反TPPのつぎは反規制改革推進会議だ2016年11月21日
TPPは、農業者など多くの国民の強硬な反対と、それに呼応するかのような、米国など海外の反対運動によって、あえなく空中分解した。
世界の経済的弱者が、反市場原理主義、反グローバリズム、反自由貿易、反経済的格差の潮流を作り出した。英国のEU離脱、フィリピンや米国での新大統領の誕生、韓国農業者の怒りのデモ、ヨーロッパ各国での反グローバリズム政党の躍進などは、この流れを加速している。
日本もこの勢いに乗ろう。農協攻撃を繰り返している規制改革推進会議を、潰してしまおう。
政府は、世界の潮流に逆らって、TPPにこだわり、未練がましく、あがいている。参議院で承認しようとしているし、米国の現大統領の頭越しに、トランプ次期大統領を説得しようとしている。見苦しい姿である。
TPPはアベノミクスの主柱だった。TPPをあきらめることは、アベノミクスをあきらめることになる。だから、それ程あっさりと断念したのでは体面が保てない、というのだろう。農業者などの経済的な弱者を痛めつけようとする者の哀れな末路である。
その一方で、TPPに代わる新しい主柱を急いでつくらねばならぬ、と考えているようだ。それが、政府の規制改革会議であり、その専門部会の農業ワーキング・グループである。さっそく、なりふりかまわぬ農協批判を始めた。
それに対して、農業者はもちろん総反撃している。国会の農林族も反撃し出した。TPPで失った信頼を回復したいのだろう。農林族が、今後、生き延びる最後の機会かもしれない。
◇
同会議は、TPP交渉と並行して行われた日米合同会議で、日米両政府からお墨付きをもらっている。だから、強い権力を握っている。
彼らは、TPPの別働隊だったが、本隊のTPPが空中分解したので、これからは、TPPに取って代わって、本隊に格上げされたようだ。日米両国の巨大資本の、日本での主席代理人になり上がったのである。そして、新しい農協攻撃を始めた。
攻撃の内容は、全農の販売・購買事業への干渉、信連と単協の信用事業の放棄の要求などである。いずれも、協同組合としての農協に対する不当な干渉であり、狙っているのは、農協の徹底的な破壊である。そうして、巨大資本の意向にしたがい、農業者に対する搾取を強化しよう、というのである。
こんなことを容認できるわけがない。
◇
同会議は、農業者の所得増大を錦の御旗に掲げている。たしかに、農業者の所得は増やさねばならない。しかし、彼らのいう所得増大は、彼らが基本理念とする市場原理主義に基づいたものである。つまり、「今ダケ、カネダケ、自分ダケ」という3ダケ主義に基づく所得増大である。
「今ダケ」とは、ここ数年だけ所得が増えればいいというものである。その後の子や孫の世代には、どうなってもいい、という。
「カネダケ」とは、カネで勘定した所得さえ増えればいい、というものである。農村が荒廃しようが、農地が荒地になろうが、人の心が荒もうが、カネさえ増えればいい、という。
「自分ダケ」とは、自分の所得さえ増えればいいというものである。他人の所得は減ってもいいし、そのために、他人を蹴落としてもいい、という。
◇
このような基本理念は、協同組合の精神とは、全く逆のものである。
それだけではない。普通の感覚を持って、経済という文化をになっている日本人なら、あからさまにカネカネとは言わないものである。言う場合には、恥ずかしそうに言うものだ。彼らは、こうした恥の文化を破壊しようとしている。拝金主義の亡者といわれても、しかたがない。
そんな彼らの、日本の農政についての意見は、聞きたくない。腹立たしいだけだ。
◇
彼らは、大資本と政府の操り人形だから、彼らを攻撃してもしかたがない、という人がいるかもしれない。
その通りである。しかし、農業者を直接攻撃しているのは彼らである。当面する火の粉は振り払わねばならない。
もしも、操り人形といわれるのが不満だ、というのなら、もっと、きちんとした提言をすべきである。自分に都合のいい、きわめて特殊な事例を一面的に取り上げて提言の根拠にするのではなく、農村社会の全ての側面に、しかも将来にわたって及ぼす影響を見据えた、責任のある提言をすべきである。
こんどの提言は、それができず、権力をカサにきて、提言を押し付けようとし、全国の農村から猛反発されている。
同会議は、こうした提言を、これまでも繰り返してきて、そのつど、恥知らずに提言を引っ込めてきた。だから、こんどは、提言を引っ込めるだけではだめだ。議長や座長はもちろん、委員全員が、大資本に操られた人形ではない、というのなら、まともな人間らしく恥を知り、責任をとって、いさぎよく総辞職すべきである。
(2016.11.21)
(前回 TPPは空中分解)
(前々回 経済的弱者がトランプ大統領を生んだ)
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