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カジノで地域は振興しない【小松泰信・地方の眼力】2022年5月11日

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「収益見積もり過大」 ポーカーフェースで提出します――カジノ事業者(福岡・よしひろ、西日本新聞4月29日付)

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問題山積IR

西日本新聞(4月28日付)は、1面で、国が整備を目指すカジノを含む統合型リゾート施設(IR)について、国土交通省が27日、長崎県と大阪府・市の区域整備計画を受理したことを伝えている。

翌28日が締め切り日だったが、他に申請はなかった。国交省の有識者委員会による非公開の審査を経て、認定の可否が決まる。

長崎県は、佐世保市のハウステンボス(HTB)隣接地に施設を整備し、2027年秋ごろの開業を目指す。大阪府・市は、市湾岸部の人工島・夢洲(ゆめしま)に整備し、29年秋から冬ごろの開業予定。

同紙2面には、IRに詳しい鳥畑与一静岡大教授(とりはた・よいち、国際金融論)のインタビュー記事がある。

注目した4点の概要は以下の通り。

(1)長崎県は年間売上高を約2716億円、大阪府・市は約5200億円と想定していることについて。
収益性の高いオンラインカジノが世界的に急速に広まったため、従来の施設型のカジノは需要が小さくなっている。中国政府はギャンブル依存症対策で規制を強化しており、当てにしていた中国人富裕層の利用は期待できない。カジノビジネスがもうかるという大前提が崩れつつある。長崎、大阪のいずれの整備計画も、カジノの収益を過大に見積もっている。

(2)IRを整備した地域の未来について。
地域社会は、リスクを抱え込むことになる。利用者の負け分が収益を左右するため、誘客に力を入れるだけでなく、射幸性(小松注:しゃこうせい。偶然の利益や成功ねらい)を高める可能性も出てくる。ギャンブル依存に拍車をかける懸念がある。

(3)ギャンブル依存症対策について。
本人や家族の申告による利用制限は、海外に比べると甘い。日本は肝心な射幸性の規制もない。

(4)整備計画を審査する国に求められることについて。
厳正に審査し、国民に説明責任を果たす。IRが本当に国の成長戦略につながるのか検証も必要。

内実が問われる「観光立国」

「ギャンブル依存症対策、資金計画など課題が山積するなか、大阪、長崎がIRの整備に突き進むことに不安を禁じ得ない。計画を審査する国側の責任も問われる」とするのは、愛媛新聞(5月4日付)の社説。

わが国においてギャンブル依存症患者の割合が他の先進国より高く、治療や相談支援の対策も遅れていることを踏まえ、「カジノ解禁は治安悪化、反社会勢力による関与、子どもへの悪影響といった課題もつきまとう」と指摘する。

経済効果に多大な期待を寄せてのIR推進であるが、「新型コロナウイルスの影響で海外ではオンラインカジノが伸長。中国・マカオの実店舗の集客は低調が続く。わざわざ中国から日本のカジノに来るのは、『もはや空想だ』と指摘する専門家もいる」として、皮算用の甘さを指弾する。

そして、「観光立国を掲げる以上、問われるのは内実である。コロナ前は日本にしかない自然、歴史文化を目当てにした訪日客であふれた。守り育て、磨くべき観光資源が多いなかで、カジノに頼ることがふさわしいのか」と、国や立候補地に問いかける。

足元が揺らぐ長崎県と大阪府・市

「この機に改めて主張する。政府は現実を直視し、誤った施策を根本から見直すべきだ」で始まるのは、朝日新聞(4月29日付)の社説。
4月20日に、和歌山県議会は仁坂吉伸知事の申請案を否決した。資金調達や経済効果への疑問を口にする議員が相次ぎ、自民党からも反対者が出たことから、「IRを成長戦略の柱と位置づけ、反対論を数の力で抑え込んで遮二無二走ってきた政府・与党は、この間の動きを冷静に検証する必要がある」とする。

さらに、申請にこぎつけた長崎県と大阪府・市における足元の揺らぎを紹介する。

長崎県は、初期投資の6割が借金、4割が企業出資とされているが、その企業名などの詳細は不明。議会で質問されても、県は企業側の意向を理由に公表を拒んだ。「県議会が十分な情報を得たうえで結論を導き出したとはとても言えず、県民の間には不信や不安が渦巻く」とする。

大阪府・市では、当初市民負担は生じないとして進めてきたが、建設予定地に地盤改良が必要となり790億円の負担が発生する。まさに、「前提が崩れた」わけである。

両候補地には説明責任を求めるとともに、今後の審査には、「巨額の建設費が住民負担となってはね返る恐れはないか、仮に事業者が撤退した場合、誰がどう責任をとるのかなど」について、納税者視点からの慎重な吟味を求めている。

地域振興はギャンブルではない

読売新聞(5月4日付)の社説も「構想を掲げた当時とは状況が大きく異なっている。本当に実現すべきなのか、政府や自治体は今一度、考え直すべきだ」とする。

そして、「そもそも、来場者がカジノで失った賭け金を地域振興に使う成長戦略は適切なのか。国や自治体はギャンブル依存症の対策を進めるとしながら、カジノの収益に期待する姿勢は矛盾している」と迫る。

朝日新聞(4月21日付)によれば、IR誘致が県議会で否決された仁坂和歌山県知事は、直後の記者会見で「痛恨の極み。県経済を活性する最大の起爆剤が失われた。痛手だが、いかんともしがたい」と述べた。

「市民が納得できないことに納得するのは難しい。資金の明確な出どころも分からない。知事の見通しが総合的に甘かった」とコメントしたのは、反対票を投じた自民県議。

毎日新聞(4月21日付)は、あるベテラン県議が「IRなんかに期待せざるを得ないほど衰退している地方の現実こそが問題だ」と吐き捨てるように言い、議場を後にしたことを伝えている。

そう言えば、「IR計画 長阪の賭けだ――長崎県・大阪府」(目黒区 ボケもん、東京新聞4月29日付)にも笑ったな。

地域振興はギャンブルではない。地域を愛し、幸せに暮らしている人々の明るい未来を創り出すこと。地域磨きに精励すべし。

「地方の眼力」なめんなよ

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