【森島 賢・正義派の農政論】全てを参院選に投入せよ2019年2月18日
国会では、統計不正問題などをめぐる議論が続いている。野党は激しい議論を挑んでいるが、政府は、のらりくらりとした答弁で逃げ回っている。ここには、緊張感がない。なぜか。
それは、議論が政治の主権者である国民の琴線に触れていないからではないか。だから、政府は激しい追及を受けているのに、国民の支持率は、それほど下がらない。野党の追及が国民の要求に基づいていないからではないか。だから、国会に緊張感がない。
こうした国会を、つまり政治を、いつまでも続けていいのか。それが、半年後の参院選で、厳しく問われることになる。
政府と与党に対する支持率が、それほど下がらないことをみて、野党は悲観しているようだ。半年後の参院選を、政権交代の第一歩にしたいとか、次の次の選挙で政権交代を果たす、などと呑気なことをいっている。そのような、野党の幹部がいる。
それは、安倍晋三政権による格差の拡大と、それに起因する弱者の苦悩を、もう少し我慢せよ、といっているに等しい。これでは、野党への支持は広がらない。そうではなくて、野党は、半年後の参院選で政権交代を実現することを、国民に強く訴えねばならない。
それは無理だ、という生半可な似非理論家がいる。政権交代の権能は衆議院にあって、参議院にはない、というわけである。しかし、彼らは現実の政治のダイナミックスが見えない、現実離れの輩である。こうした輩に、政治的発言をしてほしくない。
◇
憲法改正問題が、その好例である。これは、安倍首相の根底にある政治信念である。しかし、いまだに実現できていない。
安倍氏は12年前に、野党から政権を奪取して、まず実現したかったことは、憲法改正だったろう。しかし、現在も実現していない。国会に発議できないどころか、改憲案を国会に示すことさえできていない。
似非理論家には、この説明ができない。いまは、改憲派が衆参両院で3分の2を超えられる。だから、改憲の発議は可能である。そうすれば、改憲へ向かって一歩を進めたことになる。だが、現実の政治では不可能である。
つまり、安倍首相には改憲できない。なぜか。
◇
それは、主権者である国民の大多数が、改憲に反対だからである。だから、国会で発議することさえできない。
現実の政治は、現実の議会制民主主義は、こうしたものである。発議できる法的な条件があるのに、政治的には発議できる条件がない。
このことを、似非理論家や多くの国会議員は分かっていない。政治を頭の中だけで考えて、国民と向き合っていないからである。だから、国民の大多数を占める弱者たちの苦悩が分からない。弱者たちが、どんな苦悩の中にいて、政治に対して、どんな要求を持っているか、が分からない。だから、弱者たちの、どんな要求を代弁すればいいのかが分からない。そうして、右往左往している。
◇
こうした状況を打破して、国会を活性化するには、どうすればいいか。
それには、議員のひとり1人が、日常的に、村の過疎地の中に入って、町の巷の中に入って、弱者たちの苦悩と、それを解消するための政治要求を聞き、肌で感じなければならない。そうしてこそ、机上の空疎な議論ではなく、全身に血の通った議論になるだろう。格差に呻吟している弱者の魂を揺さぶるような議論になるだろう。
そうしてこそ、国会は活性化するだろう。国会が活性化すれば、政治が活性化する。
◇
あえて言おう。統計不正を追及し、是正することが、弱者にとって、どれほど緊急で強い政治要求なのか。弱者たちに聞いてみたらどうか。是正すれば、弱者の苦悩が解消されるのか。政治がどれほど活性化するのか。
野党が弱者を代弁するというのなら、その力を現場の弱者の政治要求の組織化に集中して注入すべきだろう。そして、それを護憲運動でみられるような政治力にすべきではないか。
その好機が、半年後の参院選である。全力を参院選に投入すべきだろう。
(2019.02.18)
(前回 野党は選挙上手な自民党に学べ)
(前々回 統計不正にみる政治の弛緩)
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