私的近況、そしてこれからのこと【酒井惇一・昔の農村・今の世の中】第194回2022年4月28日
前回のコラムの最後に、戦前・戦後の「東京・仙台の市場への野菜販売については次回述べさせていただく」と書かせていただいた、そしてその草稿を書き上げた。そのときふと頭に浮かんだ、そのことについては前に本稿に書かせていただいたことがあるのではないかと。そこで慌てて調べてみた。書いてあった(注1)、2年前にそのかなりの部分を書かせていただいていた。気が付いたからよかったものの、そうでなかったら重複して書いてしまうところだった。ショックだった、物忘れの激しさは子どものころからなのだが、近年、とりわけ昨年初めに一過性の脳血栓で倒れて以来、さらにひどくなってきた。そろそろ限界、もうだめになってきた、そういう年齢なのだ。
その昔、こんな童謡があった。
「村の渡しの 船頭さんは 今年六十の お爺さん
年を取っても お船を漕ぐ時は 元気いっぱい 艪がしなる
それ ぎっちら ぎっちら ぎっちらこ」(注2)
そうなのである、60歳はお爺さん、還暦としてお祝いするほどの年齢だったのである。そしてリタイアの年齢だったのだ。
それを二回り(4分の1世紀)以上私は超している。心身ともに衰えるのは当たり前なのだ。60歳過ぎてから図々しく生きて6回も入院している始末だ。しかも家内の体調も思わしくなく、不慣れ・無能力の家事・雑事も手伝わなければならず、時間も思うようにとれなくなっている。
これからも、重複、欠落はもちろんさまざまな誤りをおかして、さらには身体上の理由で、ご迷惑をおかけすることになるかもしれない、
昔からの研究者仲間の訃報が入ってくる。先輩はもちろん後輩までもだ。つい最近で言うと七戸長生さん(北海道大)、川相一成さん(東北大)、綱島不二男君(山形大)がそうだ。本当にお世話になり、つい最近までお会いしていた方だ。悲しい、寂しい。私もそのうちその仲間入り、その前に病院・施設入りで世間にご迷惑をおかけすることになるかもしれないのだ。
こんな状況では本稿の執筆をご辞退させていただくより他ない、それでjacomコラム編集部にお願いをしてきたところだった。ところが、そんなことを言わずに書くようにとの励ましの言葉をいただいて続けさせてもらい、何とかここまできたのだが、やはりまた失敗を侵してしまいそうになっだのである、今回は気が付いたからよかったが。
そこで考えた、ともかく私には歴史的な順序を追いながら論理的に総合的に叙述するなどやるだけの力は残っていない、いつどうなるかもわからない、おかしくなる前に、どうしても伝えておいた方がいいと考えること、私しか書けなくなっているかもしれない事実やその評価等々、順不同で思いつくまま本稿に書き残させていただこうと。しかし、事実に、歴史に軽重の差をつけることは難しい。ともかく社会から忘れ去られつつあること、だけど記録に遺しておいてもいいと私なりに考える昔の人の知恵を思いつくまま書かせていただこう。その方が何かのお役に立つかもしれないからだ。
そうだ、頭を切り替えて仕切り直しをするためにも、昔々のその昔、そのまた昔のその昔の農業、農地が林野と結びついていたころの農業、「焼き畑農業」の話でもまずさせていただくか。しかもそれは戦後、1960年ころまでわが国に残っていたのだ。
「焼き畑」、聞いたことがおありだろう、歴史や人文地理の授業で、途上国で環境問題を激化させているなどというニュースで、聞いておられるのではなかろうか。
この「焼き畑農業」がかつてわが国の農業で一定の地位を占めていた。しかもそれはそれなりにきわめて合理的な土地利用方式であり、現在もそこから学び、農林業、山村の振興を図っていくことも考えられるのではなかろうか。
そんなことで次回からその昔の農山村における焼き畑式をはじめとする「土地利用方式」についてお話をさせていただきたい。
また私事になるが、七戸さんの訃報を知らせてくれた北大教授の東山寛君からのメールに「再来年、東北大で農業経済学会の100周年記念大会を開催するのでお元気でいてください」との言葉があった。
それに応えて何とかそれまでは生きたいと思っている。同時に、本コラムも少なくともそれまでは書かせていただけるようにがんばりたいとの決意を新たにしている(ちょっとオーバーかな)。
ということなのでこれからもよろしくお付き合いのほどお願いしたい。
(注)
1.jacomコラム、昔の農村・今の世の中、2020年11月19日掲載・第125回「野菜生産と林業、稲作」、
jacomコラム、昔の農村・今の世の中、2020年11月26日掲載・第126回「戦後復興期の野菜販売と農協」参照。
2. 作詞:武内俊子、作曲:河村光陽、1941(昭16)年。
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