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コラム:地方の眼力

【小松泰信・(一社)長野県農協地域開発機構研究所長】

2020.03.18 
【小松泰信・地方の眼力】コロナウイルスとアベノウイルス一覧へ

 「感染症はグローバリズムの負の部分である。人の移動が活発になれば、感染症の拡大スピードも上がる。……。感染症だけではない。金融危機も、リーマンショックの頃よりも今の方が、おそらく深刻なものになる。グローバル化の光の部分だけに目を奪われて海外進出だ、インバウンドだと盛り上がってきた日本人は、これから手痛いしっぺ返しを受けることになるだろう。……。唯一、できるのは政府支出の拡大によって不況を和らげることだけだ。……。しかし、全てが後手後手に回る安倍政権に、積極果敢な経済対策を期待できるだろうか」(柴山桂太氏・京都大学大学院准教授、日本農業新聞(3月17日付))

地方の眼力・本文用画像(小松泰信先生)◆北海道新聞の叫び。福島民友新聞の憂慮
 「企業支援は一刻を争う」ではじまる北海道新聞(3月15日付)の社説は、「新型コロナウイルスの感染拡大で、北海道経済が厳しい状況に追い込まれている。訪日外国人客の激減と道民の外出自粛で、主力の観光業を中心に企業の売り上げの落ち込みに歯止めがかからない」ことをつたえている。
 「ホテルや百貨店、飲食店なども軒並み大幅な減収を強いられ、その影響は食材を供給する食品加工業、原材料を供給する酪農業や水産業にまで波及している」ほど深刻な事態にもかかわらず、「道の危機意識が足りない」ことを憂えて、「対策を国に丸投げしてよしとせず、自らも可能な限りの支援策を早急に打ち出すべきだ」と訴える。
 「政府の休業補償の対象外となった個人事業主に同等の支援をする」と決めた鳥取県の例をあげ、「道も『不要不急』の事業がないかを精査し、新型コロナ対策に予算を振り向ける努力をしてもらいたい」と、提案している。
 福島民友新聞(3月15日付)の社説も、いわき市が行ったアンケートにおいて、「回答を寄せた同市の事業所の約8割が『影響がある』と答えた」ことや、「国は貸し付けを充実するというが、借金が増えるだけ」との声などから、地域経済への影響を憂慮している。14日の会見で安倍晋三首相が、今後の経済対策について「一気呵成(かせい)にこれまでにない発想で思い切った策を講じる」と述べたことに対しては、「事業者の不安解消につながる内容だったのだろうか」と、疑問を呈している。

◆トヨタといえども新型コロナに便乗するな
 毎日新聞(3月15日付)の社説は、基本給を引き上げるベースアップ(ベア)の見送りや、前年実績を大幅に下回る低額回答が相次いだ、自動車や電機など大企業による2020年春闘の賃上げ回答を取り上げ、「新型コロナウイルスの感染拡大で消費者心理が萎縮する中、景気を一層冷え込ませかねない」と警鐘を鳴らす。連結営業利益が2兆円を超えているのに、「7年ぶりにベアを見送った上、定期昇給を含む賃上げ総額が前年実績を2000円以上も下回った」トヨタ自動車をその象徴的存在とする。
 「日本がデフレから脱却できないのも、賃金が伸びず、個人消費が低迷し、物価を上げられないからだ」との専門家の見解を紹介し、「法人税減税や円安の恩恵を享受してきた企業は、18年度で463兆円もの現金など内部留保を抱えている」にもかかわらず、「新型コロナに便乗して賃上げを渋っているように見える。これでは個人消費を過度に冷え込ませ、日本経済への打撃を一層深める悪循環を引き起こしかねない」と、その便乗姿勢を指弾する。

◆ソンタクまみれの対策は後手で愚手
 「『総理が言っちゃった→どうしよう→だったら失業手当ぐらい払えばいいか』 そんな場当たり的な会話が聞こえてきそうです」と、痛烈に皮肉るのは荻原博子氏(経済ジャーナリスト、「サンデー毎日」3月22日号)。安倍首相が詳細を語らないまま小中高校の一斉休校を「言っちゃった」ので、加藤勝信厚労相が「休職する保護者が働く企業に日額8330円を助成する制度をつくる」と発表したことを指している。「小中学校・高校の児童・生徒数は約1312万人です(17年)。仮に保護者全員が3週間休むと、助成総額は約2兆3000億円。学校ではほとんど発症していないのに、意味はあるのか」と、疑問符を投げかける。
 そして「その後、全員を対象にするとあまりにカネがかかりすぎことに気づいたのか、小学生の保護者だけに。非正規雇用の人は首相が発言しているので対象ですが、自営業者やカメラマン、スタイリストなど対象にならない人が多い。行き当たりばったりの首相の発言を『うそ』にしないため、役人が右往左往しているさまが見えるようです。これが『対策が後手』の原因でしょう!」とは図星のご指摘。
 見方を変えるならば、「総理が何かを言う」まで、息を潜めて待っている、まさに指示待ち役人。安倍氏のご機嫌を損ねぬよう、忖度にまみれて出てきた対策は、もちろん後手で愚手。その程度のもので、新型コロナが駆逐できるはずがない。
 そういえば、平成末期に元祖忖度官僚として名を馳せた佐川宣寿氏がまたまた注目されるようだ。

◆先に逝くのはアベノウイルス
 「週刊文春」(3月26日号)は、2018(平成30)年3月7日に54歳で自ら命を絶った赤木俊夫氏(財務省近畿財務局管財部上席国有財産管理官)の妻が、3月18日に佐川氏と国を提訴することを報じるとともに、赤木氏が遺した「手記」の全文を公開している。執筆したのは相澤冬樹氏(大阪日日新聞編集局長・記者、元NHK記者)。
 手記には、「森友事案は、すべて本省の指示、本省が処理方針を決め、国会対応、検査院対応すべて本省の指示(無責任体質の組織)と本省による対応が社会問題を引き起こし、嘘に嘘を塗り重ねるという、通常ではあり得ない対応を本省(佐川)は引き起こしたのです」「この事実を知り、抵抗したとはいえ関わった者としての責任をどう取るか、ずっと考えてきました。事実を、公的な場所でしっかりと説明することができません。今の健康状態と体力ではこの方法をとるしかありませんでした。(55歳の春を迎えることができない儚さと怖さ)」と、記されている。
 誰が見ても「無理筋」「禁じ手」といわれる黒川弘務東京高検検事長の定年延長問題への官邸のご執心は、ここに行き着く。
 なにせ、「私や妻が関係しているということになれば、間違いなく総理大臣も国会議員も辞めるということは、はっきり申し上げておきたい。まったく関係ない」と、2017年2月17日の国会で安倍首相が見え見えの大見得を切ったところから、暗黒の世界が始まったのだから。
 この提訴に対して、「心身に支障が生じる中で書かれた手記にどれほどの信用性があるのか」といった反論の数々が想定される。それは明らかに違う。赤木氏は心身に支障が生じるほど「真実」に向き合い、「真実」のみを絞り出したがゆえに、精も根も尽き果てたのだ。当コラムは手記のすべてを信じる。なぜなら性根が腐って病んでいるのは、「安倍族」だからだ。この国に加害する、コロナウイルスとアベノウイルス、先に逝くのはアベノウイルスだ。
 「地方の眼力」なめんなよ

 

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