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【童門冬二・小説 決断の時―歴史に学ぶ―】一夜城ができるまで 蜂須賀小六2018年7月29日

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【童門冬二(歴史作家)】

◆蜂須賀小六は地域名族

 蜂須賀小六といえば「太閤記」に出てくる盗賊の親分だ。豊臣秀吉が少年の頃家を出て、駿河(静岡県)の太守今川義元に仕えるつもりで東海道を辿った時に遭遇する。少年秀吉の才知を見込んで子分にする。やがて小六から離れた秀吉は織田信長に仕えて、トントン拍子に出世する。昔の恩を忘れない秀吉は小六を信長の家臣に推薦するーというのが巷説で伝えられる小六像だった。が、すべて嘘だ。水戸黄門が旅など一度もしなかった(したくても立場上できなかった)のと同じように、すべてデッチあげられた話である。
 秀吉はたしかに今川の家来になるべく浜松まで行ったが、ここで松下嘉兵衛(今川家の部将)に見込まれ、その家来にはなったが松下の人物の小ささに見切りをつけ、生まれ故郷の尾張(愛知県)に戻ってしまう。
 そして小六は伝えられるような矢作(はぎ)川流域の盗賊などでは決してない。だからこの地域には住んでおらず縁もゆかりもない。
 小六は愛知県西北部の木曽川流域に根を生やした歴とした地方豪族だ。江南市の一角に拠点をおく実力者だった。木曽川を上下する〝川並衆〟を支配していた。川並衆は川を〝水の道〟として、船をトラックの代わりに使う現在の運輸業者だ。りっぱな屋敷跡や小六が献納したといわれる八幡様の社殿等が、史跡として遺されている。なぜあんな話になったのかわからない。ただ川並衆は運輸船の水先案内や護衛等をおこなうから、報酬に不満があれば時に海(川?)賊的行為に出ることがあったのだろう。それに場所を変えて〝盗賊の親分〟になってしまったのかも知れない。
 いずれにしても実際の小六は木曽川流域の物流業者の親分だった。もうひとつは、この地域には対岸の美濃(岐阜県)ほどではないが、〝輪中〟が造られることが多かった。輪中というのは小部落を土堤でかこんで。川の洪水から守る防護的集落のことだ。小六たちはその造成技術にも長けていた。

 

◆小六の出した条件

  決断の時_蜂須賀小六(挿絵)大和坂 和可 ある日、小六をひとりの青年武士が訪ねてきた。
「織田信長の家臣木下藤吉郎と申します」
 と名乗った。愛想がいい。威張らない。武士によっては小六たちの職業を侮る者もいる・つまり賤業とみるのだ。が、木下はちがった。
 『お願いがあります』と下手に出た。小六は好感を持った。小六はかねてから木下の主人織田信長には悪感情を持っている。清洲城を拠点にする信長はバラバラでまとまらない同族を、いま懸命に統一している。その範囲は尾張全体に及び小六の勢力圏にも入り込んでいる。
(ところが信長の奴は俺の所へ何のあいさつにもこない。きっと馬鹿にしているからだ)
 これが小六の信長に対する反感の理由だ。小六たちのような仕事をする人間は、
 「世間は自分たちをどうみているか」
 を気にする。とりわけ蔑む者・卑しむ者には敏感だ。小六は信長に関する情報を仕入れて、「あいつはおれたちをバカにしている」と結論した。だからその家来だという木下は本当なら門前払いしたかった。ところが木下はそうさせない何かがある。発散する愛嬌になぜかひきこまれる。そこで思わず、
「頼みとは何だ?」と応じてしまった。
 木下は語りはじめた。
・信長様の妻は隣国の太守斉藤道三の娘だ。その縁で道三は自分の子義竜でなく信長に国を譲る気でいる。
・そのことを知った義竜は突然道三を殺し、国を奪ってしまった。
・信長は舅の仇を討ち国を取戻すために義竜攻めを企てた。義竜は長良川畔の稲葉山城(岐阜城)にいる。
・城は長良川を堀にしているので攻め難い。
・信長様は攻略地点として長良川の木曽川と合流する墨俣(すのまた)に急遽城を造りたいと仰せられた。
 ここで木下は言葉を切り、じっと小六の顔を見つめた。小六は木下を見返した。そして訊いた。
「それでわしに頼みたいとは?」
「その城をお造り願いたい。できれば早急に」
「なぜわしにそんな仕事を?」
「蜂須賀様は川並衆でもあられる。あんな大湿地帯に城を造るのは、輪中造りの技術以外方法はござらぬ。われわれには到底手に負えなぬ」
「で、報酬は?」
「費用一切と礼金。そしてもし蜂須賀殿にそのご希望があれば、織田家の家臣としてお迎えする」
「なるほど」
 小六は考えた。木下は嘘をつく男ではない。正直だ。自分にできないことははっきりできないと告げている。その点は小六は大いに気に入った。が、小六は頭の中に閃くものを感じた。この際信長の鼻を折ってやろうと考えた。そこでこういった。
「条件がある。城が完成したあとのわしの扱いだ」「どんな?」
「わしは信長が嫌いだ。あんな男の家来などならぬ。ただし」そういって木下の顔をみた。
「おぬしの家来になら喜んでなる。ただしわしひとりではない。率いる川並衆全員だ」
 いまでいえば、地域企業を社員ぐるみ正式社員にしろということだ。それも海のものとも山のものともつかない木下に、身柄を全部ゆだねるというのだ。小六の一大決心だ。しかし、木下は承知した。これも思いきった決断だ。木下は腹の中で、
(当面は織田家の家臣として給与を支出すればいい)と思った。
 交渉は成立し小六は城を造った。"一夜城"をいわれる。信長は美濃を制した。しかし稲葉山城を落としたのは木下と小六勢である。

(挿絵)大和坂 和可

 

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童門冬二(歴史作家)のコラム【小説 決断の時―歴史に学ぶ―】

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