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安倍首相・トランプ氏共に目指すは"TPPプラス"2016年12月8日

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【近藤康男「TPPに反対する人々の運動」世話人】

 報道されるトランプ氏の発言、徐々に発表される政権スタッフ候補の顔ぶれを見ると、少しずつ、トランプ政権の性格・目指すものが見えて来る。2週間前のこのコラムで触れたトランプ氏の“TPP離脱宣言”以降、国会でのTPP審議においても幾度となく質疑に取り上げられている。“何故批准を急ぐ必要があるのか?”と。
 TPPの今後について断定するには未だ早いものの、明日(12月9日)のTPP承認案の自然成立を前に、少し頭の整理をしてみたい。

◆自由貿易対保護貿易という枠組みを忘れよう

 トランプ氏は2国間FTAを主張しつつ、その中で、互恵ではなく自国第一主義を貫こうとしているようだ。保護主義とも自由貿易主義とも言い難い。私たちがTPPその他のEPAを批判する時の一つの表現は"共生"であり、自由貿易とも保護貿易とも違う、市民・地域からの視点とそれに基づく国家主権の尊重であり、加えて国民経済・産業を育成しつつある途上国の主権の尊重だ。私たちは自由貿易か保護貿易かという選択肢から自由になるべきだろう。

◆トランプ氏の通商政策をどうみるか?

 彼の勝利は、白人低所得者層の支持を民主党支持の労働組合などから奪ったことにも負っている。しかし彼は大金持ちの家に生まれ、豪邸で育った企業経営者だ。そして今"米国のCEO"に就任することとなった。選挙中は(大統領を目指す立場で)"自分第一"を掲げて暴言・妄言も吐きつつ、既成政治を批判することで選挙に勝利した。当選によって"自分第一と米国第一が統合"され、それに基づいて政権スタッフの配置を始めている。そこに見えるのは、国家を企業と見立て、有利な取引を求める強欲な企業経営者の姿だ。12月2日に発表された「戦略・政策フォ-ラム」15名にはIT関連は見られず、車を含む製造業、金融・投資、インフラ、知財、コンサル関連の企業名が並んでいる。
 同時に、外交を始め、上下両院で多数派となった共和党との良好な関係抜きに自身の政策を実行出来ないのも現実だ。
 トランプ氏の通商政策の多くは、考えてみると共和党と共通する点が多い。為替操作への批判、金融規制・環境規制への反対、大幅な法人・所得減税、企業利益の最大化等々。異なるのは、排外主義的、差別主義的な超保守オルトライトのバノン首席戦略官・上級顧問など自分に近しい側近を配置したり、"ポリティカル・コレクトネス"≒政治的正しさ(建前)を無視する点くらいだろう。共和党が拘っているTPP反対の理由である、生物製剤新薬デ-タ保護の12年への延長、越境金融サービスのデ-タ保管の自由な配置を求めていることや為替操作、原産地規則の厳格化などは、トランプ氏が持ち出してもおかしくないものばかりだ。

◆突きつけられる"TPPプラス"

 今後トランプ氏は、TPPの協定に書かれていない"TPPプラス"を2国間FTAや、もしかしたらTPPの再交渉でも突きつけてくることは想像に難くない。
 12月1日にハッチ上院財政委員長も「仮に日米の2国間協議から始めるにしても、現実を知ればトランプ氏はTPPに戻ってくると確信」と発言している。韓米FTAでも見られた、批准後も相手国に対して議会の意を体して要求を求める、議会の"承認手続き"による再交渉も充分あり得る。
 安倍首相も国内政治では、TPPの先を行く国家戦略特区(医療・農地・外国人労働者受け入れ等)、労基法改正をなどの政策を推進し、日欧EPA、FTAAPアジア太平洋自由貿易圏構想の先に新たな世界標準を想定している。またアジアにおいては両国の政府はともに日米同盟を重視していることも確かだ。
 違うのは、安倍首相が政治において"美学"らしきものを考えている節が窺えるのに対して、トランプ氏はあくまで利益第一の強欲さを体現している点だろうか。「批准をすることで再交渉に断固反対の姿勢とTPP復活の可能性を示す」などは空威張りでしかなく、トランプ氏は歯牙にも掛けないだろう。現時点での批准は、次に待つ交渉のためのカ-ドを自ら捨てるようなものだ。

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