コロナ被害の県間格差【森島 賢・正義派の農政論】2021年10月25日
多くの尊い犠牲者を出したコロナは、いま急激に収束し、小康状態にある。だが、なぜこれほど早く収束したのか。確実な資料と強靭な理論に基づく、科学的な説明がない。ことに、確実な資料がない。集めようともしない。
これでは、科学的な説明はできないし、議論もできない。
これでは、コロナ禍が今後どんな推移をたどるのか、科学的な予測ができない。
だから科学者は、今後の犠牲者を最小限に抑え込むための、科学的な対策を提案できない。科学者への不信は、募るばかりだ。
わが国の科学者は無能なのか。そうではない。科学者の能力を、充分に引き出せる体制がないのだ。
上の図は、コロナによる、これまでの死亡者数を人口10万人当たりにして、都道府県別にみたものである。ここには、大きな格差がある。
最大は、大阪の34.5人で、最小の島根の0.7人の47倍である。これだけの隔絶した格差がある。
なぜ、これだけの格差があるのか。そして、ここから何を学ぶか。
これは自然の現象ではない。大阪のコロナも島根のコロナも同じコロナなのだ。だが、これだけ違う。この差は、地域社会の差に起因する社会の現象なのである。
◇
上の図から分かることは、大阪や東京の大都市とその周辺、それと北海道、沖縄の観光地に死亡者が多いことである。この地域は、ことに大都市は、そこにいる医師や看護師などの医療従事者が無能なのか。
わが国の、この分野の科学者は無能なのか。そうではない。一流の科学者が揃っている。ことに大都市には、有能な人たちが集積している。
それでも、大都市に死亡者が多いのは何故か。それは、医療従事者が、その能力を充分に発揮できる体制になっていないからである。その実力を発揮する体制が、脆弱なのである。
これは、体制の問題であり、だから政治の問題である。
◇
総選挙を直前にして、与党も野党の多くも、コロナ対策の一元化を唱えている。一元的な司令塔を作って、そこに権限と財源を集中せよ、というのである。
これは、間違いではないか。
これは、上の図で示したように、地域独自の対策を学びあい競い合うという、地方自治の考えを否定するものである。
◇
これまでの体制で何が起きたか。
中央で、一部の科学者がコロナ対策の体制を牛耳っていて、それを既得権益だと思い違いをしていた。コロナを食いものにして、ここに巨大な利権が集積していた。
こうした状況のもとで、医療体制は充分に中央集権的だった。地方組織の保健所は、中央の命令に忠実に従って努力してきた。しかし中央は、利権に目か眩んでいた。そして中央は、反国民的な誤りを冒したのである。
◇
中央の命令の誤りの根本に、PCR検査の制限がある。当初から制限した。このため、感染者の発見が遅れ、感染者が市中に放置され、自宅で死を迎える、という最悪の事態を招くほどに感染を拡大した。そして、この誤りの現場の実態を直視できず、修正できないほどの非民主的な中央集権体制だった。
このように、いまの治療体制は充分に中央集権的である。だが、誤りを修正できないほどの専制体制になっている。
いま求められているのは、この中央集権体制の解体と、地方分権による直接民主的な再編である。
冒頭の図は、この点でコロナ対策は、地方から学ぶべき点が多いことを示している。
◇
中央集権が非民主的であることは、古今東西の経験が示している。こと大規模な中央集権は独裁に陥り易い。
この点で、農協のような社会組織は違う。全国組織はあるが、その機能は調整に限定している。現場の単位農協に命令する権限はない。一切の権限は、小規模な単位農協にある。そして、直接民主主義が貫徹している。
医療の社会組織も、農協に学んだらどうか。
(2021.10.25)
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