【森島 賢・正義派の農政論】東アジアの体制間抗争2019年5月20日
中国と米国との間で、激しい貿易交渉が行われている。米国は、中国から輸入する全てに、25%もの高率な関税をかけようとしている。中国は、この報復として、米国からの輸入品に高率な関税をかけようとしている。これは、単純な貿易交渉ではない。国家の体制を揺るがすほどの、根の深い政治抗争である。
このような体制間抗争は、北朝鮮と米国との間でも行われている。北朝鮮は米国に体制の保障を求めているが、米国は応じていない。
これらの抗争を、新冷戦という人がいるが、大げさではない。まことに的を得ている。
この前の冷戦は、44年もの長い間続いたが、新しい冷戦は、いつまで続くのだろうか。なるべく早く終結させねばならないし、日本は、そのために懸命な努力をすべきだろう。
米中間の抗争をみてみよう。
米国の中国への不満は、中国の国営企業に対する多額の資金の投入である。また、「中国製造2025」に対する大量の補助金である。それに加えて、知的所有権についての不満がある。
それらが貿易を不当に歪め、米国の貿易赤字を大きくしているという。それだけはなく、米国の安全保障を危うくしている、とまでいう。米国は覇権の維持に、強い危機感をもっているのだろう。
しかし、中国は社会主義の国だから、国営企業への資金の投入は当然、と考えている。また、「中国製造2025」は国家事業だから、補助金の投入について、他国からの批判を受け入れるわけにはいかない、と考えている。
また、社会主義国だから、知的所有権も一種の主要な生産手段と考えていて、その私的所有については、原則的には否定したいようだ。
このように考えると、米国の要求は、とうてい受け入れられない、と思うだろう。中国の国家体制を揺るがす要求だからである。
◇
以上のように、米中間の抗争は単純な貿易摩擦ではなく、資本主義と社会主義との抗争である。つまり、新冷戦である。
この前の冷戦が終わったあと、社会主義は歴史的に否定された、という評論家がいるが、そうではない。世界には、憲法等で社会主義を明記している国が、中国、インドなど、10か国ある(ウィキペディア)。そして、世界の人口の41%を社会主義国の国民が占めている。この事実を消すことはできない。
社会主義が死語になったとする評論家は、ただ願望を言っているにすぎない。
◇
こうした状況のなかで、日本はどんな位置に立つべきか。
中国を批判するのはいい。ことに言論の自由を保証すべきだ、とする友情ある忠告はいい。しかし、軍事力を背景にして、中国の政治体制を転覆しようとする米国に追随してはならない。
こうした状況のなかで、安倍政権は米国から戦闘機を105機も買い、中国、北朝鮮を仮想敵国にした軍備の拡張を図っている。
◇
ついでに言っておこう。金額は膨大である。1機あたりの代金は116億円である。1機分の代金が、政府の給付型奨学金の、昨年度の予算額の105億円よりも多いのである。
若い学生たちは、それでも安倍政権を支持するのだろうか。君たちのうちの誰かが、この戦闘機に乗って戦争をする。日本は報復攻撃を受け、多くの友人たちが死ぬだろう。それでも、この対米追随政権を支持するのか。
参院選が近いのに、野党の反応も鈍い。
(2019.05.20)
(前回 弛緩した政治)
(前々回 さあ、野党の正念場の参院選だ)
(「正義派の農政論」に対するご意見・ご感想をお寄せください。コチラのお問い合わせフォームより、お願いいたします。)
重要な記事
最新の記事
-
シンとんぼ(172)食料・農業・農村基本計画(14)新たなリスクへの対応2025年12月13日 -
みどり戦略対策に向けたIPM防除の実践(89)フタルイミド(求電子剤)【防除学習帖】第328回2025年12月13日 -
農薬の正しい使い方(62)除草剤の生態的選択性【今さら聞けない営農情報】第328回2025年12月13日 -
スーパーの米価 前週から14円下がり5kg4321円に 3週ぶりに価格低下2025年12月12日 -
【人事異動】JA全農(2026年2月1日付)2025年12月12日 -
新品種育成と普及 国が主導 法制化を検討2025年12月12日 -
「農作業安全表彰」を新設 農水省2025年12月12日 -
鈴木農相 今年の漢字は「苗」 その心は...2025年12月12日 -
米価急落へ「時限爆弾」 丸山島根県知事が警鐘 「コミットの必要」にも言及2025年12月12日 -
(465)「テロワール」と「テクノワール」【三石誠司・グローバルとローカル:世界は今】2025年12月12日 -
VR体験と牧場の音当てクイズで楽しく学ぶ「ファミマこども食堂」開催 JA全農2025年12月12日 -
いちご生産量日本一 栃木県産「とちあいか」無料試食イベント開催 JA全農とちぎ2025年12月12日 -
「いちごフェア」開催 先着1000人にクーポンをプレゼント JAタウン2025年12月12日 -
生協×JA連携開始「よりよい営農活動」で持続可能な農業を推進2025年12月12日 -
「GREEN×EXPO 2027交通円滑化推進会議」を設置 2027年国際園芸博覧会協会2025年12月12日 -
【組織改定・人事異動】デンカ(1月1日付)2025年12月12日 -
福島県トップブランド米「福、笑い」飲食店タイアップフェア 期間限定で開催中2025年12月12日 -
冬季限定「ふんわり米粉のシュトーレンパウンド」など販売開始 come×come2025年12月12日 -
宮城県酪初 ドローンを活用した暑熱対策事業を実施 デザミス2025年12月12日 -
なら近大農法で栽培「コープの農場のいちご」販売開始 ならコープ2025年12月12日


































