協同組合の心を求めて2016年5月13日
日本共済協会は、この4月に『協同組合の心を求めて』と題する書物を発行しました。本書は、当協会が設立された平成4年から発行してきた月刊誌『共済と保険』の「巻頭言」288篇から142篇を選び、一冊にまとめたものです。
◆巻頭言142篇を収録
バブル経済の崩壊からリーマンショックを経てアベノミクスにいたる「混迷の平成時代」の時々に、さまざまな分野の定評ある学者・研究者、さらには第一線の実務家が、協同組合や共済事業のあり方を論考したものを収録しています。昨今の諸課題に照らして「新たな展開への橋わたし」となることを選定の基準としました。
監修した関英昭先生(青山学院大学名誉教授)は、執筆者に共通しているものは協同組合に対する愛情や期待であり、それをどのように表現したらよいかと考えて、本書のタイトルを『協同組合の心を求めて』とされました。ICA(国際協同組合同盟)の協同組合原則にもある「他人を思いやる心」が大切と言われました。
「協同組合の心」の核心を示す論考(要旨)を本書から二つ紹介します。
◇
◎阪神・淡路大震災の際に損害査定員を案内していた地元職員が、契約内容を確認しながら地域を一軒一軒、くまなく訪問していたとき、崩れた一軒を飛ばして次の建物に向かった。「契約がないのですか」と尋ねられると、「いいんです。私の建物ですから...親も妻も家の下敷きになり亡くなりました...葬式は落ち着いてから考えます...」、「今は契約をいただいた組合員が被害を受けて困っています。一日も早く共済金を支払いたいんです」と応えた。
地域を襲う災害はそこで生活する職員も被災者にしてしまう。災害が発生すると被災地の各地で協同組合職員のこのような活動が聞かれる。
◎資本は人を捨て、地域を捨て、国を捨てる。これに対して協同組合は、決して人を捨てず、地域を捨てない。人々の生活圏である地域社会こそ協同組合の活動の場であるからだ。活動基盤である地域を発展させることによってこそ協同組合も発展しうる。
地域活性のために活動するとなれば、協同組合間協同をいやでも進めざるをえない。そして、協同を進めるためには、協同の前提として組織の自立を進めざるをえない。
◇ ◇
◆資本の暴走を防ぐ
関先生は会社法や協同組合法が専門で、昨年8月の参院農水委員会で農協法改正について参考人として意見を開陳しました。本書の序文などでも、資本主義や会社制度が悪いと決めつけることはできないが、法律では資本の暴走を食い止める手段や装置はないといいます。
株式会社は意思決定の根拠を資本におき、株主への配当という最終目的のために暴走しがちになるが、協同組合は理念や原則を持ち「人」に基礎をおき、危険性に走ったときはチェックできる仕組みを持っている。協同組合原則を担保する最後の砦は「人」だと指摘されました。
さらに、協同組合が株式会社の方向に引きずられていくとの危惧をもち、それでもそのなかに協同組合の理念や原則を持ち込んでいくというしたたかさも必要だとの指摘もされています。
当協会には、労働者・消費者・大学生の生協、漁業者・農業者の協同組合、中小企業者の協同組合など、さまざまな母体を持つ共済団体が加盟しています。組合員7600万人、契約件数1億5000万件という広がりを大切にして、それぞれの団体が「混迷の平成時代」に正しい役割を果たせるよう、当協会も力を尽くしたいと思います。
新自由主義・株式会社至上主義が跋扈(ばっこ)し、協同組合の使命と責任が問われるなか、本書が協同組合・共済事業に携る広範な団体・部門・年代の皆さんの考え方や活動に示唆をもたらす「学習書」になるよう目指しました。
多くの方々に手に取っていただきたいと思います。なお、希望の方には1冊1000円(税・送料別)で提供いたします。日本共済協会(03-5368-5755)にお問い合わせください。
(関連記事)
・「協同組合の心を求めて」 日本共済協会が刊行 (16.05.10)
・地域社会に不可欠な共通財産 (15.06.12)
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