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【小松泰信・地方の眼力】小農宣言と水産改革法案2018年11月28日

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【小松泰信(岡山大学大学院 環境生命科学研究科教授)】

 辞書によれば、外遊とは「外国に旅行すること。また、外国に留学すること」と記されている。しかし一般的には、政治家が公的な用件で外国に行くこと、と理解されている。「地球儀を俯瞰する外交」を得意とする安倍晋三首相が11月29日から12月4日の予定でアルゼンチンなど3カ国に外遊とのこと。28日からの麻生太郎副総理、世耕弘成経済産業相の外遊ともども、主要野党は「国会軽視だ」と反対している(日本農業新聞、11月28日付)。
 軽視と言うよりも、「国会逃亡」「国会無視」。国民への外遊土産は大盤振る舞いのツケ。内憂外患ならぬ外遊内憂である。

◆大阪の万博ですからね

小松泰信(岡山大学大学院 環境生命科学研究科教授) 11月27日首相官邸を訪れた松井一郎大阪府知事は、安倍首相の病が伝染したことをカミングアウトした(毎日新聞、11月28日付)。「世界80億人が参加できる体制を作りたい、と世界各国で(の誘致活動で)風呂敷を広げすぎるぐらい広げてきたので、日本の総力を挙げていただかなければ実現不可能だ」と述べ、風呂敷を「たたむ」には各界の協力が不可欠だと強調したそうだ。
 できもしない大風呂敷を勝手に広げて票をかき集め、その後始末を堂々と要求する。あまりのド厚かましさに言葉を失う。風呂敷を「たたむ」前に、「できもしない大法螺で世界各国を騙しました」と頭を下げて返上するか、それがいやなら「自己責任」でっせ。
 ところが、茶坊主然とした野上浩太郎官房副長官は「オールジャパン全力の誘致活動が実った。ここからが本番だ。関係省庁は連携しベストを尽くしてほしい」と指示したそうだ。勝手にオールジャパンを乱発するな。一人の国民として迷惑千万。「大阪の万博」であることをお忘れなく。

 

◆小農宣言の価値

 11月22日付の日本農業新聞は、日本時間20日未明、国連総会第3委員会が「小農と農村で働く人びとの権利に関する国連宣言(小農の権利宣言)」(以下、小農宣言と略)を、賛成119、反対7、棄権49、で採択したことを一面で報じている。小農宣言は、「農家だけではなく、漁業や林業など農村で暮らすあらゆる人を対象にした。食料生産や地域における小農の価値や役割を明記し、『食の主権』確保や生物多様性への貢献を評価。その上で、女性差別の撤廃、種子の安定的な提供への措置や、農作業安全、教育などの権利を加盟国が確保することを明記した。協同組合を支援するための適切な措置」も求めている。
 残念な国ニッポンは、棄権。外務省人権人道課は、「農村の人々の権利は既存の仕組みの活用によって保護される。固有の権利の存在があるかについては、国際社会での議論が未成熟」と、その理由を説明する。
 同紙の論説は、「行き過ぎたグローバル経済が、途上国の資源を収奪し、環境を破壊し、人権をないがしろにしながら格差拡大を招いたことへの批判と反省がベースになっている」「グローバリズムの対抗思潮としての家族農業の再評価と復権を後押しするもの」と高く評価し、「家族農業が主体の日本農業こそ、その重要性を積極的に評価すべき」とする。「反対よりたちが悪く、怒りを覚える」と言う、萬田正治鹿児島大学名誉教授のコメントを紹介し、小農宣言と真逆の道を突き進む新自由主義的な「官邸農政」に決別し、農業・農村政策の在り方の見直しを政府に求めている。
 わが国が採択を棄権した理由について中国新聞の社説(11月27日付)は、「小農宣言に賛成すれば、安倍晋三首相が進めてきた政策とのずれが生じるからだろう」と明快である。「農業の大規模化や単作化、企業参入にばかり目を向ける国々へのアンチテーゼといえる。名指しこそされていないが、矛先は日本にも向けられていよう」と、わが国にとっての小農宣言の価値を指摘する。そして、「工業とてんびんに掛けた過度な農産物の市場開放や『強い農業』というふるい分けは、弱者の切り捨てに他ならない」とし、「来月の正式決議までの再考」を強く求めている。
 日本農業新聞(11月28日付)によれば、吉川貴盛農相は27日の参院農林水産委員会で、小農宣言の採択に関し、「家族農業経営の健全な発展が重要」との認識を示したものの、具体的な支援には触れなかったそうだ。真逆ゆえに、リップサービスが関の山。政官ともに、宣言を無視、黙殺する可能性大。

 

◆「空回し」を呼ぶ水産改革法案

 日本農業新聞(11月23日付)は、水産改革法案を審議している衆院農林水産委員会が22日、野党各党が欠席し、割り当ての審議時間だけを経過させる異例の「空回し」となったことを伝えている。「農水で空回しなんて記憶にない」と、ベテラン農林議員が驚いているとのこと。同法案は地元漁協を優先してきた漁業権付与の順位を廃止し、企業参入を促すなど、農協改革で学習した手口で水産業の改革を目指していることから、現場には懸念が強い。にもかかわらず、ここでも法案審議を急ぐ与党の姿勢に野党が反発してのこと。決して、「空回り」ではない。
 異例の「空回し」に刺激されたか、同法案推進派の日本経済新聞(11月28日付)は、安倍首相が「70年ぶりの抜本的改正」と意気込むこの法改正案が終盤国会の火種となることをにおわせている。そして、出入国管理法改正案と「同じくらい深刻な法案」と位置づけ、「沿岸漁業を経済合理性で自由にして本当に良いのか」とする立憲民主党の枝野幸男代表のコメントや、「現場の意見を全く聞いていない」とする、国民民主党の玉木雄一郎代表の批判を紹介している。

 

◆河北新報の切れ味に溜飲を下げる

 河北新報の社説(11月23日付)は、「『磯は地付き、沖は入り会い』というルールが、浜には今も息づいている。それだけに政府による70年ぶりの漁業法改定の動きは、いかにも乱暴にすぎた」としたうえで、「政権が進める規制緩和の一環であり、安倍首相が唱える『企業が一番活躍しやすい国』づくりの水産業版だ」と、看破する。
 そして、この議論を主導した規制改革推進会議などで、「漁船の大型化を阻害する規制の撤廃」「生産性が著しく低い漁業者には改善を勧告し、許可の取消し」といった提案もあったことから、「前のめりの言説が物語るのは、沿岸漁民の切り捨てにほかならない」とする。ことの重大さにもかかわらず、「小規模漁業者が淘汰され、大規模漁業だけが展開される未来の漁場が、海の生態系や浜の経済に及ぼす影響を有識者らが深く検討した形跡は一切ない」と、杜撰さを暴く。
 「利潤追求を目的とする大手企業に浜の未来を委ねていいのだろうか。......経済成長のみにとらわれ、漁業の多様性や海域の未来を見通す視点が欠けていると言わざるを得ない。......漁業者の中から公選されてきた各都道府県の海区漁業調整委員を知事の任命制に改める方針......にも漁民たちは『浜の自治』を取り上げるのかと一斉に反発している」として、「政府がなすべきは漁民を排除するのではなく、膝詰めで日本漁業の未来を話し合うことだろう」と提言する。地方紙の面目躍如に溜飲を下げる。
 「地方の眼力」なめんなよ

 

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