2025年は組合員構造の節目の年 藤井晶啓 日本協同組合連携機構 常務理事【リレー談話室】2022年12月3日
これまで自分は、2025年は団塊の世代の全てが後期高齢者になるので組合員構造の節目と考えてきた。しかし、同年はミレニアム世代の意見が生産年齢人口の過半数を占めるという意味でも大きな節目となる。
■団塊の世代は第2世代トップ
昭和10年代生まれまでの第1世代は80歳台となり、世代交代は終焉を迎えつつある。
現在の組合員リーダーの多くは団塊の世代に移った。リタイアした第1世代からの組合員資格と出資は相続を通じて第2世代に継承。第2世代で最も年齢を重ねており、組合員組織を取りまとめ、さらに総代や非常勤役員などの立場として組合員リーダーの主体になっているのが団塊の世代だ。
彼らは第1世代とは異なり、就業のタイミングが高度成長期にあったことから、兼業農家や定年帰農を経て農協との関係を築いてきた。また、食管制度と金融護送船団方式を経験していない。とはいえ、団塊の世代は第1世代の農協との関係を実体験しており、農協との距離感はまだ近い。
2025年はその団塊の世代が全て75歳となる。そして団塊の世代以降の世代と農協との距離感は残念ながら相当に遠い。持続可能性にむけてJAが取り組む次世代総点検運動が目指す地域農業の将来像を描けるか否かは、地域の実状に長け、利害が異なる者の意見をまとめるリーダーの存在にかかっている。現在、各地で取り組まれている組合員大学の狙いも将来の組合員リーダーの育成にある。
■ミレニアム世代が過半数に
一方で、2025年にはミレニアム世代が生産年齢人口(15~64歳)の約54%を占めることになる。ミレニアム世代とは2000年代になってから成人した世代(昭和55年以降の生まれ)である。
ミレニアム世代の特徴の一つに環境意識や社会問題への関心が高いことがある。彼らは幼少期や青年期にデフレ経済の深刻化、リストラや格差拡大、また東日本大震災があり、異常気象による被災が多発する時代に育ってきたからだ。
2025年は彼らの価値観が地域の働き手の多数派になる。彼らが地域社会や地域経済を仕事で支え、消費の主役となり、税金を払い、投票の主役になる。我々農協は協同組合として彼らの価値観と合致するものを元々持っていたのではないか。これまで建前と本音を使い分けてきたが、2025年は農協としての本音が問われるタイミングと認識している。
■組合員加入運動は組織論で
全国の組合員総数は減少傾向に変わり、組合員加入拡大が大切な課題であることはいうまでもないが、マーケティング論にこだわりすぎていないか。よく「組合員加入にはメリットを明確にしないといけない」というが、経済的メリットだけではないはずだ。
そのような「顧客」を「組合員」と言い換えただけのマーケティング論ではなく、組織論からアプローチできないものか。組織論を提唱したアメリカのバーナードは組織が成立する3要素として、①目的、②貢献意欲(モチベーション)、③コミュニケーションを掲げた。「目的」とは理念であり、「コミュニケーション」とは対話であるので、「モチベーション」について興味深い報告がある。
アメリカの心理学者ディビッド・デステノの著書『なぜ「やる気」は長続きしないのか』は、モチベーションを維持するポイントを科学的に整理している。彼は、「べき論」という理性だけでは限界があり、モチベーションを維持するのは、①感謝、②思いやり、③誇りという3感情である、と実験結果を元に論証する。
確かに、他者から親切にされると感謝しお礼をしたくなるし、他者を気遣う思いやりや、単なるエゴとは違う自尊感情があると私たちは組織を構成できる。そして、いずれもミレニアム世代が大切にする価値観でもある。2025年にむけて、第1世代から団塊の世代へ受け継がれた組合員のバトンをミレニアム世代に渡していくことは協同組合らしい持続可能への道ではないだろうか。
重要な記事
最新の記事
-
「良き仲間」恵まれ感謝 「苦楽共に」経験が肥やし 元島根県農協中央会会長 萬代宣雄氏(2)【プレミアムトーク・人生一路】2025年4月30日
-
【農業倉庫保管管理強化月間特集】現地レポート:福島県JA夢みなみ岩瀬倉庫 主食用米確かな品質前面に(1)2025年4月30日
-
【農業倉庫保管管理強化月間特集】現地レポート:福島県JA夢みなみ岩瀬倉庫 主食用米確かな品質前面に(2)2025年4月30日
-
コメ卸は備蓄米で儲け過ぎなのか?【熊野孝文・米マーケット情報】2025年4月30日
-
米価格 5kg4220円 前週比プラス0.1%2025年4月30日
-
【農業倉庫保管管理強化月間にあたり】カビ防止対策徹底を 農業倉庫基金理事長 栗原竜也氏2025年4月30日
-
米の「民間輸入」急増 25年は6万トン超か 輸入依存には危うさ2025年4月30日
-
【JA人事】JAクレイン(山梨県)新組合長に藤波聡氏2025年4月30日
-
【'25新組合長に聞く】JA新潟市(新潟) 長谷川富明氏(4/19就任) 生産者も消費者も納得できる米価に2025年4月30日
-
鳥インフル 米デラウェア州など3州からの生きた家きん、家きん肉等 輸入停止措置を解除 農水省2025年4月30日
-
埼玉県幸手市で紙マルチ田植機の実演研修会 有機米栽培で地産ブランド強化へ 三菱マヒンドラ農機2025年4月30日
-
国内生産拠点で購入する電力 実質再生可能エネルギー由来に100%切り替え 森永乳業2025年4月30日
-
外食需要は堅調も、物価高騰で消費の選別進む 外食産業市場動向調査3月度 日本フードサービス協会2025年4月30日
-
キウイブラザーズ新CM「ラクに栄養アゲリシャス」篇公開 ゼスプリ2025年4月30日
-
インドの綿農家と子どもたちを支援「PEACE BY PEACE COTTON PROJECT」に協賛 日本生協連2025年4月30日
-
「日本の米育ち 平田牧場 三元豚」料理家とのコラボレシピを発表 生活クラブ2025年4月30日
-
「子実トウモロコシ生産・利活用の手引き(都府県向け)第2版」公開 農研機構2025年4月30日
-
「金芽ロウカット玄米」類似品に注意を呼びかけ 東洋ライス2025年4月30日
-
令和7年春の叙勲 JA山口中央会元会長・金子光夫氏、JAからつ組合長・堤武彦氏らが受章2025年4月29日
-
【農協時論】農政の基本理念と政策へのJA対応 宮永均JAはだの組合長2025年4月28日