「ゼロコロナ」を具体化せよ【森島 賢・正義派の農政論】2021年2月8日
コロナ対策の混迷が続いている。
野党の、政府のコロナ対策についての批判は、これまで「後手、後手」というものだった。それでは、後手でなければ良い対策だったのか。そうではないだろう。ここには、政府の対策に対する根本的な批判がない。野党が政権を取っても同じ対策を採るのか。そうではないだろう。
こんど、立民党が「ゼロコロナ」と言い出した。だが、「ゼロコロナ」というだけでは、その内容が分からない。コロナをこの世から絶滅したい、というだけなら、それに反対する人はいないだろう。政府も反対しないだろう。
そうではなくて、政府のいう「ウイズコロナ」(コロナとの共存)とか「経済とコロナ対策の両立」に反対、というようだ。では、どうするのか。そのための具体策がない。
ワクチンができたので、コロナの消滅は近い、という。政府は、五輪もできるし、秋までに行われる総選挙に勝つこともできる、と考えているようだ。
しかし、そうはいかないだろう。ワクチンが大多数の国民の中に普及するまでには、長い月日がかかるだろう。ワクチンの効力がどれ程のものかは、まだ分かっていない。また、その間に新しい変異型のコロナが猛威を振るうかもしれない。
だから、いまの医療崩壊が解消するまでには、まだまだ国民の災禍が、長い間つづくだろう。その間、じっと我慢しているわけにはいかない。いまのコロナ対策を、早急に改めねばならない。
立民党がいう「ゼロコロナ」を、非専門家である筆者が推測を交えて、あらためて説明しよう。
まず、徹底した検査を行う。そうして、市中の感染者を市中から隔離する。そうすれば、市中の感染者数はゼロにできる。隔離した感染者には、手厚い治療を行って重篤化を防ぐ。
こんどのコロナは、感染者の大多数が無症状か軽症で、10日間ほどで隔離病院から退院できる病状になる。退院後は、再感染することもないし、他人に感染させることもない。つまり、市中で感染源になることはない。
このようにして、市中で感染源になる感染者数をゼロにするのが「ゼロコロナ」である。
市中に感染者がいないのだから、以前と同じ社会活動ができる。外出や営業の自粛は不必要になり、全ての経済活動も文化活動も復活できる。
ここで必要なことは、非常時における検査と隔離と治療の体制の抜本的な整備である。そして、妨害する組織があれば、国民の支持のもとで、それを解体し、再編成する政治の覚悟である。
◇
ここで思い出すのは「原発ゼロ」である。立民党が「原発ゼロ」を打ち出すまでには、長い間の曲折があった。支持団体である労組の一部が反対したからである。「ゼロコロナ」にも、同じような事情がある。
いったい、なぜ政府は「ゼロコロナ」対策を採らなかったのか。それは、「ゼロコロナ」を目指すと感染者が続出し、隔離して治療することが出来なくなるからだ、と当初からいっている。だから、当初から検査を制限して、隔離と治療の体制の拡充を怠ってきた。その結果、市中に感染者を放置して、感染源になって感染を拡大してきた。
このように、政府は、検査と隔離と治療の体制、つまり医療体制の整備と拡充を、当初から怠ってきた。その結果が、いまの医療崩壊である。
そしていまや、検査を制限して、感染者を隠そうとしても隠しきれず、感染者が続出しても隔離しきれずに、自宅で療養している。そして、家庭内感染を感染拡大の最大の原因にしている。家庭内で重篤化し、医療も受けられずに死亡する人も続出している。
◇
この状態は、明らかに医療崩壊の状態である。そして、この状態を招いたのは、明らかに政府である。
立民党がこの状態を打破するというのなら、この実態を直視して、「ゼロコロナ」へいたる対策を実態に即して、具体的に提示しなければならない。その内容は、検査、隔離、治療の体制の抜本的な拡大と整備である。
検査は、これまでのように1件当たり1万8000円の検査費を業界にばら撒くのではなく、1件あたり1000円程度でできるプール方式の検査を採用すべきである。そうすれば、「誰でも、無料で、何度でも」検査できる。そのためには、いまの保健所を解体して、非常時に即した業務が行えるように再編すべきである。
隔離施設は、プレハブでもいい、テント張りでもいい、見栄を張らず、国立の施設を各都道府県に大量に作ればいい。多額の国費を使うことになるが、国民の生命には換えられない。
治療体制は、非常時に即した体制を作らねばならない。いまは、戦時に準ずる事態なのである。
このようにすれば、市中の感染者の数をゼロにできるだろう。
◇
「ゼロコロナ」で、医療体制を改革するとき、強力な反対が既存の組織から出てくるだろう。それに怯んでいたのでは、この国難を乗り切ることはできない。
だが、国民の支持さえ得られれば、こうした反対を押しのけることができる。
立民党の「ゼロコロナ」対策を、以上のような医療の実態に即して具体化すれば、国民の圧倒的な支持が得られるだろう。いま、国民の最大の関心事は、コロナなのである。
立民党が他の野党とともに、近く行われる総選挙で「ゼロコロナ」、つまり、非常時における医療体制の解体的再編の旗印を高く掲げて、政府の「経済との両立」路線に鋭く対峙すれば、政権交代は必至だろう。
(2021.02.08)
(前回 コロナが暴いた社会の崩壊と人心の荒廃)
(前々回 コロナ撲滅国民会議を作れ)
(「正義派の農政論」に対するご意見・ご感想をお寄せください。コチラのお問い合わせフォームより、お願いいたします。)
重要な記事
最新の記事
-
シンとんぼ(168)食料・農業・農村基本計画(10)世界の食料需給のひっ迫2025年11月15日 -
みどり戦略対策に向けたIPM防除の実践(85)炭酸水素塩【防除学習帖】第324回2025年11月15日 -
農薬の正しい使い方(58)害虫防除の考え方【今さら聞けない営農情報】第324回2025年11月15日 -
【地域を診る】「地方創生」が見当たらない?! 新首相の所信表明 「国」栄えて山河枯れる 京都橘大学学長 岡田知弘氏2025年11月14日 -
【鈴木宣弘:食料・農業問題 本質と裏側】コメを守るということは、文化と共同体、そして国の独立を守ること2025年11月14日 -
(461)小麦・コメ・トウモロコシの覇権争い【三石誠司・グローバルとローカル:世界は今】2025年11月14日 -
根本凪が農福連携の現場で制作「藍染手ぬぐい」数量限定で販売 JAタウン2025年11月14日 -
北陸初出店「みのる食堂 金沢フォーラス店」29日に新規オープン JA全農2025年11月14日 -
農協牛乳を使ったオリジナルカクテル「ミルクカクテルフェア」日比谷Barで開催2025年11月14日 -
宮城県産米の魅力を発信「#Teamみやぎ米キャンペーン」開催 JAグループ宮城2025年11月14日 -
農林中金とSBI新生銀行が業務提携へ 基本合意書を締結2025年11月14日 -
創立60周年となる通常総会開催 全農薬2025年11月14日 -
米による「農業リサイクルループ」を拡大 JR東日本グループ2025年11月14日 -
食と農をつなぐアワード「食品アクセスの確保」部門で農水大臣賞 セカンドハーベスト・ジャパン2025年11月14日 -
「有機農業の日/オーガニックデイ」記念イベント開催 次代の農と食をつくる会2025年11月14日 -
「11月29日はノウフクの日」記念イベント開催 日本農福連携協会2025年11月14日 -
スマート農業で野菜のサプライチェーンを考える 鳥取大で12月19日にセミナー開催 北大スマート農業教育拠点2025年11月14日 -
農泊・農村ツーリズム「農たび・北海道ネットワーク研修会」開催2025年11月14日 -
農地のGHG排出量を推定・算出 営農改善を支援する技術で特許を取得 サグリ2025年11月14日 -
農機具王 農業インフルエンサー「米助」と協業開始 リンク2025年11月14日



































