさに侵略である。
 以上のような、長期的および世界的な視野で、TPPを評価すべきだろう。この点からみて、豚肉が安くなるとか、消費者にとってソンかトクか、という議論は、一面的で些末な議論というしかない。しかも、間違いだらけで偏っている。それでは、日本の進路を誤るだろう。
 日本の進路を正すには、TPPの国会批准を拒否するしかない。
(2015.11.30)

(前回 幻想のTPP農業対策

(前々回 「攻める農業」の危うい攻撃性

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