「関東東海花の展覧会」は品評会の箱根駅伝【花づくりの現場から 宇田明】第78回2026年2月5日
毎年1月末、東京・池袋で「関東東海花の展覧会」が開催されます。
戦後間もない1951年に始まり、今年で第74回を迎えました。
花に対する理解を深め、花の消費を拡大することを目的とした、日本最大規模の花の展覧会です。
毎回、皇族のご来場があり、今回は秋篠宮ご夫妻と佳子様がご視察されました。
会場には、関東・東海12都県の生産者が育てた花が集まり、品評会、フラワーデザインコンテスト、装飾展示、園芸教室、産地紹介など、多彩な催しが展開されました。

品評会には、切り花、枝もの、葉もの、鉢ものなど約1,500点が出品され、品質が競われました。
この品評会は、関東地域の大学駅伝でありながら、全国的な人気と注目度を誇る「箱根駅伝」の花産業版といえるでしょう。
それだけに、関東東海地域の生産者にとって、この品評会で金賞を受賞することは大きな誇りです。
同時に、受賞花材は「高品質とは何か」を、地域内外の生産者に示す役割も果たしています。
ただし、受賞が直接的な実利につながるかというと、話は別です。
和牛やホルスタインの共進会のように、受賞が価格に直結するわけではありません。
花産業では、受賞したから市場評価が高まるのではなく、日頃から市場で高い評価を得ている生産者が、品評会でも評価されているのが実態です。
花の品評会は、日々の市場評価を「見える化」した場だといえます。
品評会には、大きく二つのタイプがあります。
ひとつは消費拡大を目的に、消費地で開催される品評会。
もうひとつは、市場出荷の品質向上を目的に、産地で開催される品評会です。
池袋サンシャインシティで開かれる「関東東海花の展覧会」は、明らかに前者です。
会期3日間で2万人前後が来場する花の大イベント(入場は無料)で、多くの消費者に花の美しさや多様性を伝えている点では、大きな成果を上げています。
しかし、本来の目的である「花の消費拡大」が十分に達成されているとはいえません。
なぜなら、会場にあるのは、花筒に入った品評会の花、フラワーデザインコンテストの花、そして豪華な装飾展示の花だけだからです。
品評会の花は素材であり、花屋が「料理」して初めて商品になります。
また、フラワーデザインコンテストの花は芸術作品であって、日常消費される花ではありません。
会場には、消費者が「買いたい」商品としての花が存在しないのです。
最終日には品評会出品の花の即売が行われ、常連客が楽しみにしているそうです。
しかし、入賞・非入賞を問わず、それらは品評会用の花であり、店頭商品の花ではありません。
展覧会に欠けているのは、デザイナーとしてではなく、商人としての花屋がつくった「商品としての花束」です。
とはいえ、主催は12都県庁と業界団体。
さらに皇族方がご視察される展覧会でもあります。
にぎやかさや即物的な販売促進には、一定の制約があるのも事実でしょう。
であれば、来場者数を増やすこと自体を、消費拡大への間接的な成果と割り切るしかありません。
「品評会の箱根駅伝」は、次の一歩として、走り終えた先にある「ゴール後の消費」を、本気で考える時期に来ています。
当コラム第56回で紹介したように、花産業に残された時間は20年しかないのですから。
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