独自基準で未検査米に付加価値を付ける時代に【熊野孝文・米マーケット情報】2021年4月20日
コロナ禍でコメの取引が大きく変わった点と言えばWebを使った取引が行われるようになったこと。先週末もつくば市でリアルな会場と結んでWeb上で情報交換会と取引会が開催された。毎月開催されるこの取引会はWebを使うようになってから1年以上になり、パソコンやスマホ上でスムーズに取引が出来るようになった。どこにいてもリアルな情報のやり取りが画面上で確認出来るWeb取引は、コメ取引そのものを飛躍的に進歩させる可能性も秘めている。

Webによるコメ取引の飛躍的な進歩の可能性に触れる前に、すでに画面上で情報交換や取引が出来るようになっており、そこで交わされた内容でコメの流通業界が置かれた現状が良く分かるのでそのことを先に紹介したい。
コロナ禍の再拡大で首都圏の玄米卸は文字通り開店休業状態で米穀小売店からの引き合いがぱったり止まり、卸間売買も先安の見方が強まっているためかスポットでの引き合いも低調だという。白米卸は手持ち在庫を1俵でも軽くしたいという思いから、量販店頭での値入安売り合戦が過熱化しており、ディスカウント店の中には栃木コシヒカリを10キロ2480円で販売しているところも出始め、5キロ袋の1380円が珍しくなくなっている状況。
ただ、都心の業務用専門店は、昨年の4月に比べると今年の4月はまだましだという。ましだと言っても一昨年に比べると3割ダウンなので、苦境が続いている状態には変わりがない。そうした中にあって新たな販路を開拓すべく打って出る小売店もいる。この小売店は個人経営で始めたのだが、ピンチはチャンスと捉え、新たに従業員を雇い5人体制になった。雇った人の中にネットに詳しい人物がおり、SNSやユーチューブでコストをかけず情報発信、コメの注文を受け付けるビジネスを始めた他、車で都内を廻って牽き売りもやり始めた。とにかく出来ることは何でもやるというバイタリティで活路を見出す覚悟。
原料米取扱業者からは水田リノベーションの採択状況が報告され、採択されなかった地区の業者からは県や市町村に独自の対策を求めて6月末までに加工用米の契約に漕ぎつけたいという業者がいる一方、集荷業者の中には3年産米で主食用を集荷しても捌き切れない可能性が高いので、生産者に対して飼料用米に回すように働きかけている業者もいる。ところが九州では、2年産米が不作だったこともあって3年産で主食用米を減らすというところは無いと言った情報や、関東でも生産者は例年通り主食用米を作付けするといった見方もあった。水田リノベーション事業で主食用米からの転作面積は2万ha台止まりで10万haには遠く及ばない。こうしたこともあって3年産米の相場については総弱気と言った状況で、26年産の暴落相場の再来が頭をよぎるという業者もいた。コメの集荷と肥料業を兼ねている業者の中には、肥料が高騰しており、このままでは大規模稲作生産者が破綻すると危機感を募らせている。
まさに現状は悲観的な見方一色と言ったところだが、悲観ばかりしていても展望は開けないので、元気づけるために文部科学省の広報誌最新号に掲載された「コメが免疫力と高める」という特集記事を読んで、その記事を店頭に張り付け消費者に配布するようにお願いした。
もう一つは未検査米の扱いについて質問が多かったので、今年7月から未検査米でも精米段階で銘柄表示が出来るようになるという事をチャンスとして捉え、玄米での集荷段階で独自の品位基準を設けて差別化を図り、付加価値を付けるようにすべきと進言した。
農水省は穀粒判定器による品位基準を定めるため、専門家による技術委員会を開催することにしているが、新たな品位基準として容積重を入れることにしている。おそらく目視に因る従来の検査との整合性を取るために、機械検査でも1等相当米の容積重は810g以上にするはずである。であれば、未検査米の品位基準を定める際に、独自に容積重を810g以上に設定、検査米と遜色ない価格で販売出来るようにすれば良い。
なぜ容積重にこだわるかと言うと、農水省は次世代穀粒判定器の開発目標の一つに玄米を画像判別した際、そのデータで精米歩留りが分かるようにビッグデータを活用、AIで解析する技術を完成させることを目標にしているからである。玄米の画像データで精米商品の価値が分かる時代がすぐそこまで来ているのである。
玄米の画像データで精米の価値が分かるという事は、目視での格付けよりはるかに価格と品位の整合性が担保されることになる。未検査米とは単に目視検査を受けていない玄米と言うだけのことで、これまでのように検査米より1000円安という事にはならない。
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